中国国内の禁書、香港空港で販売好調

2010/12/16
更新: 2010/12/16

【大紀元日本12月16日】香港空港の書店では、中国国内で出版・発売が禁止されている書籍が飛ぶように売れている。最も人気の高い著書は、毛沢東時代の歴史や、文化大革命の回想録、現中国共産党の政治体制に関する評論などである。

出版関係者によると、これらの本の情報源はほとんど体制内部の高官である。「読者の多くも同じく体制内部の人たちで、内部情報への関心度は極めて高い」「人々がいったん真実を知ってしまったら、中国共産党政権は、存続の合法性が問われ、巨大な危機に直面することになる」と出版関係者は語った。

空港書店の店員によれば、購入者は皆中国国内の観光客である。「多くの人は帰国する前にわざわざ書店を訪れて、禁書を買っています」「入国審査でばれないように、本を汚れた服の中に隠すようアドバイスしています。入国審査官もさすがに汚れた服に手を突っ込みたくありませんからね」という。

また、買ったばかりの禁書の表紙を破ってゴミ箱に捨てる人もいた。それもまた、入国審査に引っかからないための策だ。

香港でのこれらの禁書販売には、新世紀出版社の創始者、鮑朴(44歳)氏の存在がある。同氏は故・趙紫陽元総書記の秘書・鮑彤氏の息子。香港空港の書店で大人気の禁書の一部は、同出版社が提供したものである。鮑朴氏は、自分の出版社はウィキリークスに匹敵すると自負している。

ドイツ紙「フランクフルター・ルントシャウ」の取材で、鮑朴氏は次のように語っている。「政権トップに君臨する政治家の回想録が売れ筋。歴史上重要な事件に加担したが、公には自己の体験は語れない。もし、人々が真実を知ってしまったら、中国共産党政権は、存続の合法性が問われ、巨大な危機に直面するであろう」

新世紀出版社が発行した、故・趙紫陽元総書記の回想録は人気書籍となった。2009年5月、武力弾圧された学生民主運動「六・四天安門事件」20周年の節目に、鮑朴氏は元総書記の回想録を出版した。

鮑朴氏の父親の鮑彤氏は、政治改革を主張する故・趙紫陽元総書記の大親友だったという。元総書記に同調して、1989年の政治改革を求める学生民主運動に同情的な見方を示したため、7年の懲役刑に服した。「現在でも、父は監視下に置かれている」と鮑朴氏は話した。

鮑朴氏曰く、政権から退いた多くの高官は最高指導部の緘口令を振り切って、真相を語ろうとしている。「中共政権は決して一枚岩ではない。中のすべての人は沈黙を選んでいるわけではない。私が入手した資料は出版できる量の20倍以上である」「中共はすべての歴史事件に関して、自己バージョンの記録を作っており、その証人が虚偽記録に反論する前に死んでしまうことを望んでいる(中略)。我々は中共の思い通りにはさせない」と同氏は語った。

趙紫陽元総書記は軟禁されてから、過去の歴史事件に関する回想を録音テープに内密に収録した。「六・四天安門事件」について、元総書記が出した観点は、当時、軍のトップであった_deng_小平軍事委員会主席と李鵬首相がこの武力弾圧の首謀者というものだった。

趙紫陽元総書記は回想録で、「_deng_小平は党の元老の間で、常に一つの観点を強調していた。すなわち、独裁政治体制の実用化である。社会の安定の維持を論ずるとき、彼は自ら独裁手段に言及していた」と記した。また、当時の趙氏は経済と政治の改革を主張し続けていた。回想録では、「欧米国家の議会という民主制度はもっとも生命力があると立証済みだ。それは現在の選択肢としては、最善のものである」と記している。

元総書記は2005年に死去したが、彼の腹心が極秘にテープを国外に持ち出した。後に鮑朴氏はテープを整理して、元総書記の自伝として『改革歴程』(改革の歴史)※というタイトルで出版。中国共産党政権の舞台裏に関する一冊であり、その読者の主体は中国のエリート階級だ。

現時点で、販売部数は18万部に達した。大多数は香港の空港書店で売られている。販売実績からも、購入者の多くは中国国内からの観光客だとみられる。一方、インターネットからのダウンロードや、海賊版マーケットでも数十万部売れているという。鮑朴氏は、「読者の多くは政権内部の人だと思う。このグループが最も内部情報に関心を持っているからだ」と指摘する。

香港空港内の書店でこれらの禁書の販売が好調なことについて、鮑朴氏は「中国共産党政権による厳しい思想のコントロールも、中国人の歴史的な事件に対する真相への探究心と自らが思考することへの熱望を封じ込めることはない」と見解を示した。

※英語版は『Prisoner of the State』(国家の囚人)、日本語版は『趙紫陽 極秘回想録 天安門事件「大弾圧」の舞台裏!』

(翻訳編集・叶子)
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