【大紀元日本7月1日】7月1日の中国共産党建党90周年を控え、中国は全国が紅(あか)一色に染まっている。紅歌、紅舞、紅のドラマ、毛沢東の詩の暗誦など文化大革命を彷彿させる異様な様相を呈している。党の「慶事」を祝うムードの中、不協和音も聞こえてきた。有識者から「狂気じみた祭り」と批判の声が高まっているほか、英メディアは「共産党は民心離れに気づき始めた」と評した。
全国を席巻した紅色運動
国営新華社通信傘下の新華網は27日のトップ記事で、重慶市で600平方メートルに及ぶ巨大な党旗が展示されたと報じた。北京、上海、河北、湖南、山西など各省・市も「全国一」を争う党旗作りに余念がない。現在最大の国旗は重慶市のある中学校が作成したもので、6300平方メートルの超大作だという。
安徽省の省都・合肥市では、2キロ続く街路樹を4000メートルの赤布で包み、赤をテーマとするロードを作り上げた。各地は奇抜さを競うかのように破天荒なイベントを次々と繰り広げた。
重慶市から始まった革命ソングを歌う「唱紅運動」はすでに全国に浸透し、刑務所の囚人、精神病院の患者、お寺のお坊さんまで巻き込んだ。重慶市では、運動に積極的に参加した囚人は早期釈放されるとの方針が打ち出された。
さらに、紅歌で植物人間の意識を呼び戻したとの都市伝説が登場し、「紅歌療法」という途方もない言い方まで提唱された。ほかに紅歌協会、紅歌ウェブサイト、紅歌コンクール、紅歌全国ツアーなど紅歌にちなんだキャンペーンが乱立し、紅歌は全国を吹き荒れている。
体制内からも批判の声
中国の著名法学者・賀衛方氏は自身のブログで、「唱紅運動」が狂気じみた祭りと化していると批判し、国民を従順にさせるための精神的柱にしようとしていると指摘した。
中国政法大学の何兵副院長は同大の卒業式で、「これは非常に奇妙な時代。革命ソングの熱唱を奨励するが、革命を奨励していない。『建党偉業』(建党記念のプロパガンダ映画)の鑑賞を奨励するが、結党を奨励していない」と、紅歌運動を公に批判した。
北京大学法学院の張千帆教授は講演会で、「中国の憲法は見た目、民主主義国家の憲法よりも整っている」としたうえで、「最初から実行する意思がなければ、いくらでも体裁よく作れるものだ」と憲法批判を展開した。
名門大学の教授たちの発言だけあって、インターネットで掲載されると、「これこそ中華民族の屋台骨」と彼らの良識が称えられた。
また毛沢東や共産党の歴史を辛らつに批判したことで有名になった歴史教師の袁鵬飛氏の口から、またもや仰天発言が飛び出し、再びインターネットで話題を呼んだ。
「自分の子供を海外に行かせておいて、この国を愛せだって?私はそこまで頭がおかしくない」
この発言は多くの国民の胸の内を代弁した。
気炎を上げ嵐のように全国を席巻する紅歌運動は効果がないと見ている人もいる。商徳文・元北京大学教授は、運動に参加する人は60歳以上の人で、若者は興味を示さないだろうと見ている。
党員8000万人の真実
中国で今、こんな笑い話がはやっているそうだ。
面接に来た大学生に、面接官が「何だ、君は党員なんだ」と話しかけた。大学生は焦りながら「党員にも良い人がいます」と答えたという。
国民に人気のない党員という肩書き。そんな党員が8000万人に達したと政府は24日に発表し、大学生が積極的に入党している、と若者取り込みの成功をアピールした。
また、建党記念映画『建党偉業』への出演を希望する俳優が400人に達し、報酬を受け取らないうえ、入党を希望する人が多数いるという話も伝えられている。
しかし、出演者のほとんどはすでに外国籍を取得した人。専門家は現実を重んじる芸能人の入党希望は理想の実現のためではなく、現体制でより多くの利益を得るためだとは分析する。
ある大学生は米VOAの取材に対して、入党を希望する動機について「公務員や国営企業に就職する際に有利だから」と語った。
滑稽な運動
ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は掲載記事で、「共産党はすでに民心を失ったと気づき始めた」と、勢いづく唱紅運動を評し、「深刻な問題が現れると、キャンペーンに解決策を求めるのは共産党の行動パターンだ」と説明した。
結党90周年に当たり、中国共産党は危機を脱する特効薬として「唱紅運動」を珍重している。
この運動はすでに中央政府の支持を取り付け、運動の提唱者である重慶市トップの薄熙来は、紅歌のおかげで、2012年に予定されている党大会で中央政治局委員会入りのための切符を手にしたと言われている。
毛沢東路線に立ち返ろうとするこの現象について、英紙フィナンシャルタイムズは6月3日に掲載された「赤い警報」と題する記事で、薄熙来のような人が毛沢東思想を権力闘争の踏み台にするのは皮肉な話だと指摘した。
その理由について、「薄熙来や習近平副主席を含む太子党は、当時親が毛沢東から受けた迫害を目にしていたにもかかわらず、今は毛沢東思想を至宝の格言のごとく扱うのはあまりにも滑稽なことだ」とした。
ドイツの声は29日に、「共産党の苦境と選択」と題する記事を掲載し、国が台頭したにもかかわらず、中国共産党は凋落していると現状を分析し、「暴力革命で政権をとり、イデオロギー至上主義の共産党は今、法治、憲政、自由、民主主義との対立を解消できず、中国の発展を大いに阻害した」と、共産党こそ障害物だと述べた。
国内では、この障害物への不満から大規模な抗争事件が頻発し、90歳という高齢の中国共産党は没落の一途をたどっている。
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