【大紀元日本5月1日】中国内陸部の山西省と東北部の吉林省で、動物と家畜の成長に近年しばしば異常が見られると、昨年9月に中国国内メディアで報道された。ネズミが消えており、豚も繁殖しなくなり、健康に生まれてきた犬も間もなく死んでしまう。そして羊もよく肝臓や腎臓に腹水の症状が現れているという。
調査によると、これらの地区では遺伝子組み換え作物で家畜を飼っているという。
乳幼児の食品に
この報道によって、多くの中国人は初めて遺伝子組み換え作物の安全性について触れることができた。
動物に被害をもたらした可能性があると見られている遺伝子組み換え作物は、中国の乳幼児食品にも入っている、と国際環境保護団体のグリーンピースが4月20日、中国産ベビーフードやビーフンからの遺伝子組み換え成分検出結果を発表した。
グリーンピースの発表によると、同団体は中国の北京、武漢、広州、香港などで、ベビーフードや食堂の白ご飯、ビーフンなどに対し検査を実施した結果、103のサンプルのうち、10のサンプルから遺伝子組み換え成分が検出されたという。
グリーンピース(中国)食品及農業分野主任・方立鋒氏によると、中国の一部地域の乳幼児や小学生などの未成年者はすでに知らないうちに遺伝子組み換え米に汚染された食品を摂取してしまったという。同団体は中国当局に遺伝子組み換え米の商業化の停止や監督管理の強化を求めている。
遺伝子組み換え作物とは、遺伝子組み換え技術を用いた遺伝的性質の改変によって品種改良等が行われた作物のことである。人体への影響がはっきりせず、安全性にも多くの研究から疑問が持たされており、環境への影響なども観察されたため、議論されている領域。
昨年、まだ世界のどの国も承認されていない遺伝子組み替え米が中国で流通している、とグリーンピースが発表した。その際、同団体は、流通するこの種のコメは乳幼児の成長において健康への脅威となると主張して、中国農業省に報告書を提出したが、当局は調査結果の妥当性を認めていなかった。一年後、同団体の憂慮が的中した。
グリーンピースは2005年にも、中国でも最大級の稲作地帯である湖北省で遺伝子組み換え米が違法に大規模栽培され、同省内で販売されていると指摘していた。当時の指摘によると、武漢市の農業大学で研究していた組み換え米が種子商を通じて外部に流出した疑いがあるという。
しかし一方、今年のグリーンピースの調査で広東省の製品からも検出されたため、湖北省のほか広東省でも栽培している可能性を排除できないと方立鋒氏は話した。
疑問視される安全性
グリーンピースは「多くの研究結果が遺伝子組み換え食品の長期的な安全性に警告を発している」として、中国当局に違法な遺伝子組み換え米の流通ルートを徹底的に調査するとともに、その商業化を停止するよう呼びかけている。
遺伝子組み換えの作物や食品の安全性は保証できないことが、これまで数多くの研究によって示された。ウィーン大学獣医学博士ユルゲル・ゼンテック教授の研究によると、遺伝子組み換え作物を食べ続けたマウスは、遺伝子を組み換えていない作物を食べたマウスに比べ出生数が大幅に減少する。
遺伝子組み換えコーンが多く栽培されているアメリカでは、農民たちからの報告によると、飼っている多くの豚はこの種のコーンを食べた後、生殖能力を失ったという。2008年11月14日、米国化学学会の「農業と食品化学」雑誌に発表された研究論文で、遺伝子組みの50%を変えたコーンを食用したネズミは免疫システムに異常が見られたと指摘された。
インドネシア政府の調査によると、遺伝子組み換え綿の実を食べた牛に、早産や流産、不妊などの現象が見られた。また、一番早く大規模な栽培を始めた南アメリカでは、現地での畸形児の誕生率の上昇と遺伝子組み換え作物との関連性が疑われている。
2009年ドイツメディアが、米国モンサント社が研究開発した遺伝子組み換えコーンはコーンの虫や蝶々、またはほかの動物と環境に脅威をもたらしたと報道した。
世界食糧農業組織や衛生組織、経済協力組織などの権威機関や、各国の消費者協会の中で、遺伝子組み換え作物の安全性についてはっきりイエスと発表したものはこれまで一つもなかった。
中国・広西事件
問題視されている遺伝子組み換え作物は日本やEU域内では栽培が禁止されているが、現在栽培規模が世界で6位の中国では、遺伝子組み換え作物の栽培は1999年から急速に増加した。
遺伝子組み換え作物の安全性の問題は、中国でもしばしば起きている。上述の山西省と吉林省での動物の異常事件のほかに、中国のメディアで取り上げられた主要事件として、広西自治区で発見された事例がある。
2009年11月19日、広西自治区メディアが、同自治区19大学の男子学生217人の精子について検査分析した結果、57%に異常が見られたと報道した。未婚で平均年齢22歳の彼らの精子は病んでいるという。報道はその後、当局によって削除された。
この検査結果と遺伝子組み換えコーンとの関連性が、一部の専門家から指摘されている。広西自治区は2001年から米国のモンサント社と協力関係を結び、地元農民に知らせないまま大規模に遺伝子組み換えコーンの栽培を始めた。米国では遺伝子組み換えコーンは工業原料として使用されているが、コーンが米に続いて第2の主食である広西では普通に、人の食用に使用されている。
中国のある漢方医によると、自分の患者に薬服用による中毒症状が出た際、手作りのオーガニック豆乳を使えば即中毒症状が解消したが、スーパーで買った遺伝子組み換え大豆の粉で作った豆乳では中毒症状を解消出来なかった。同漢方医によると、遺伝子組み換え大豆からモヤシを育てられないことから、遺伝子組み換え大豆は本当の大豆ではなくなったと理解してよいという。
上述の山西省と吉林省における動物異常事件で、動物や家畜が食用していたフードは「先玉335コーン」というブランドの米国輸入コーン。中国農業部は、このブランドのコーンは遺伝子組み換え作物ではないと発表した。しかしこの事例を報道した中国メディアの調査によると、それの父本であるPH4CVに関する米国特許局ウェブサイト掲載の情報から判断して、それは遺伝子組み換え作物に間違いないという。
商業化が進む中国
遺伝子組み換え作物の安全性が国際的に疑問視される中、中国当局はその安全性を国民にアピールしながら、2008年の北京五輪と昨年の上海万博期間には、遺伝子組み換え作物・食品を厳しく規制していることを国際社会にアピールしていた。
2009年11月27日、中国農業部は2種類の遺伝子組み換え稲と、1種類の遺伝子組み換えコーンの安全証書を許可した。「これは2、3年後、遺伝子組み換え米が合法的に主食として中国人の食卓に並ぶことを意味している」と、当時の中国メディアが報道した。
翌年2月に北京で、100名規模の科学者を集めた農作物バイオ育種産業会議が開かれた。会議で、「世界では遺伝子組み換え作物の市場競争が日増しに激しくなっている。中国はこのチャンスを掴みとり、技術研究や産業化を急ぐべきだ」と強調され、前年に農業部が安全認証を与えたということで、遺伝子組み換え米の商業化に向けて本格化する議論が高まっていた。
更に、その年3月に北京で開かれた中国の最高政策決定の場である「両会」で、全国政協委員で「ハイブリッド(雑交)米の父」と呼ばれる袁隆平氏の「遺伝子組み換え食品」に対する発言にも注目が集まった。中国で「当代の『神農』」と呼ばれている同氏は、国連食糧農業機関(FAO)の首席顧問も務めている。「両会」で、「遺伝子組み換え食品の安全性は動物実験などで一概に論ずることは不可能」とし、遺伝子組み換え食品の安全性を証明するために「若者によるボランティアを募って臨床試験を行う」と発言したという。
一方、国際社会の非難の声への対応なのか、中国農業部は昨年3月、「農業部は遺伝子組み換え作物の輸入と国内での商業目的の栽培を許可しておらず、中国は遺伝子組み換え作物を栽培していない」と表明した。しかしこの表明は、中国大都市のスーパーで売られているサラダ油のほぼ100%が「遺伝子組み換え大豆」使用だということや、市場で流通している米に「遺伝子組み換え米」が多く発見された現実を覆い隠すことはできないだろう。
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