世銀、中国経済成長率を下方修正 「輸出主導型経済モデルは持続不可能」

2012/06/01
更新: 2012/06/01

世界銀行は最新の調査報告書において、中国の経済成長率を下方修正(Peter PARKS/AFP/GettyImages)

【大紀元日本6月1日】世界銀行は5月23日に発表した『東アジアおよび太平洋地区経済見通し』(East Asia and Pacific Economic Update)半年次調査報告書において、中国の年間経済成長率を下方修正し、国家投資および低付加価値を主体とした輸出主導型経済発展モデルは持続不可能になったと指摘。また、中国が減税の実施や社会保障の強化を通じ、市場化改革を進めることで国内消費を刺激していかなければならないと提案した。

中国の経済失速「予想より速い」

世界銀行は同報告書で、中国の2012年経済成長率を前回の8.4%から8.2%と下方修正した。また、国内消費をどのように刺激していくかが中国政府にとって最重要の課題になっているとした上で、中国は財政余地があるためハードランディングを防ぐことができるとしながらも、「ソフトランディングの状況下でどのように経済成長を保っていくかは、中国政府が直面しなければならない難題だ」と指摘した。

世界銀行はまた同報告書において、「今回の経済失速は、現在ある中国の経済発展モデルが持続不可能になったためだ。それが原因であるかぎり、経済失速のペースは予想よりも速くなるだろう」との認識を示した。

さらに世界銀行は、現在中国の経済発展モデルは金融機関への融資およびインフラ建設への投資に依存し過ぎており、「このような発展モデルでは国家の産業化過程における多くの実質的問題は解決できない」と強調する。5月22日に中国政府がインフラ建設への投資を強化する政策を打ち出したことに対して、同報告書は「(政府が)政策を制定する際、その政策の長期的な影響力および将来における経済成長目標を念頭に置かなければならない」と否定的な認識を示すとともに、「中国にとっては財政政策で国内経済、または内需を刺激することがより良い選択肢である」と提言した。

最大の課題は「内需への刺激」

世界銀行は、中国が内需を刺激していくためには、財政政策と金融政策の両面から、同時に実施すべきだと主張する。そのうち財政政策では、国民への課税を軽減し、社会保障を強化するなどの政策を打ち出さなければならないとする。

世界銀行のチーフエコノミストであるバート・ホフマン(Bert Hofman)氏はブルームバーグ・テレビの取材に対して、「東アジアの一部の国、特に中国は国内の消費を拡大させなければならない。政府は社会保障を強化するために関連措置を出すべきだ。また、中国は現在、農村の労働力がほぼ都市部に吸収されているため、国民の賃金や所得を引き上げなければならない」と述べた。

一方、金融政策について世界銀行の同報告書では、「中国(の中央銀行)は金融機関から預かる預金準備規模を減らし、預金準備率を引き下げることで、将来さらに悪化する経済情勢に対応していけるだろう」との見解を示すとともに、「中国が経済成長を安定的に保っていくためには、中国政府による市場へのコントロールを緩和し、市場主導型経済へ移行しなければならない」と指摘している。

中国経済低迷が、東アジア成長鈍化の一因に

ホフマン氏はまた、中国の今年の経済成長率が8.2%と、昨年の9.2%から低下すると予測されていることに関して、「これは中国ばかりでなく地域全体にも影響を及ぼすだろう。中国向けの輸出がこれまでよりも難しくなるからだ」と見解を述べた。

世界銀行は、東アジアの今年の経済成長率を前回調査の8.2%から7.6%に下方修正するとともに、東アジア諸国が高い経済成長率を維持していくためには輸出への依存度を軽減し、内需拡大に努めるべきだとの認識を示した。

さらに世界銀行は、「緩和的な金融政策で景気が上向くことによってインフレリスクが生じている。政府当局者は緩和政策を転換しなければならない」と警告している。

(翻訳編集・張哲)