東アジアで中国は「孤立」か 環球時報「包囲網」批判

2011/11/24
更新: 2011/11/24

【大紀元日本11月24日】東南アジア諸国連合(ASEAN)は23日、ASEAN各国や日米中、インドなど18カ国の首脳が参加した東アジアサミットEAS)の議長声明を発表した。南シナ海問題など海上安全保障を協議する「ASEAN海洋フォーラム」を東アジアサミットの枠組みへ拡大する案について、「前向きに留意」と明記し、中国が強く反対してきた多国間協議が、今後も検討される方針が決まった。

南シナ海の領有権問題に関して、19日のサミットで中国の温家宝首相が改めてEASでの協議に関する反対を表明したが、この日の討議の焦点はまさにここにあった、という米政府高官の話をラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は報道している。ASEAN各国は、中国が主張する当事国同士による「2国間交渉」に反対し、国際規範に従って各国が連携して解決することを望んでいることが明らかになった。

 中国は「孤立」

RFIは中国の孤立状態について分析した。EASの18の参加国のうち、ASEANに含まれない日本、インド、オーストラリア、ニュージーランド、韓国は、米国と一定の軍事同盟を結んでいる。ロシアは米国とは異なる立場にあるが、中国と共通の利益を主張しているわけでもない。

また、ASEAN10カ国のうち、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイの5カ国は、それぞれ中国と南シナ海における領土係争を抱えている。タイ、カンボジア、ラオスはメコン川問題で中国と対立し、南シナ海争いに似た経験をしている。国民の8割が中国系というシンガポールは、中国との領土紛争はないものの、米国の介入を明確に支持している。唯一中国の同盟国だったミャンマーは最近、民主化が進み、国際問題における立場も中国から離れ、米国に接近している。ミャンマーは、2014年のASEAN議長国への就任も決まり、米クリントン国務長官の訪問も来月に予定されている。

 米国の介入は「両思い」

クリントン長官が昨年、世界の貿易物資が行き交う南シナ海での航海の自由を守ることは米国の国益だと述べ、この海域の領有権問題への関わりを強化している。オバマ大統領も「アジア最優先」の姿勢を明確に打ち出している。RFIは、米国のアジア復帰は同国の「片思い」ではなく、ASEAN各国も、それぞれの国益は異なるものの、不透明で急速な軍備拡張を続ける強硬な中国をけん制するために、米国のアジア関与を歓迎しており、いわば「両思い」だと指摘する。

米政府系ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、東南アジアに詳しい豪州ニューサウスウェールズ大学のカール・セイヤー名誉教授もRFIの分析と同じ見方をしている。「ASEAN各国は自国の力を拡充すると同時に、大国間がけん制しあうことで同地域のバランスが維持されることを必要としている。米国の介入はこれらの国に酸素を供給したようなもので、各国はこれでやっと呼吸することができる。(同地域において)米国が中心的な役割を果たしてくれれば、中国も米国の存在を考慮した上で行動しなければならなくなる」と教授は分析する。

また今回のサミットでは、ほとんどの参加国が、オバマ大統領が提案した「国際法・武力を行使しない・国連海洋法条約・航行の自由と安全」などのキーワードの遵守と確保に同意している。

 中国は「包囲網」に反発

一方の中国では、人民日報傘下の環球時報が「米国のアジア復帰にそんなに焦る必要はない」と題する社説を掲載。「中国は戦略上、米国の『包囲網』を蔑視することができる。米国には中国の包囲に使う力がないからだ。オバマ大統領にとって、大統領の座が何よりの優先事項で、経済復活がこのために何よりも重要なのだ」と強気な姿勢を示している。

この論調に関して、米シートンホール大学の名誉教授・楊力宇氏は「中国の自身を慰める言葉に過ぎない」と断じた。米国の軍事上における優勢は疑う余地もないと楊教授は指摘し、中国の空軍も海軍も米国のそれらに匹敵する力は備えていないと分析した。

在米中国人科学者が構成する米中科学技術交流協会の謝家叶・会長は、環球時報が主張した「蔑視」は間違っており、中国は真剣に米国に向き合わなければならないと主張した。南シナ海における米国の軍備配置は、実力にバックアップされており、重要な意味を持つ。また、経済状況においても、謝会長は「経済の衰退は世界中に広がっている。その中で、中国が米国に比べて特に有利な状況に立っているようにも見えない」と分析した。

 (翻訳編集・張凛音)