【大紀元日本12月30日】最近、ここ数年の過熱ぶりからは成長に陰りが見られる中国経済だが、その副産物である大気汚染など公害の深刻さは高まるばかりだ。酷いときには建物2、3棟先すら見えなくなる北京の大気汚染は、空路や鉄道の遅延、欠航を引き起こし、さらに人体には緊急入院が必要なほど深刻な悪影響を及ぼすことさえある。
カナダ紙・グローバルアンドメールによると、世界でもっとも多く温室効果ガスを排出する中国で、この汚染に対処する経費は莫大で、毎年数億元にもなると伝えられている。それは急激な工業化を遂げ、世界第2の規模となった中国の経済力を脅かす。
世界銀行北京支店のカーター・ブランドン環境部門担当は同紙の取材に対し、「(中国の)現在の大気汚染レベルのままで、人々の所得水準を高くすることなど出来ない」と答えている。
大気汚染の影響は、中国の国内総生産のおよそ3.3パーセントに当たると世界銀行は予測している。また人々に与える健康被害の額はおよそ7000億元(約8兆4千億円)に達すると試算した。
重金属などを含む汚染微粒子は器官に入り、長く続けば気管支炎や喘息、あるいは肺ガンや心臓発作、さらに他の慢性疾患を引き起こす。国内紙・工人日報によると、中国では毎年約36万人もの都市住民が大気汚染により死亡し、60万人が入院しているという。
最近、台湾大学付属病院で開かれた大気汚染に関するフォーラムで公表された内容では、台湾では中国からの大気汚染と指摘される公害が報告され、国内では年間約440人が有毒物質を含む大気中の汚染微小粒子が原因で死亡していることが明らかにされた。
駐北京米国大使館は測定器を設置し、大気汚染の観測結果を公式ツイッターで公表している。酷いときには「緊急事態」「危険」などと評価して、人々に警鐘をならしている。
中国当局は、汚染問題解決は優先事項だと発表している。クリーンエネルギーへの投資は、重点事業や経済計画を盛り込んだ5カ年計画(第12次・2011~2015年)の中にも含まれている。2013年までに、すべての石炭・火力発電所は温室効果ガス排出量を新しく定めた基準内に収めると宣言した。
世界銀行のブランドン氏は、世界経済の景気減速は中国の汚染問題解決に優位に働くかも知れない、と考えている。なぜなら一般的に景気後退は「環境によい」とされているからだ。ブランドン氏はこう述べる。「2008年、経済危機の時には、世界中の二酸化炭素排出量が減少したのを確認している。エネルギー分野において、停滞でなく発展途中にある中国が、これを機にクリーンテクノロジーを駆使した環境問題解決を図る国のひとつとなるよう、望んでいる」
北京の大気汚染は、交通量の増加や石炭の燃焼など工業化が原因とされているが、これまで急速な工業化の過程を経てきた欧米や日本でも、これほど酷い大気汚染は観測されていない。気候や地理的な要因もあると専門家は指摘しているが、詳細な理由は明らかになっていない。
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