【大紀元日本9月9日】輸出制限を続けているレアアースの最大供給国、中国。その中国の李克強・筆頭副首相はこのほど、日本の先端的なレアアース技術を評価し、技術を提供してほしいと述べた。評論家は、日本のレアアースの需要が盛んであるため、両国の提携実現にはある程度の可能性があるとしながらも、日本側が譲歩して技術を提供する可能性は低いと指摘する。一方、自らの市場優勢を餌に、先進国に技術供与を迫るという中国の常套手段に、非難の声が上がっている。
李副首相は6日、来訪中の日本経団連の米倉弘昌会長とトヨタ自動車の張富士夫会長と北京で会談した。その席で李副首相は、「日本はレアアースの開発と利用で優れた技術を持っている」と述べ、両国の企業間で、この分野での提携を強化したいと述べた。さらに、レアアースを使う製品の現地生産も求めており、日本企業の先端的なレアアース技術を中国へ導入するよう要求した。
ロイター通信によると、日本はこの会談で中国にレアアースの輸出制限の緩和を求めた。それに対し、李副首相は、レアアースの輸出制限は環境保護のためだと答え、その要望に応じる姿勢を見せなかった。
今回の会談が終了した6日の夜、トヨタ自動車の張富士夫会長は北京での記者会見で、中国側の技術提供の要求について、政府と議論すると述べた。
レアアースの貯蔵量が世界一の中国は、供給量においても世界の95%を占めている。一方、日本のハイテク産業は大きくレアアースに依存しており、その需要は世界の3分の1に達するという。
2010年9月、日中両国は尖閣諸島での漁船衝突事件により、領土問題に関する争議が激化し、外交関係が緊張化していた。その直後から、中国は対日本のレアアース輸出を一時ストップした。その後、輸出は再開したものの、昨年の年末と今年の7月に、中国は2度輸出枠を削減。レアアースの輸出価格は上昇しつづけ、今年5月には、輸出が解禁された昨年12月の3倍近くに高騰した。
経済産業省は5月に公表した本年度の「不公平貿易報告」の中で、中国のレアアース輸出制限のやり方について、「世界貿易機関の規定に違反する可能性がある」と指摘した。日本の各大手自動車メーカーや、家電メーカーは生産の安定化を保つため、中国以外のレアアース供給ルートを急ピッチで開拓し、長期契約の締結を急いでいる。
このような状況の中、今回、李副首相が日本企業にレアアース技術の供与を求めたことについて、「世界市場でのレアアースの供給は今後数年間で多元化になり、中国の独占的な優勢は徐々に薄れていく」と、世界エネルギー分野の専門家で英国王立国際問題研究所のアンドリュース・スピード氏がボイス・オプ・アメリカ(米VOA)の取材に答えた。スピード氏はさらに、中国政府が日本の足元をみて技術提供を迫っても、日本側はそれに応じる譲歩をするとは限らない、と述べた。
「巨大市場などの優勢を利用して、先進諸国に技術供与を迫るのは中国の一貫した手段である」と国際社会から非難の声が上がっている。
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の報道によると、米ゼネラル・モーターズ(GM)が今年の年末までに、世界初のレンジエクステンダー式電気自動車「シボレー・ボルト」を中国で発売しようとしているが、中国政府は同社に圧力を講じ、同自動車の主要技術の一部提供を迫っている。
中国政府は、GMがシボレー・ボルトの3つのコア技術のうち1つを中国側合弁パートナーに譲渡しない限り、シボレー・ボルトに対する補助金適用を認めないとしている。レンジエクステンダー式電気自動車の研究開発と製造には高額な経費を必要とし、中国政府の補助金がなければ、中国市場での活路を見出しにくいという。
同紙は、「中国政府はこの手口を駆使して、多くの産業分野で発展を実現させてきた。例えば、風力発電、高速鉄道、浄水化技術など。今回のGMとの確執は、新たに発生した事案の一つに過ぎない」と報じた。
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