中国鉄道部トップ解任 汚職にメス入れる当局、民主革命を警戒か

2011/02/17
更新: 2011/02/17

【大紀元日本2月17日】中国鉄道部(省)のトップにあたる劉志軍部長が「重大な規律違反の疑い」で、12日に鉄道部党組書記を解任された。同氏の解任は鉄道利権をめぐる大規模な汚職事件によるものとの見方が広がる一方、劉氏の汚職問題はかねてから囁かれており、このタイミングでの摘発は、深刻な汚職や腐敗に対する国民の不満が導火線となり、中東諸国の民主革命のように燃え広がることを警戒する当局の思惑があったためとの見方もある。

「北京経済学週刊」前副編集長・高瑜氏は、劉氏の解任は来月3日に控える両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)まで待つのが通常だが、当局が事件の処理を急いだのは現在の国際情勢を睨んだためと分析した。劉氏を処分することで国民の注意をエジプトの民衆運動からそらし、また、腐敗に対して政府がメスを入れているという印象を植え付けることで、両会の無事開催に運びたいと高氏は指摘する。

劉氏は19歳で鉄道部に入った後、瀋陽鉄路局局長、中国鉄道部総調達長や副部長など、鉄道畑でキャリアを積んできた。2003年に鉄道部共産党書記兼部長(鉄道相)に就任。 高速鉄道の建設にあたり、巨額の建設予算を扱い、線路などの場所選定に大きな権限を持っていた。劉氏の弟の劉志祥・元武漢鉄路分局副局長は、2006年に収賄罪と傷害罪で執行猶予つきの死刑判決を受けている。

香港の政治月刊誌「前哨」の劉達文・総編集長は、劉志祥氏が逮捕された時から兄の劉志軍氏の関与が噂されながらも、その翌年の2007年10月に開かれた第17回全国代表大会で劉志軍氏がポストから降ろされなかったのは、その背後に江沢民勢力の存在がちらつくからだと分析している。

報道によれば、同年10月の全人代に先立つ同年3月に開かれた両会では、劉志軍氏の免職案が代表連名により提出されていたが、当局の説得工作でこういった動きが鎮められたという。しかし、同年6月には同じ鉄道部の何洪達・元政治部主任が収賄容疑で調査され、後に懲役14年の判決を受けている。

今回の劉志軍氏の解任は、両会前における江沢民派と胡錦濤派の権力闘争によるものとの見方もあるが、香港の苹果日報(Apple Daily)は、劉氏は2003年鉄道部トップに就任して以来、胡主席長男の胡海峰氏をバックとする清華大学系の威視公司に、全国鉄道システムの安全検査機器の生産を委託するなど、胡派とも良好な関係を築いてきた。同氏の解任は両派の権力闘争によるものではないと苹果日報は分析する。

2006年から身辺で次々と汚職問題が発覚していながら、劉氏は依然としてトップの座に居座ってきた。今回の突然の解任は当局が政権安定を図るための姑息な策略に過ぎない、と高瑜氏は指摘する。

深刻な鉄道関係の腐敗問題

一方、国内メディア・中国経済網が鉄道部筋の話を引用し、鉄道関係の幹部らは同事件に動揺し、自身にも捜査のメスが入るのではないかと戦々恐々だと報じた。また、14日の深セン新聞網は「鉄道部には複雑な縁故関係があり、汚職が発生しやすく、隠ぺいもしやすい」と述べ、「劉志軍事件は連鎖反応を起こすだろう」と捜査が拡大する可能性を示唆した。

国内メディアの経済観察網は、劉氏解任の直接的な理由は、高速鉄道の利権に絡む収賄容疑だと報じており、先月不正受注の疑いで取り調べを受けた山西省の高速鉄道設備サプライヤー、博宥集団の丁書苗・董事長と中鉄鉄龍コンテナの羅金保・元董事長との関係が指摘されている。同事件で少なくとも100億元(約1200億円)近い裏金が動いた疑いがあるとして、調べが進められているという。

また、海外の中国語ニュースサイト「博訊ネット」によると、劉氏在任中、鉄道部の不正収入は600億元(約7500億円)に上り、そのうち120億元(約1500億円)は劉氏一族と関係がある。また、同報道は中央紀律検査委員会(中紀委)の幹部の話として、海外から高速鉄道設備の輸入業務にかかわる28人の鉄道部幹部のうち、スイス銀行で口座を持つ12人を含め、19人が海外で口座を持っているという。また、28人全員に海外在住の親族がおり、うち16人は直系親族が海外にいることも判明した。

(翻訳編集・張凛音)