一家7人、山に隠れて20年 中国「黒孩子」の実態

2012/04/04
更新: 2012/04/04

【大紀元日本4月4日】最近、河南省三門峡市盧氏県で、子供5人を含む一家7人が、およそ20年間にわたって山中で自給自足の「原始生活」を送っていたことが中国の国内メディアで伝えられ、注目を集めている。5人の子供は、いずれも戸籍に載っていない「黒孩子(ヘイハイズ)」で、学校教育を全く受けていない。

 人目を避け、山の中で20年

 盧氏県範里鎮楼房村の農民であった高建帰さんとその妻・王建凌さんは、20年前に結婚した。ところが、その結婚にあたり、ある親戚が不正をはたらいて2人の結婚証明書を偽造したため、その後、2人の間に生まれた5人の子供は、いずれも戸籍を得ることができなかった。

 以来、現在に至るまで一家7人は、産児抑制を担当する行政職員の目を逃れるため、最も近い村からでも5キロ離れた山中に粗末な小屋を作って、原始人さながらの生活を送ってきた。取材したメディアが見た彼らは、ぼろの衣服をまとい、髪はぼさぼさで満面が汚れて垢だらけであったという。

 彼らが住んでいた隙間だらけの掘っ建て小屋には、もちろん電気はなく、粗末な寝床と釜戸、それにいくらかのジャガイモとトウモロコシがあるだけだった。生活用水は、山の斜面の下にある溜め池から汲んでくる。もとは食用油が入っていた二つのプラスチック容器が、水運びに欠かせない道具である。

 5人の子供のなかで最年長の息子は18歳になるが、町で働くための身分証明書を持っていないため、村で石担ぎなどの手伝い仕事をして、油や塩を買うわずかな金を稼ぐしかない。3番目と4番目の子供も、すでに就学年齢になっているが、戸籍もお金もないため、学校には行っていないという。

 王建凌さんによると、夫と12歳の娘が山で採ってくる漢方薬の材料が、生活必需品を買うためのわずかな現金収入となるだけで、通常は、山の斜面を開墾した畑で自給用の大豆やトウモロコシを作り、なんとか生活を維持しているという。

 ところがこの2年ほどは、50歳になる夫が病気がちで、日々の暮らしはますます困窮している。「こんな生活は、もうたくさんよ」という彼女は、町で生活することを夢に見るほど願っているが、戸籍もお金もないこの一家には、なす術がない。

 黒孩子が、いま黒人(ヘイレン)へ

 高建帰さん一家の20年にわたる「原始生活」が世に知られて以来、中国共産党による「一人っ子政策」の落とした影がこれほど深刻なものであったことに、人々は改めて驚くとともに、「まるで知らなかったとは、地元政府職員の良心は一体どこにあるのか」と地元政府を批判する声も上がっている。

 中国で1979年から始まった人口抑制政策、いわゆる「一人っ子政策」は、若年層に比べて高齢者の割合が肥大するなど人口構成を変化させたほか、第二子を妊娠した女性に対して中絶を強制したり、男子に偏重した産み分けの結果、若者の男女比のバランスが大きく崩れるなど、人道的にも社会的にも多くの弊害をもたらした。

 その一つとして、戸籍に載っていない「黒孩子」が大量に生まれたことが挙げられる。彼らは今、成長して大人となりつつあるが、依然として無戸籍のままの「黒人(ヘイレン)」であるため、就学や就業の機会を得ることは非常に難しいのが実情である。この場合の「黒人」とは、人間の色を指すものではなく、政府の視点から、その数さえ把握できないという意味での「闇の人口」を呼んだ言葉である。

 現在、河南省を含む中国全土において、条件つきながら第二子を認めるなど、一時期よりも規制の緩和がなされている。しかし、すでに生まれている戸籍外の人口は、推定でも数千万人から数億人と言われており、その実数が把握できないことも含めて、中国の大きな社会問題の一つとなっている。
 

(翻訳編集・牧)