【大紀元日本10月10日】香港が中国共産党政権に返還されてから13年。香港での生活状況は、年々悪化しており、大きな社会問題になっていることがこのほど明らかになった。香港の社会服務聯会(社聯)が、香港政府提供の世帯所得統計を分析した結果、香港の貧困人口は今年上半期で47万800世帯の126万人に達し、香港全人口の18.1%(貧困率)を占め、過去最高水準となったことが判明した。
また、昨年末の時点での貧困人口は43万7900世帯の119万6000人だったという。社聯が貧困層分析を始めた2001年の41万5400世帯から、10年間で13%急増した。
貧困層を年齢別にみると、65歳以上の高齢者の貧困率は最も高く、33.9%に達している。高齢者の3人に1人が貧しい生活を送っている。15歳~24歳までの青年層の貧困率は20.1%に達した。10年前の01年は15.9%だった。さらに45歳~64歳までの中年層の貧困人口も01年の22.7万人から34.1万人に急増した。
また、香港の全世帯を高所得グループと低所得グループに分けると、今年上半期の高所得グループの月間所得中央値は、01年の3万2000香港ドルから約3%増の3万2950香港ドルとなった。しかし、低所得グループの月間所得中央値は01年の1万香港ドルから10%減の9000香港ドルとなり、高所得グループと低所得グループの差は約3.7倍となった。「富裕層がますます豊かになり、貧困層がますます貧しくなる」との現象が深刻化している。
社聯が定義する「貧困層」とは、所得が同人数世帯の月間所得中央値の半分以下である世帯を指す。2006年の例でみると、同年の香港の個人月間所得の中央値は1万香港ドルで、世帯所得中央値は1万7250香港ドルだった。もし、個人または世帯所得がそれぞれ5000香港ドル、8625香港ドルを下回れば、貧困層と認定される。一方、香港政府は「貧困層」に関して公的な定義はしていない。
香港は、中国返還直後に発生したアジア金融危機で株式市場や不動産市場が急落し、また2003年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)や2008年の鳥インフルエンザで、経済的にかなりの打撃を受け、景気が大きく後退した。
2003年6月、香港特別行政政府は中国との間で「経済貿易緊密化協定」(CEPA)を締結した。そのため、一部輸入・輸出品の関税が撤廃され、両地域間の貿易が拡大し、中国大陸からの観光客が急増しただけでなく、中国の国営大企業や金融機関が次から次へと香港株式市場に上場。本土の企業が相次ぎ不動産市場や株式市場に集中的に投資するようになった。その結果、香港経済の景気が回復し、世界金融危機が発生する07年の5月に、香港株式市場の恒生指数平均は97年5月と比べて約40%上昇した。また香港政府の統計によると、1人当たりの国内総生産(GDP)は、1997年の21万350香港ドルから、2008年の24万327香港ドルへと拡大した。
しかし、景気状況の改善に伴い、所得の格差が広がっている。国連人間居住計画(国連ハビタット)が発表する「世界都市状況年次報告書」によると、香港のジニ係数(世帯間の所得格差を示す指標で、0に近づくほど格差が小さいとされる)は1991年の0.476から2001年の0.525に上昇し、2006年に過去最高水準の0.533に達した。2009年には0.53に止まったが、アジア各都市の中ではワースト1となった。一般的に、ジニ係数について貧富格差の警戒線は「0.4」とされている。この警戒線を上回る場合、社会的な不安や階層間の衝突が発生しやすくなると考えられる。
社聯の方敏生・会長によると、香港人口の高齢化および経済成長モデルの転換で、低学歴・低技術労働者への雇用需要が低迷したため、今後高齢者や中年層の貧困人口がさらに増え、2019年の貧困率は19.3%、10年後の2029年には20.8%に上昇すると予測している。
方会長は、香港政府が長期的な貧困対策に欠けていると指摘し、同政府に対して全面的に定年退職保障制度導入の検討や「総合社会保障援助」(日本の生活保護制度に当たる)の申請条件の緩和を呼び掛けている。
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