【大紀元日本6月26日】中国共産党(中共)は、元々工場労働者の運動、学生運動及び農民暴動を起こしてでき上がったものである。しかし、中共が権力を奪い取った後に、すぐ態度を変えて労働者の運動に対して弾圧するようになった。02年~03年、中共は河南省鄭州、開封、東北の大慶油田、遼陽の鉄合金の工場などでの大規模なストライキを弾圧した。また、04年、深圳の金宝通企業有限会社(梅林美芝海燕電子の工場)の労働者たちによる賃上げ要求のデモや、2010年5月河南省平頂山市の平綿紡織グループでの1万人近い労働者のストライキを弾圧した。
外国企業のスト許容
しかし、今年5月に入ってから、中国大陸各地でひっきりなしに起きている労働争議には突然ある変化が現れた。つまり、外資系企業のストライキに対して「特殊な待遇」が行われたのである。深圳の「富士康」の「連続飛び降り自殺」及び広州佛山の本田部品工場のストライキで、労働者が大幅な昇給を実現した。富士康は1週間のうちに、生産ライン従業員の賃金を900元から2千元(約2.7万円)に引き上げ、賃上げ率は122%に達した。本田の佛山工場はストライキの後、給料は34%上がった。
富士康と本田の効果に誘発され、他の一連の外資系企業もストライキ、賃上げの状況が現れた。例えば、深圳の台湾美津実業の労働者はストライキをして、月給は900元から1050元まで上がった。国有企業を含む一部の企業は従業員不足の圧力で先手を打って昇給した例もある。例えば、厦門の台湾系企業では200元賃上げしたところもかなり多い。中国生命保険の厦門支社もこれまでの方針を変え、新しく採用する従業員に対して基本給制を実行し始めた。このような外資系企業のストライキ・昇給の波は、ストライキを弾圧したかつての中共のイメージを変えているようである。それでは、なぜ中共は外資系企業のストライキを「放任」したのか。
中共の意図
その1 中共が外資系企業のストライキを「放任」した最大のメリットは、中共の極めて悪い人権イメージを拭い去るのに有利な点である。この意図はオリンピックや世界博覧会を開催するのと同様である。中共が主に考えているのは政治の帳簿であり、経済の帳簿ではない。国内企業の仕事環境は外資系企業よりずっと悪く、国有企業の下部従業員の給料レベルは一般的に低く、同時に国内には大量の少年工、奴隷工及び長期にわたり国際社会の厳しい非難を受けている強制労働(労働改造、労働教育)が存在している。中共はこのことは充分なほど承知している。そこで、富士康の連続飛び降り自殺及び外資系企業のストライキを大々的に宣伝してこれを隠し、同時に注意力を外資系企業に向けようとしているのである。
ある人は、中共当局がこのようにしたのは、外資系企業に労働者の賃上げをさせることによって内需を拡大する必要があるからだという。もちろん、インフレで物価の上昇が明らかな時、多くの人はこのように考えるだろう。もし中共が本気で内需を拡大するつもりならば、社会の平均的給料の増加がGDPの増加に追いつかないことを長期間無視することはしないだろう。別な側面から見て、外資系企業が中国に入ったのは中国の安価な労働力を目指しているからで、その給料の水準は普通、現地の最低賃金の基準に合わせている。もし現地政府が本当に内需を拡大したいのであれば、なぜこの「給料のデッドライン」を少し高く持ち上げようとしないのだろうか。中共はこのようにしたくはない。なぜなら、GDP増長の政治的意義は内需の拡大よりずっと大きいからである。GDP増長は不法な執政を覆い隠すことができるのに対し、内需の拡大は金を庶民の財布に入れるのみで、それは中共官吏の所得を減らすだけでなく、中共の「国力」を強めることに役に立たないからである。
その2 外資系企業のストライキは矛先を外資に向けており、べつに中共政権に危害が及ばないからである。だからこそ、ストライキがただ工場地区に限られている時、中共は何もしない。一方、ストライキが工場地区を越えて社会に蔓延し、中共に発展して矛先が中共政権にまで及びそうな時、少しも容赦せず弾圧に出るのである。一例として、江蘇の崑山台湾系企業KOKの数千人の労働者が工場地区で3日連続でストライキをした際、中共は動かなかった。しかし、労働者たちが社会に出てデモをし、抗議の効果を強めようとした時、中共は直ちに大量の警官を出動させ労働者を殴り、労働者を工場へ追い返した。
労働者が独自に労働組合を設立しようとすると、中共が例外なく拒絶する理由がそれである(一般の労働組合はすべて中共がコントロールしている)。つまり、ポーランド労組「連帯」のような組織に変わるのを恐れているからである。中共の憲法が労働者のストライキ権を剥奪したのは、中共の腐敗と極端な貧富の格差が著しくなった時、ストライキが中共に対する不満を発散する形になり、それによって中共が倒されかねないからである。
その3 中共は外資系企業のストライキを人民元相場の操作と国際貿易の黒字問題に対する言い訳にしようとしている。欧米などとの貿易黒字は、外資系企業の給料が低すぎて、輸出製品の価格が低いからもたらされた、人民元相場とは関係がなく、中共政権と関係がないと言い逃れることができる。しかし実際には、中国の安い労働力の価格は中共政策の人為的な結果である。
その4 中共がそのようにしたのは、ほかにもいくつか可能性がある。一つは外資を追い出し、中共の官吏がその後を引き継ぐ魂胆かもしれない。富士康を例にとると、122%という異常な賃上げ幅は企業の利潤を丸飲みにしたのに等しい。ある意味では、それは富士康が資本を撤回する前兆であり、もちろん中共に対する不満の間接的な対応でもある。富士康がそうしたのは、他の外資に圧力をかけ、撤退を迫る狙いもある。二つめは幼稚園や学校での児童殺傷事件などから民衆の視線をそらす狙いである。もう一つは小範囲のストラキと昇給で、政権を守るための譲歩政策の効果をテストすることである。
中共の「危機」減らず
何はともあれ、外資系企業のストライキに対する中共の「放任」政策は、その政治的目的を達成していない。誘発された外資系企業撤退の波と国内企業の連鎖反応は別にして、国際社会の反応から見て、中共の面倒はかえってより大きくなった。米国最大の労働組合が、再度米国貿易の法規301条を引用して、米国政府に中国における労働者の状況、及びそれが米中貿易にもたらすかも知れない不利な影響に対して調査を展開するよう要求しようとしている。これはただ中共の外資系企業のストライキをもてあそんだ短期の副作用である。より長期的に見れば、中共の内在する危機は一つも減らず、ただ新しい導火線が一本増えただけである。