【大紀元日本6月9日】今年9月に、5年に一度の中国の県・区レベルの人民代表選挙が幕を開ける。この選挙には、これまで党委員会や公式の団体が推薦する立候補以外の出馬はほとんどなかったが、「2011年はどうやら様子が違う」という。
北京大学の人大・議会研究センターの熊偉研究員はこのように今回の選挙を分析し、自らもミニブログを通じて、北京市海淀区画家村の代表選に出馬すると宣言。熊氏と同じようにミニブログを通じて立候補を宣言した人はすでに30人を超えている。彼らはいわゆる共産党組織の後ろ盾のない「独立候補」である。
「独立候補」は80年代から毎回わずかながらも存在した。しかし、今回は「出馬方式」と「候補者の身分」はいままでと違い、中国の今後を決める力があると熊氏は語る。
「出馬方式」について、今年の独立候補は、ミニブログを通じて出馬宣言し、自己プロフィールやマニフェストもミニブログで公表し、選挙活動をリアルタイムにアピールするのが特徴である。
また「候補者の身分」について、今年は知識人を主体とする特徴があるという。熊氏のほか、ノンフィクション作家の李承鵬氏や、時事評論家の姚博氏、上海の「新世代」作家・夏商氏、中国政法大学の呉丹紅・副教授などが名を連ねる。インターネットで高い知名度を誇るこれらの知識人候補者は、いままでの大学生や陳情者を主体とした独立候補より、「政治参加への認識や社会的人脈がより成熟している」と熊氏は分析する。
一方、今回の選挙では、これらの知識人以外にも、広東省深センの高校2年生の劉若曦君(選挙時は満18歳になる)、江蘇省常州の会社員・何鵬氏、浙江省杭州の不動産セールスマン徐彦氏、同じく杭州でベビーカステラを街頭販売する楼智杭氏など、幅広い「庶民」が出馬を表明している。「いまのところ、実業家の立候補が少ないが、これからきっと増えるだろう」と熊氏は予測する。
にわかに広がる独立立候補ブームについて、中国社会科学院の于建嶸・教授は「爆弾(社会抗争の象徴)の代わりに投票。これは中国社会にとって賢明な道だ」と歓迎する姿勢を示した。
環球時報「社会不安をもたらす」
しかし、独立候補の出馬ブームをおもしろく思わない所もある。政府系紙・環球時報は1日、「独立候補はミニブログから現実に回帰すべき」と題する社説を発表。「彼ら(独立候補者)が当選した後に現体制に協力しない状況が起きた場合、中国社会はそれに対して用意ができているか」と投げかけ、当局自身の警戒感を「社会が許容できない」という論点にすり替えた。
社説は、「独立候補の中でもっとも注目されているのは、西側の反対派に学ぶ人たち」と指摘し、「かれらは中国の『求同存異(小異を残して大同につく)』の包容的文化を対抗的文化に転換させようとしている」と批判した。また、「現体制はこれらの候補者と相容れないことは必然的である。いままで公に対抗的態度をとる独立候補が当選したことはない」とけん制しつつ、独立候補の当選により、インターネット上の対抗的態度が実在の政治生活に反映されていいのかについて、「中国社会はまだ答えを出していない」と釘を刺した。
社説はさらに、独立候補らは「わざと現体制との対立を前面に出し」、これを通して票を集めていると批判。また、彼らの行動は「すでに分裂の兆しが見える社会思潮」をさらに分断させ、中国社会の求心力を損なわせ、社会不安をもたらすと厳しく指弾した。
独立候補「長い間跪いていたので、立つ感覚を忘れた」
「環球時報に言いたい。祖国の見張り番をするのは大いに結構。しかし、周りをすべて『仮想敵』として見ないでほしい。(中略)誰かを弾圧しないと生きていけないのは、あなたたちのDNAが『対抗』で満たされているからか」。環球時報の社説に痛烈に反発したのは、出馬を宣言したノンフィクション作家の李承鵬氏。「ゴミ処理や駐車問題などについての提案も『対抗』と振り分けるならば、教えて上げる。そんなに多くの人は『対抗』なんて考えていない。いわゆる『反骨精神』をもつ人は、ただもう少しマシな生活をしたいだけだ」
李氏はさらに、中国人は「長い間跪いていたので、立つ感覚を忘れた」と語る。跪かなければならないのは「天井が低すぎる」からだ。「13億人は実はみなこの国の株主。自分はその13億分の1」とし、その株主の一員として「立つ感覚」を身をもって体験したいという決意を表した。
環球時報の社説への批判はネットユーザーの間でも飛び交った。「この社説はすでに彼ら(現政権)の明確な意思を表している。少しでもいまの政治権威にとって脅威となる行為は、すぐさま抹消されるということ」「あなたたち(現政権)は人民を代表しないばかりでなく、人民自身が人民を代表することも許さないのか」「立候補は対抗で、立候補しないのは協力か?いまでも選挙を信じて立候補する人のほうが協力的ではないだろうか」「この社説は脅迫状以外の何ものでもない」
ワシントン・デイリー「独立候補は北京への挑戦となるか」
ワシントン・デイリーは3日、独立候補らは北京政権にとって異例な挑戦者であり、彼らの出馬は共産党が日々強めている政治統制への挑戦状だと評した。
一方、これらの独立候補はいままで「遠くまで行けなかった」ばかりか、党の報復の対象とされている、と同記事は指摘した。
1987年から独立候補として選挙戦に出馬する姚立法氏は1998年にやっと念願叶って、湖北省潜江市の人民代表となったが、2003年には落選し(当時選挙の公正が疑われた)、以来当局による脅迫や軟禁の嫌がらせを受けている。「すべての反対運動が鎮圧されている2011年の出馬はさらに難しくなるだろう」とワシントン・デイリーは懸念を示した。
しかし、出馬宣言自体は中国の選挙規定に反していないため、「(出馬宣言は)絶望によるものにしても、決心によるものにしても、最高指導部の一部の人に衝撃を与えたに違いない」とし、中共政権がもっとも危惧しているのは、「これらの挑戦者により燎原の火が点されること」だと同記事は結んだ。
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