【大紀元日本6月12日】中国アモイ市で7日、走行中のバスから出火し、47人が死亡、34人が負傷という大惨事が発生した。翌日、警察当局は容疑者を特定し、火災現場から焼死体として見つかったと発表した。この異例な速さにネット利用者から不信な声があがった。一方、指導部はメディアに取材禁止を通達するなど報道規制を行っている。
政府系メディアの報道によれば、犯人とされている男性(59)は事件当時バスに乗車していて死亡した。残された遺書には、不遇な人生に嫌気がさし、自殺するつもりでガソリンを持ち込み、バス放火を計画したと書かれている。
一方、男性は直訴者であることも判明した。男性が開設したミニ・ブログ(微博)の書き込みによれば、男性は政府に低所得者への生活補助(低保)を申請したが、規定の年齢に達していないため、拒否され続けてきた。一方、男性は正式の書類に記載された年齢が担当者の記入ミスで間違えられたと主張していた。22回も政府に年齢の是正を求めたが、応じられなかったため、直訴を繰り返してきたという。
わずか1日で容疑者の特定に成功した警察当局の「神業」にネット利用者から不信の声が高まっている。
「現場検証などはきちんと行ったのか」、「満員のバスに大量のガソリンを持ち込んで、さらに火をつけたにもかかわらず、誰も気づかなかったのか」、「日ごろのうっぷんをミニブログに詳しく書き込んでいるのに、遺書をなぜ投稿しなかったのか」
一部の利用者は男性が真犯人であれば、この社会に問題があるとの見方を示している。
「この事件は絶望した者の全社会への宣戦布告です(中略)。もし、我々が引き続き他人の苦難と絶望に無関心であれば、次の悲劇に巻き込まれるかもしれない」
「この社会は芯まで病んでいる(中略)。強権に立ち向かう勇気がない者は、結局弱い者に怒りをぶつけてしまう」
「死人に口なし、世論は彼を袋叩きしているが、果たして現地政府の対応責任を追及しなくていいのか」
また、事件への報道規制が敷かれているもよう。
英BBC中国語版によると、メディアを統括する中央宣伝部は「新華社通信の記事と現地当局の発表を掲載する」と命じ、独自の取材を禁止としている。
ここ数年、都市部で一般市民を巻き込む同様の事件が多発している。こういった報道を通じて模倣犯が生み出されかねない事態に指導部は警戒しているとみられる。
2011年5月、江西省撫州市の政府役所ビルの爆発事件では、2人以上が死亡し、6人が負傷した。後に、自宅が強制に取り壊された1人の農民が犯人だと報じられた。
2008年5月、上海市では路線バスが何者かに爆発され、3人が死亡、12人が負傷したという。
今回の事件後、アモイ市内のバス停で警察によるセキュリティ検査が強化された。