【大紀元日本8月6日】中国中央銀行の副総裁で中国国家為替管理局長の易綱氏は、このほど、中国はすでに日本を追い抜き、世界第二の経済体になったと発言し、国内外で大きな反響を呼んだ。海外メディアがこぞってこの発言を報道し、中国の経済成長を称賛したが、国内メディアは意外にも冷静で、海外の報道を「陰謀論」と批判し、「まだまだ発展途上国」だと低姿勢を貫いている。
中国政府幹部が2010年に中国のGDPが日本のGDPを抜くと言及したのは今回が初めて。そのため、海外のメディアは「中国政府の正式見解」と読んでいる。
2009年のGDPは日本が442兆円、中国が425兆円と僅差。今年の中国は9%の成長を遂げるのに対し、日本は2.6%にとどまると予想されているため、今年の日本の第2四半期のGDPがまだ発表されていないものの、中国は日本を抜くとの見方が大半を占めている。
ロイター通信は7月30日付の記事で、「中国はすでに日本に代わって、世界第二の経済体になった」と述べ、「この30年の迅速な発展で大きな成果をあげた」と最大の賛辞を送った。米CNNも易綱氏の発言を紹介した。さらに「2025年に中国はアメリカを抜き、世界第一の座を手にするだろう」と報道するメディアもある。
しかし、この手放しで喜んでいいはずのニュースを、中国政府は意外にも冷静に受け止めている。北京大衆紙の「新京報」は「1人あたりGDPがわずか3800ドルの経済大国」との記事を掲載し、GDPが第2位になっても、1人あたりのGDPが4000ドル足らずで、世界で92位くらいで、日本や米国との間にまだ大きな差があると述べた。
ロンドン大学の孫来祥経済学教授は「日本を抜いたという話は、中国にとって良いこととは限らない」との見方を示した。「1人あたりのGDPが低くても、中国はまだ発展途上国という説は今後、通りにくくなるでしょう。これから、発展国と技術譲渡、発展援助、気候の変化などについて話し合うとき、今まで通りに発展途上国の待遇を受けられなくなる。つまり、今後は中国が他国を援助する番になった」と分析する。
孫教授の分析は、中国政府の思惑に合っているようだ。「人民日報」は最近、四本の評論記事を発表し、経済大国の責任論を警戒するよう呼びかけ、中国の経済発展と地位の向上を煽る海外のメディアの目的は、「中国に経済大国の責任を負わせるため」だと警戒を強めた。
そもそも、中国のGDPについて、数字の信憑性を疑問視する声が後を絶たない。「好大喜功」(やたらに手柄を立てたがって功を焦る)の中国にとって、GDPを世界2位にまで作り上げたことが裏目に出たのではなかろうか。