中国 果実輸入制限でフィリピンをけん制 背景は中沙諸島領有権争いか

2012/05/12
更新: 2012/05/12

【大紀元日本5月12日】中国、フィリピン、台湾、ベトナムがそれぞれ領有権を主張している南シナ海の中沙諸島で4月8日、中沙諸島の黄岩島(スカボロ礁)に停泊していた中国漁船に対して、フィリピン海軍が検閲を実施。中国側の監視船も駆けつけて、双方が対峙する事態となった。以来、両国間の緊張は現在も続いている。その最中である今月9日、中国当局は今後、フィリピン産輸入果実への検疫を強化するとフィリピン側に通知した。専門家は、中国当局が「経済で政治を制する」という典型的な方法により、領有権で対立するフィリピンに圧力をかけたと指摘するとともに、中国のこのような手法は、日本や台湾に対しても用いられていると述べた。ボイス・オブ・アメリカ(中国語版)が伝えた。

フィリピン政府に圧力をかける中国の思惑

中国側の検査検疫局はこの通知のなかで、「これまでに何度もフィリピン産のバナナやパイナップルなどに疫病菌や害虫類の付着が見られた」とし、その風評が中国国内に存在するうちは検疫を強化すると主張している。

フィリピンバナナ栽培輸出業者協会主席・アンディグ氏によると、実際に中国の検疫を通過できないバナナがすでに発生しているという。同氏は、黄岩島対峙事件の影響で中国市場を失えば、フィリピンのバナナ関連産業は甚大な打撃を受け、両国間の貿易関係が崩れる恐れがあると指摘した。

台湾シンクタンク執行委員・頼怡忠氏は、フィリピン産バナナ輸出量の5割以上が中国向けであることから、中国側の狙いは、農産物検疫強化政策によって輸出困難にすることで、フィリピンの農業関係者から同国政府へ強い圧力をかけさせる点にあると分析した。

同氏によると、フィリピンのバナナ生産農家の背後には社会的影響力の強い地主階級が多くいるため、農家に打撃を与えるこのやり方は、フィリピンの上層部にも動揺を与え、政府に対し一層強い圧力をかけることになるという。

同様の手段、日本や台湾にも

頼氏はさらに、この「経済で政治を制する」という常套手段により、中国はこれまで日本や台湾にも政治的圧力をかけてきたと指摘する。

2010年9月7日、東シナ海の尖閣諸島付近で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生。中国人船長と乗組員が逮捕されたが、その際、中国側は、日本向けレアアースの輸出制限などによって日本をけん制し、船長らを釈放させた例を同氏は挙げた。

また同氏は、中国が、台湾の農水産物の重要な買い手になっていることも、中国側の政治的思惑があると述べる。

2006年に台湾のバナナが豊作で生産過剰気味であったとき、中国はすぐさま200トンの台湾バナナを購入した。また昨年11月以降、中国側から多くのアプローチをかけて、台湾中南部の果物や水産物を大量に買い付けるなど目立った動きも見せている。

頼氏は、台湾の農水産業について、対中国向け輸出が過度になれば、今回のフィリピンと同様な問題が起きると警告し、中国の常套手段に注意を呼び掛けた。

頼氏はまた、農水産業以外の分野についても、かつて台湾の高雄市長・陳菊氏がダライ・ラマ14世を同市に招いた際に、中国側が台湾へ観光する旅行団体をキャンセルさせたことで高雄の旅行関係業界に大きな損失を与え、高雄市政府と対立を生じさせた実例があると指摘。そのように、経済的損失を与えることによって相手国側に問題を生じさせる中国の手法に、警戒することを促した。

(翻訳編集・余靜)