【評論】最終ターゲットは江沢民か 混迷する中国政局の今後 前半

2012/03/24
更新: 2012/03/24

【大紀元日本3月24日】2月7日に起きた重慶市元公安局長王立軍氏の米総領事館駆け込み事件を発端に、中国の政治情勢は今、混迷を極めている。王立軍氏に続き、最高指導部入りを目指す同市トップの薄煕来氏が解任され、そして周永康政治局常務委員の失脚も取りざたされ、まさにドミノ倒しが起きている。事態はどこまで進むのか、現指導部の思惑について、本紙コラムニスト・夏小強が解説する。

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重慶市共産党委員会の薄煕来書記が最高指導部から解任された。様々な兆候から、国外の評論家は、胡錦濤国家主席と温家宝首相が次に政権から排除しようとするのは、中共中央政治局の常務委員で中央政法委員会の周永康書記だと見ている。しかし私は、周永康氏よりも、江沢民元総書記のほうが(排除される)可能性はずっと高いと見ている。

 なぜ、最終の排除の対象が江沢民氏なのか

1989年から2002年までの江元総書記の在任中、江氏の一族は中国の電信産業を独占し、巨額の富を手に入れた。その一方、江氏が在任期間中に行った重要な政策の一つが法輪功への集団弾圧だった。もはや周知のことであるが、法輪功弾圧は江元総書記が1人で押し切ったのである。中国共産党の最高指導機関で、政策を討議・決定する中共中央政治局は当時、そのメンバーである7人の常務委員のうち、6人は法輪功弾圧に同意しなかったという。この事は、中国政府系出版社が2005年に出版した書籍「江沢民伝」から確認できる。

弾圧が最終的に実行できた理由は、当時、江沢民氏が党・政・軍の最高権力の全てを握っていたからだ。また、江氏一族の汚職問題と法輪功弾圧の責任が追及されるのを避けるため、江政権の期間中はこの政策を継続せざるを得なかったのである。

江氏は、中共中央政治局の常務委員を7人から9人に増やし、特に情報、治安、司法、検察、公安などの部門を主管する最高機構・中央政法委の書記を政治局の常務委員に編入するとともに、自分の腹心を多く配置した。また江沢民氏自身は、2002年に総書記の座から退いた後も、党と国家の中央軍事委員会の主席を2年間務め、軍部に自分の側近を多く配置し、自身の勢力とネットワークをさらに強化した。その結果、後任である胡錦濤軍事委員会主席のとき、軍の最高司令部の高官はほぼ全員、江沢民氏が抜擢した人材で占められていた。これらが、胡・温政権がその10年の任期の間に直面した難題、すなわち巷間よく言われている「政令が中南海から出ない(注・党首脳部からでなく引退した江氏から命令される)」ということなのだ。

胡・温政権の任期は今年で終わる。江沢民氏は、引き続き政局をコントロールし、従来の政策や法輪功弾圧を続けるため、この弾圧政策を主導している中央政法委トップ周永康氏の後継者として、薄煕来氏を配置しようとしていた。しかし時間の推移に伴い、江沢民氏の健康状態はますます悪化する一方である。周囲がはっきりと分かっているのは、法輪功弾圧が長く続くのはありえないことであるとともに、一旦、江沢民氏の身に何かが起きれば、事態が変化する可能性は高いということである。

もし、胡・温政権がその任期内にこの問題を解決できなければ、将来、法輪功弾圧の罪が追及される時に、胡錦濤・総書記と温家宝・首相も、そのしがらみから逃れられない。同政権の10年間にも、法輪功弾圧は続いていたのである。両氏が、江沢民氏とともに責任を追及されるのは避けられないだろう。私が思うには、胡・温両氏はこの点をはっきりと分かっている。これもすなわち、王立軍事件が引き金となって始まった最高指導部の内部権力闘争が、周永康氏でとどまらない原因である。もし、ここで胡・温政権が江沢民氏の責任論を引き出さなければ、最も根本的な問題である法輪功問題を解決できない。そうでなければ、たとえ両氏が内部の権力闘争で勝利し、政権交代が順調に完遂でき、江沢民派に揚げ足を取られなかったとしても、やはり将来、国民から強く問責されるだろう。

 胡・温両氏は江沢民氏を引き出すことで、政権の崩壊を恐れていないのか

江沢民氏を引き出すことについて、確かに胡・温両氏は躊躇するだろう。しかし、事態の推移につれて、多くのことも変化している。中共を一隻の沈没しかけた船に例えてみよう。船上では人々は生死をかけて激しく戦っている。今にも自分の頭に振りかかってくる刀の前で、人は本能的にこの刀を防ごうとする。その時、船が沈没するかどうかを気にする余裕は、おそらくないだろう。いまの胡・温政権はまさにこのような状況に直面しているのである。

中国共産党内部の権力闘争は、すでに誰が生き残るかという問題にまで至っている。各勢力にとって、自分の命を保つのが第一の急務だ。しかも王立軍事件は、中共の内部闘争のこれまでのルールと均衡関係を壊した。これまで、最高指導部の内部闘争は公にされず、水面下で進行するのが慣例だった。しかし現在、もはや各勢力はそれにかまっていられない。つまり政権の存亡が、権力闘争の渦中で二の次にされている。それは同時に、中共政権全体が、失速し、崩壊に向かっていることを露呈したのである。

(後半へ続く)

 (翻訳・叶子)