【大紀元日本8月31日】今年6月に保釈された中国の著名な芸術家・艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏は28日、沈黙を破り、米誌ニューズ・ウィーク(電子版)で政府批判を展開した。「北京は悪夢だ。終わりなき悪夢」。艾氏は記事の中で、北京は人を狂気にさせる監獄だと痛烈に批判し、自身が監禁された経験から、人権弾圧する中国の司法制度を厳しく指弾した。
「司法制度は決して信用できない」
「北京には人をひそかに監禁できる秘密の場所がたくさんある」。そこに監禁される人には名前はなく、あるのは番号だけ。艾氏は、自分が連行されたのち家族が情報を求めるために奔走しても、町の自治会から、裁判所、国の幹部、ひいては国の指導部までも誰も相手にしてくれなかったという。
監禁された日々は「完全なる隔離状態」にいると艾氏は綴る。「いつまでそこにいるかは分からないが、彼らはどんなことでもしかねないことはよく分かっている」。そこにいると、精神が狂いそうになり、どんなに強い信念を持つ人にとっても非常に辛いと続けた。
艾氏はこれらの経験から、「北京のもっともひどい点は、その司法制度が決して信用できないことだ」と訴える。「まるで砂嵐の中にいる」ようだと表現し、すべては誰かの意志、誰かの力で翻弄されると述べた。
米国で発行されている中国情報誌「北京の春」の胡平・編集長は艾氏の文章を受けて、米VOAで、中国の暗黒な司法制度について艾氏に賛同する意見を述べた。「北京は暴力の都市だ。それはすでに長く続いている」
胡氏は、人権弁護士である北京政法大学の講師・騰彪氏が強制連行された時の様子を例に挙げた。「ある日、騰氏は自宅の前で黒い袋を被せられ、そのまま知らない所に連行された」。このようなことは、活動家や反体制派、普通の庶民にも数多く起きている。当局の司法制度は自らの統制をはかるために数々の悪法を作ったばかりか、マフィア的な手段も辞さないと胡氏は批判する。
「北京は2つの顔を持つ都市」
「北京は2つの顔を持つ都市だ」「1つはカネと権力。もう1つは絶望だ」と、艾氏は北京の二面性を指摘する。カネと権力の北京では、幹部や企業の経営者らが贅沢の限りを尽くしている。絶望の北京では、「橋や道路、家を建てるために毎年数百万人もの人がやってくるが、彼らは北京の奴隷だ」とし、「彼らの目からは希望がまったく見えない」と同情した。
表では、北京は外国人に鳥の巣やCCTVビルを見せつけ、「ほら、我々も同じようなビルを持っている」とアピールする。そしてスーツ姿の幹部が「我々も同じような人間だから商売しよう」と言う。しかし裏では、北京は公民の基本的権利を否定する。農民工の子供の学校は閉鎖され、縫合手術を終えた患者が手術費を払えないのを理由に病院はその場で麻酔なしで抜糸する。「これは暴力の都市だ」と艾氏は記する。
これに対して、胡平編集長は、中国の農民工の窮境は、アメリカの黒人問題などとは違い、歴史問題が絡んでおらず、単純に執政党である共産党の手によって作り出された状況だと指摘する。「中国の貧富の差は歴史問題でも、市場がもたらした問題でもなく、純粋に権力の産物だ」。かつて「平等な社会」を謳歌して政権を手にした共産党政権は今、社会全体の富を独り占めし、中国を極度な格差社会に作り上げたという。
「北京への挑戦」
艾氏の保釈は、1年間はメディアの取材を受けない、外国人に面会しない、マイクロブログ(微博)などの利用を禁止、人権活動家と接触しないなどが条件だった。今回公の場での政府批判は北京にとって、「このもっとも有名な活動家にどう対処するか」ということへの挑戦状だとロイターは指摘する。
艾氏は記事の中で、公園に行くと、親指を立ててくれる人や肩をトントンと叩く人がいることに言及し、言葉を交わすことはないが、尊敬と支持の意を示してくれるという。
支持者に言われる言葉は2通りあると艾氏は言う。「中国を出なさい」と、「長生きして彼ら(政権)が滅びるのを見届けよう」。艾氏は今まで、決して中国を離れないと明言していたが、今回の文章の中では「離れるか、彼らがどう滅びていくのかを辛抱強く見届けるか、どうすればいいか分からない」と綴った。