米大統領の批判に、直接の反論を避ける中国

2011/11/17
更新: 2011/11/17

【大紀元日本11月17日】オバマ米大統領は、13日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、中国への攻勢を強めた。人民元切り上げ問題について「中国は成熟した。責任を持って対処することが必要だ」と中国を強くけん制した。また、胡錦濤国家主席との会談で、米国民は中国による不公正な貿易慣行や通貨政策に苛立ちを強めていると述べ、かつてない強い口調で中国を批判した。

米の一連の攻勢に、他国の批判にいつも強気な中国も今回だけは違った。中国は直接の反論を避け、米に「理解」を求める姿勢に徹した。劉振民外務次官補は15日の記者会見で、米大統領の発言について見解を求められた際、「本人に聞けばいい」とコメントを控えたが、「わが国はまだ発展途上国。一人当たりのGDPは世界100位前後だ。米国が期待するほどの国際貢献ができない」と理解を求める姿勢を示している。

中国人民大学国際安全専門の時殷洪教授はオバマ大統領の発言に「驚かない」と評し、「米国内の厳しい景況で機嫌が斜めになったのでは」と述べた上で、「米大統領の選挙を控える今、中国との経済関係への圧力が高まる一方だ。しかし、中国は米との安定した関係を望んでいる」と中国側の言動を説明した。

米大統領の強い批判に反論をしなかった中国はその背後に厳しい国内事情があると見られる。中国でも2012年に指導部は刷新される予定。ロイター通信は、中国共産党政権は指導部の人事交代が平穏に実現されるまで、米との間にいざこざを起こしたくないとの見方を示した。また、中国経済には今現在、不動産バブル崩壊の危機、中小企業の大量倒産などの圧力がのしかかっている。

米国デューク大学社会学部の高柏教授は自由アジア放送の取材に対して、「米政府がアジア太平洋地域での復権を狙っているため、現在、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を主導に交渉を行っていることや米軍の豪州常駐など、米政府はアジアで多方面に展開している。一方、アジアで米と覇権争いをしている中国は国内情勢に足をひっぱられ、国内の安定を最重要課題と見なし、現在中国は人民元切り上げ問題や貿易均衡問題などで、このほど一段と批判を強めた米国側に応える余裕がなく、また具体的な対応策も打ち出されていない」と指摘した。

高教授はさらに、「現在欧米諸国は厳しい経済状況が続き、外需が縮小したため、中国の輸出が大幅に減少している。その低迷から脱却するには、中国は一日も早く内需主導型経済モデルに転換しなければならないが、しかし公的権力を乱用して私的利益を得ている、いわゆる既得利益集団は自分たちが利益を得られる限り、中国の経済モデルの転換をしないだろう」と、中国政府が今後も輸出主導型経済モデルを継続するとの見方を示した。一方、米オバマ大統領は来年の再選に向け、米国内の圧力を無視できない状況にあり、米中の経済問題において譲歩する可能性が極めて低いとみられ、米国と中国の間で人民元や貿易に関する論争はまだまだ続くだろう。

(翻訳編集・高遠)
関連特集: