【大紀元日本8月30日】中国国内で「最も影響力がある」と言われる雑誌『南風窓』に、厳しい政治の「北風」が吹きつけた。同誌を発行している南風窓雑誌社の社長・陳中氏がこのほど罷免され、中国共産党広州市宣伝部の出身で、「広州日報」前副編集長の周成華氏が新社長に就任。その背景には、言論・出版界への制御を狙う中国共産党の中央宣伝部(中宣部)が、出版社などの人事に介入して大鉈(なた)を振るい、当局に都合の良い人物をトップに据えるというメディア統制の実態が伺われる。
『南風窓』編集長の趙霊敏氏によるインタビュー記事「中国要崛起、必須告別革命外交(中国は決起して、革命外交に別れを告げよ)」について、南風窓雑誌社を傘下に置く「広州日報」グループの湯応武書記から「多党制を宣揚している」という強い批判があったため、陳中氏は社長職を解任され、趙霊敏氏は「反省のための停職」に処せられた。17日にウェブサイト上に掲載された同記事は、18日に削除された。
しかし、この判断を下した会議に出席したある人は、次のように述べる。
「当該の記事が、なぜ批判されるのか不可解だ。趙氏がインタビューした唐啓華氏は台湾政治大学の歴史学の教授であるが、同記事に関係する内容の書籍は昨年中国で出版されている。また同記事は、広州日報総編集長の李桂文氏と政治審査を担当する周成華氏の原稿審査を通過しているはずだ。それがなぜ後になって、原稿審査を行わない陳社長が責任を負わされるのか。広州市の共産党委員会が、陳社長を更迭するために、この記事を口実にしたとしか思えない」
昨年9月、『南風窓』が、「中国第一の善人」とされる陳光標氏(中国の企業家。慈善事業などを幅広く行っていることで政府から賞賛されている人物)の「真の姿」を暴露したことにより、同誌に対する中宣部からの圧力が高まっていたという。この暴露事件の後、市宣伝部出身の周成華氏が『南風窓』に加わり、同誌の政治関係記事について検査を行っていた。
今回の「人事異動」により、『南風窓』は創刊以来初めて、社長と編集長の二つの要職が、自社採用した人材ではない人物に占められることになった。この新人事の下で、今後、『南風窓』が独立した論調を維持できるかどうか懸念されている。
これらのことについて、著名な中国人ジャーナリスト・崔少明氏は、次のように述べる。
「『南風窓』の社長らが更迭されたことは、メディアを統制するという中央政府の政策を、地方政府が貫徹しようとしていることを示している。その方法は、もちろん理由の説明も法的根拠もなく、まさに異見人士に対する厳しい処遇と同じなのだ。中国政府はおそらく、メディア統制を厳しくしなければ社会の安定を維持することは不可能だと意識しているのだろう。だからこそ、開放政策の最前線にある広東省で、一層厳しさを増しているのだ。実際、『聴話的(言いなりになる)』人物をトップに据えてメディアを規制する方法は、最近の中国政府がよく行う方法であり、彼らにとって少なからぬ『効果』を上げている」
『南風窓』は1985年4月に創刊された、時事や政治関係の記事を主とする総合雑誌。
同誌の趣旨は「改革開放の新しい観念、新しい事物、新しい潮流、新しい趨勢を伝える」ことであるという。2005年には新浪ネット上で「最も影響力がある雑誌」と評されるなど、各方面から注目されていた。