【大紀元日本5月5日】江蘇省無錫の人口密集区に建設されたゴミ焼却発電所の運転開始に対し4月11日、反対する現地の住民数万人が発電所前で抗議活動を行った。また、広東省番禺のゴミ焼却発電所の建設地についても論争が巻き起こっている。
全国668都市 3分の2がゴミに包囲
中国建設機械大手・中聯重科の万鈞・副総裁によると、中国全土668都市のうち、約3分の2は周囲をゴミに包囲されており、4分の1はゴミ埋め立て地を持たない。全国の都市部から排出されたゴミの堆積面積は5億平方メートルで、堆積されたゴミは70億トン、経済損失は毎年300億元を超えているという。
統計によると、2010年まで中国の97%の都市では、ゴミは処理されずにただ積み上げられるか、埋められていた。中国科学院研究員の沈剣山氏は、このような安易な堆積や埋め立ては後に問題に発展すると指摘している。山のようなゴミは巨大な「爆弾」として都市を脅かしているという。
都市の発展に伴い、ゴミ処理は頭の痛い難題となった(ネット写真)
ゴミ焼却の行方は?建設地をめぐる問題
北京市市政当局の陳永主任によると、現在北京の一日のゴミ排出量は1.84万トン。だが、今あるゴミ処理施設の一日の処理能力は1.04万トン。そのためゴミ処理施設は処理能力を67%上回る超過率で運転されている。多くのゴミ埋め立て地はあと4、5年でいっぱいになり、ゴミの排出先はなくなるという。
広州市では1999年以来、生活ゴミの総量は倍になり、現在、毎日1.8万トン近くのゴミが排出され、最終処理が必要なゴミは1.2万トンに達している。一日4500トンのゴミが排出される南京市では、今ある3カ所の埋め立て地がすでに飽和状態だという。
このようなゴミ埋め立ての負荷に耐えられなくなった多くの都市では、ゴミ焼却への転向に対し意欲的だ。しかしながら、焼却に伴い有毒ガスが排出されることや環境汚染問題への懸念から、各地で民衆から抗議の声が上がっている。
ゴミ焼却場論争の焦点は、焼却時に発生するダイオキシンだ。ダイオキシンの毒性はヒ素の900倍で、発がん率の高い物質であることが知られている。
一方で、埋め立てでも深刻な汚染問題をもたらしている。広東省にあるゴミ埋め立て地4000カ所のうち、1500カ所に有害な廃棄物が混ぜて捨てられており、地下水を汚染しているという。
環境保護部政策法規司の楊朝飛・前司長によると、現在、環境保護問題は全国の群衆事件の原因の9位であり、環境汚染が原因の群衆事件は年29.8%の割合で増えている。
王久良さんが目にした、北京を包囲するゴミの山
北京在住のフリーカメラマン王久良さんは08年から10年にかけて、北京周辺のゴミ捨て場400カ所以上を訪ね、北京を包囲するゴミの現状をカメラに収めた。
王さんはバイクでゴミ収集車を追跡し、最終的なゴミの行方を探り、確認したゴミ捨て場の正確な位置を地図にマークしていった。彼が表記した400カ所のゴミ捨て場は、大型ゴミ埋め立て地13カ所を除き、すべてはかなりの規模を持つ無届けの捨て場である。王さんがこのようにして作った地図により、北京がゴミに包囲されているという驚くべき事実が明らかになった。
重慶の観光地・歌楽山のゴミの山。このような光景を中国の観光地で目にするのは珍しくない(ネット写真)
解決の糸口は?
09年5月、中国科学院大連化学物理所の学者数人が『環境科学』誌で発表したゴミ焼却によるダイオキシンに関する研究論文には、41カ所のゴミ処理施設から採取した234の排気ガスサンプルの分析結果が記載されている。それによると、生活ゴミ用焼却炉のダイオキシン排出量が最高1.65ngTEQ/m3であることが明らかになった。これは中国の基準値である1ngTEQ/m3を超えており、中国が目指そうとするEUのダイオキシン排出限度0.1ngTEQ/m3を遥かに上回るものである。
ゴミの分類がほぼなされていない中国では、現有ゴミのうち、焼却や埋め立てが必要なゴミは1、2割に過ぎない、と中国環境科学院の研究員である趙章元氏は時代週報の取材で指摘した。ゴミの分類が徹底されていれば、焼却場はこれ以上建てる必要がないと趙氏は話す。「埋め立てにせよ焼却にせよ、ゴミ処理は分類が前提だ」。ゴミ問題の解決の糸口は、中国になかなか根付かない「ゴミ分類」だという。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。