往時の重慶市のニュース番組。薄煕来氏(左)と雷政富書記(右)が写されている(ネット写真)
【大紀元日本11月28日】重慶市の政府幹部と18歳の少女との情事動画がインターネットに流出し、中国で騒ぎになっている。この種の動画は今までもたびたび話題になっているが、今回の動画は2007年に撮影されたもので、動画の公開とともに、当時の重慶市トップの薄煕来氏や公安局長の王立軍(服役囚)との関連も水面に浮かび、動画公開がもつ深長な政治的な意味合いも注目されている。
仕掛けられたゆすり動画
情事動画の主人公は同市北碚区の共産党委員会書記・雷政富氏(54歳)。2007年の旧暦元旦とその翌々日に、1時間20分にわたって18歳の少女とのベッドイン動画が撮影された。撮影者は情事の相手となった少女。動画や画像は、人民監督網という幹部の不正を暴露するウェブサイトの開設者・朱瑞峰さんにより公開され、「重慶市公安局内部の人から(動画を)手に入れた」という。
朱さんによれば、動画は最初からゆすりをしかけるために撮影された。同市のある不動産開発業者が受注の伸び悩みに編み出した「策」は、美貌を持つ女性を雇い、市の幹部に「紹介」することだった。雷書記と情事におよび、全過程を撮影した少女もその美貌を持つ女性の1人。現在23歳のこの女性はミニブログで、一連の行為は政府幹部との取引のためであることを最初から開発業者は明言しており、自らは複数の女性から撮影の方法などを教わったと告白した。
2007年に撮影されたこの動画は2009年になってやっと「役に立った」。だが、ゆすりかける開発業者の要求がエスカレートしたため、手に負えなくなった雷氏(当時は副書記)は当時の上司となる市共産党委員会書記の薄煕来氏に告白。薄氏は不祥事を起こした部下の処分を棚上げし、当時の王立軍・公安局長に捜査を命じ、ほどなくして開発業者と女性が拘束された。女性は1ヶ月間勾留され、業者は印章偽造の罪で1年間の懲役刑を受けた。「この時、王の捜査チームは他にも多数の政府幹部の情事動画を押さえていた」と朱さんは証言する。
雷氏はその翌年の2010年に、薄元重慶市書記の元で、区の副書記から書記に昇進した。
風向きが変わる
表では犯罪撲滅キャンペーンを派手に展開した薄氏の裏が垣間みえる事件。「これは薄が地方勢力を仕切るやり方だ」。国内誌・財経のベテラン記者の楊海鵬氏はこのように指摘(フランスのRFIラジオ)。雷氏のような地元出身の幹部について、利用できると判断した場合は、不祥事が暴かされても公にせず、反対にトラブルを解消してあげることにより、自陣に加える。「地元派閥を解体させるためにも使われてきた手法だ」と楊氏は語った。
薄王国だった重慶市で封印された動画がいま「王様」の失脚で、公安局内部の人により日の目を見た。不正の暴露でひんぱんにブロックされてきた人民監督網も今回は「無事」だという。「風向きが変わった」「当局内部の権力闘争の延長かもしれない」と朱さんは分析。それを裏付けるように、胡錦濤氏に近いといわれる団派の孫政才氏が重慶市のトップの座に就いた23日に、雷書記の解任が発表された。
孫書記はその後の26日に「低俗で乱れた風紀に断固反対」「地位を利用して賄賂を受け取り、便宜をはかる行為を厳重に取り締まる」などと発言した。一方、北京では、政法(司法・公安)委の孟建柱・新書記も重慶市に精鋭を送り、孫書記の腐敗撲滅を応援するとRFIは報じている。政法委は、薄氏の後ろ盾となる前政治局常務委員の周永康氏の牙城であったことも知られている。こういった流れから、孫書記の腐敗撲滅は、重慶市に未だはびこる薄勢力を一掃する方策だという見方もある。
雷書記の情事はまだ序の口
人民監督網の朱さんは21日、動画のみならず「雷氏が親族にさまざまな便宜をはかった不正の証拠も握っている」とミニブログに書き込み、これらの証拠も重慶市当局に提出するつもりだという。国内メディアは、雷書記がインフラ建設をめぐり、弟に多大な利益になるようはからったと報じている。
さらに、「公安局内部の人」が朱さんに渡した動画は全部で6本。雷書記以外に、1人は薄・王事件後に失脚し、残りの4人は「いまも政府幹部のポストに就いている」と朱さん。雷書記の情事の相手となった女性も、「これは始まりに過ぎない」とコメントし、「もっと高いポストの人がまだ無傷だ」「彼らのたくさんの人を知っている」と検挙に協力する姿勢を示した。
だが、政府幹部の腐敗を掘り出したら、とどめが利かなくなるため、孫書記の腐敗撲滅は薄勢力をピンポイントに実施されるのではとの見方も根強い。
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