【大紀元日本3月31日】中国複数の国内メディアによると、中国共産党政権設立以来最大規模の密輸・贈賄事件「遠華密輸事件(アモイ事件)」の首謀者・頼昌星の法廷審理が4月初めに開始するという。同事件に江沢民派閥の多くの高官が関与しているとされているため、中国問題の専門家らは、共産党内部の闘争が激しさを増している中、この時期での法廷審理は「非常に意味深い」との認識を示した。
「遠華密輸事件」の背景
1999年に起きた同事件は、頼昌星を会長とする遠華電子有限公司という貿易会社が、約800億元の関税を脱税したとされ、建国以来最大規模と言われている。関わった政府関係者だけでも1000人以上という未曾有の規模である。アモイ副市長などアモイ市指導部多数が密輸と収賄などで逮捕され、死刑判決などを受けた。
事件が発覚した後、頼昌星・容疑者は2000年一家を連れてカナダに逃亡し、カナダ政府に難民申請を行った。中国政府は同容疑者の身柄の受け渡しをカナダ政府に度重なって要求していた。
2011年7月23日、同容疑者は中国に強制送還され、当局に逮捕された。香港・東方日報は同日の報道で、同容疑者が握っている「遠華事件」に関する官商結託の内幕、関わっている人物の数や官位の高さは、おそらく外部の想像を超えるだろうとし、彼の送還は必ず中共各派閥の権力のバランスに影響すると指摘した。
「胡・温政権の切り札」
事件発生当時、福建省トップの党委書記は賈慶林氏。同省ナンバー2の省長は賀国強氏だった。いずれも江沢民国家主席(当時)の側近で、頼氏と親密な関係にあるとされ、密輸を黙認していたとの説もあった。2人はその後、江氏に抜擢(ばってき)され中央入りし、現在は共産党最高指導部の政治局常務委員会でそれぞれナンバー4とナンバー8の指導者にまで出世した。
また香港メディアは習近平・国家副主席が95年から福建省党委副書記で、99年には副省長となったことから、同副主席にも政治責任があると伝えた。
同容疑者にメスを入れると、賈慶林氏の闇、ひいては江沢民派閥の闇が暴かれることになる。そのため、経済犯罪であるはずの遠華事件は党内部の権力闘争の1つのコマとなっている。
頼容疑者自身がカナダに滞在中、周囲に「自分が帰国したら、多くの高官が眠れないだろう」と語ったことがある。
中国憲政学者・陳永苗さんは2月中旬、ドイツ国家放送局ドイチェ・ヴェレーの取材で本案の政治絡みの背景について次のように分析した。
「この案件は胡・温政権が握っている切り札の一枚である。そもそも当初、事件捜査を開始したのも、中央の政治派閥の権力闘争に関連している。当時の朱鎔基・首相が江沢民・国家主席をけん制するため、遠華事件から着手しようとしたが成功しなかった。今年秋に開催される中国共産党の第18回全国代表大会(略称・18大)で党最高指導部の主要人事が決まる見通しである。胡錦濤・総書記はこの事件を利用して、江沢民派閥の関連高官に圧力をかけるであろう。目的は、胡・温政権の人事に口出しさせないことにある。この事件はまさに胡錦濤氏が掴んだ、江沢民派閥をけん制するカードである」
大紀元のコラムニスト・文昭氏は江沢民派閥の主要メンバーの現状について、次のように説明した。「重慶事件が引き金に江沢民派と胡・温派による権力闘争が勃発した。重慶市元トップの薄煕来をめぐって、江派だった賀国強氏は胡・温一派に転向し、頼容疑者と親密の関係にあった賈慶林氏は胡・温に追随する姿勢を見せている。同じ江派に属する呉邦国氏や李長春氏も沈黙を保っている。薄煕来氏をバックアップしているのは中共中央政法委の周永康・書記だけ。彼はすでに孤立されている。江沢民派は上層部ではすでに総崩れした。こういう意味では、アモイ事件は一定の政治的役割を果たした」
同氏はさらに、「いま、最高指導部の権力闘争は正念場に向かっている。この時期に頼昌星の法廷審理を行うのは、やはり、このカードの役割がまだ終わっていないことを表している」と指摘した。
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