【大紀元日本10月15日】中国国内景気の鈍化および海外からの需要低迷で、中国のレアアース販売価格の急落が目立っている。これにより、中国政府はレアアース採掘および生産企業に対して業界再編や統合を加速させており、今後は大手国営企業が中国レアアース業界を寡占することになるとみられる。
レアアース価格はこの2年間において下落し続けている。ネオジムとプラセオジムの酸化物(PrNd Oxide)の販売価格は2011年ピーク時に1トン当たり140万元(約1700万円)だったのに対し、今年初めには1トン当たり49万元(約600万円)に急落した。さらに現在は1トン当たり36万元(約440万円)となっており、年始めから27%下落した。
9月20日付「中国証券報」は国内景気鈍化で需要が急速に低迷し、レアアース業界における生産過剰が、価格が急落した主因だとしている。中国レアアース業協会によると、現在中国国内のレアアース生産能力が約32万トンあるのに対し、毎年全世界のレアアースの総需要は12万トンにとどまっている。
また、原油や金属など原材料市場情報を提供し分析する市場調査会社の百川資訊のアナリストは「中国証券報」に対して、「例えば、Nd-Fe-B系焼結磁石への需要がほとんどないので、受注のない多くの企業が完全に生産停止したり、または一部生産停止したりしているのが現状だ」と話した。百川資訊は需要低迷でレアアース価格の下落傾向が今後も続くとの見通しを示した。
一方、国内だけではなく海外からの需要も大幅に減少している。中国産レアアースの主要輸出国・地域は日本、米国と欧州となっているが、中国税関統計インフォメーションセンター(CCS)が7月23日に発表した統計によると、欧州債務危機の影響や米国景気回復の遅れなど世界経済の先行き不透明感が主因で、今年1月から6月までのレアアース輸出量が前年同期比で42.7%減の4908トンとなった。
2010年9月、尖閣諸島付近で起こった中国漁船衝突事件をめぐり、中国政府が経済制裁カードとして日本にレアアースの輸出を制限した。それにより、特に中国産レアアースの最大の輸入国だった日本は、調達先の多様化などで中国産レアアースへの依存脱却を図ってきたため、日本からの需要が急激に減少した。
百川資訊によると、2011年日本向けの酸化セリウム(Cerium Oxide)輸出総量は約77トンだったが、今年1月から8月の同商品の輸出量が約33トンにとどまっている。また、昨年酸化ネオジム(Neodymium Oxide)の輸出量は約510トンだったに対して、同1月から8月には約196トンと大幅に減少した。
9月27日付「証券日報」によると、2006年から2010年のあいだ、中国は平均毎年日本に対して約2万トンのレアアースを輸出していたが、2011年の年間輸出総量は1.8万トンに減り、今年1月から6月までの輸出量はさらに3000トンまでに激減したという。尖閣諸島問題で日中関係が緊迫している中、中国国内では日本向けのレアアース輸出をさらに制限しようとの声に対して、一部の専門家は制裁を行っても効果が薄いとの見方を示している。
また、中国政府が2008年から環境保護の目的でレアアースの輸出割り当て量を減らし、実質上輸出規制を実施したため、日本だけではなく、米国や欧州も自国での採掘を再開するなどで調達先を変えることにより、中国への依存脱却を急いでいる。今年6月末、日米欧が世界貿易機関(WTO)に対して中国のレアアース輸出規制がWTO協定に違反しているとして共同で提訴した。
需要低迷と生産過剰で、今、中国政府は国内レアアース採掘および生産企業に対して業界再編と統合を加速させており、2015年までに現在の5分の1に再建する計画で、中小民営企業がほとんど大手国営企業に吸収されるため、レアアース業界においても大手国営企業が寡占することになるとみられる。
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