【大紀元日本10月5日】尖閣諸島問題をめぐり、日中両政府の対立が深刻化する中で、9月27日、一部の中国メディアが相次いで、日本の為替介入で人民元切り上げ圧力がさらに強化されたことへの懸念を示す記事を報じた。
国営新華社通信傘下の「環球時報」は9月27日、中国現代国際関係研究院日本研究所の劉軍紅・研究員が投稿した「人民元を上昇させる日本の為替介入を警戒せよ」との評論記事を報じた。劉氏は同評論の中で、日本の単独為替介入で国際人民元への国際投資資金(ホットマネー)の流れが加速し、対ドルの人民元為替基準レートが連日上昇し、過去最高値を更新していたと非難した。
また、劉氏は9月28日付けの「財経」誌の取材に対して、「日本の為替介入で東アジア通貨が下落した中、人民元だけは上昇圧力が高まり、中国経済のリスクが拡大する恐れがある」と述べた。
9月27日付け「経済参考報」によると、中国の大部分の織物輸出企業は、これ以上の人民元切り上げの圧力には耐えられない状況にあり、対ドルの人民元為替基準値をさらに2%切り上げると、ほとんどの企業が破たんする恐れがあるという。
さらに、9月30日付けの国営メディア「新華網」によると、中国商務部が国内輸出企業2000社を対象に行った調査では、輸出為替コストが1ドル=6.71元だった2009年の企業平均収益率は1.77%にとどまり、近年最も低い水準となったことが判明した。中国織物輸入・輸出商会の試算によれば、他の生産要素コストや価格が変わらない場合、もし人民元が1%切り上げられると、企業の収益が約1%減少すると言う。「新華網」は、人民元がさらに大幅に上昇すれば、織物産業や軽工業など付加価値の高くない伝統労働密集型産業がまず大きな打撃を受けると指摘。
一方、中国経済界が日本の為替介入を警戒する主な理由は、円安により、元高を狙う中国へのホットマネー流入が加速化し、不動産市場および株式市場において新たな資産バブルをもたらす可能性があるからだという見方もある。現在中国政府はすでにバブル化した不動産市場を沈静化するために、4月から不動産価格抑制政策を実施し、現在固定資産税の導入を検討しているが、巨額なホットマネーの流入によって、不動産バブルは収まるどころか、逆に拡大する恐れがあるという。
中国人民銀行によると、ホットマネー流入量を示す外国為替資金残高の増加分は4月に2800億元と年内最高水準を更新して以来、3カ月連続減少したが、8月に再び増加し、2430億元と年内2位の高水準となった。
その影響で、中国不動産市場において価格が上昇し始めている。国内不動産調査企業の佑威不動産研究センターによると、4月に不動産価格抑制政策が実施されて以来、上海市の住宅取引済総面積は3カ月間連続下落したにもかかわらず、8月前月比約70%増の73万平方メートルとなり、抑制策実施前の水準に接近した。また上海市の一部の地区の住宅価格は抑制策実施前の価格と比べ20%も上昇したという。
現在、人民元への圧力は日本からだけではなく、米国からも高まっている。米国下院は9月29日、人民元安を制裁する相殺関税法案を賛成348票、反対79票で可決した。同法案は11月の米国中間選挙後に上院で審議される見通し。
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