「米国が北朝鮮を侵略」中国歴史教科書の記述、韓国メディアが訂正要求

2010/06/25
更新: 2010/06/25

【大紀元日本6月25日】朝鮮戦争の開戦日である6月25日を前に、韓国の複数のメディアは、中国の中学校の歴史教科書で、同戦争に関する記述が事実を歪曲していると報じた。主要紙「中央日報」の報道は、中国政府に間違っている記述の訂正を呼びかけた。

中国政府機関が制作・発行する中学2年の歴史教科書では、朝鮮戦争に関して5ページに及ぶ説明の中、冒頭で「1950年6月に朝鮮内戦が勃発した」と書かれている。そして、「米国が自らの考えで派兵し、北朝鮮を侵略した。米国を中心とする国連部隊は38度線(南北国境線)を超え、鴨緑江(中朝両国の国境線)沿いまで戦火を蔓延させた」と記述。中国軍の参戦の目的は、「自国を守るため」とし、「米国に対抗して朝鮮(北朝鮮)を支援した」という意味で「抗米援朝」戦争だと表現している。

また、無数の命を奪いながらも3年間勝敗がつかず、「休戦協議」で幕を閉じたこの戦争について、同歴史教科書は「朝鮮と中国の勝利で収まった」と記述している。

韓国紙「朝鮮日報」は22日、専門家の分析を引用して次のように報道した。中国政府がこの戦争の発端を「朝鮮の内戦」と称する目的は、戦争を起こした責任を米国に転嫁し、北朝鮮と中国を被害者に仕立てるため。つまり、米国による北朝鮮への侵略を阻止し自国の国土安全を守るため、中国はこの戦争に参加するしかなかった、と中国政府が印象付けたいのだという。

22日の中国外交部の定例記者会見で、朝鮮戦争に関する中国政府の明確な見解を記者から求められた際、中国の秦剛・報道官は、「やっと得られた朝鮮半島の平和と安定を大事にすべき」と質問をかわし、いまのこの重要な時期に、中国や同地域の国々は、朝鮮半島および北東アジアの平和と安全に尽力すべき、と強調した。

中国側のこの対応について、韓国「聨合通信」は、「秦剛・報道官は中国側の見解表明を避けたが、中国の歴史教科書での『米国による北朝鮮への侵略戦争』との記述が中国政府の見解を明確に示している」と報じた。

「中国政府が発行した歴史教科書が米国侵略説を既定事実として教えているため、韓国戦争(朝鮮戦争)に対する一般中国人の認識にも問題点が数多く見つかっている」と、「中央日報」は問題が深刻であると憂慮。21日付けの報道で中国政府に対し、「ただちに、間違っている記述を訂正すべき」と呼びかけた。

朝鮮戦争

中国や北朝鮮を除き、一般の見解では、1950年6月25日早朝、北朝鮮軍は南北軍事境界線を越えて韓国に全面的に侵攻し、朝鮮戦争が勃発した。米国はそれを受け、国連安保理の緊急会議を召集した。同戦争は北朝鮮の武力攻撃による「侵略行為」と定め、米軍を中心とする国連部隊の派遣を決定する決議が可決された。戦争開始2日後に、国連部隊が戦争に介入した。

開戦3ヵ月後の10月、国連部隊が優勢に立った。当時の毛沢東・中国国家主席は、北朝鮮の応援要請を受け、旧ソ連が援助を許諾した状況下、10月19日に中国軍を派遣して同戦争に加わった。それ以後、戦況は南北の国境地帯で一進一退を繰り返した。1953年7月27日、双方が「休戦協議」を締結した。

一方、中国のメディアでは、今までの「米国侵略論」と一致しない観点が反映された異例の動きが見られる。中国紙「環球時報」の英語版「グローバル・タイムズ」は16日と17日の2回にわたって、朝鮮戦争勃発の原因と一部始終を分析するインタビュー記事を掲載した。同戦争はスターリン(旧ソ連の当時の最高指導者)の謀略のもとで、金日成(北朝鮮の当時の最高指導者)が起こし、毛沢東(中国の当時の最高指導者)を巻き込んだという見解を示した。

同戦争に関する中国国民の認識について、北京大学歴史学部の許平・教授はかつてメディアの取材で次のように語った。「今、メディア報道やインターネット、大学の教育などを通して、ますます多くの国民が朝鮮戦争について、歴史教科書の『米国帝国主義がわが国の国境地帯まで戦火を蔓延させ、新しい中国に脅威をもたらした』との記述は事実ではないとわかるようになった。実は、北朝鮮が挑発して戦争を引き起こしたことは、ますます多くの人に知られている」「現在、一部の中国人は分かった。私たちは北朝鮮のために戦争したのだ。もっと言えば、北朝鮮をバックアップした旧ソ連のスターリンのために戦争したのだ。それにより、中国軍が参戦したことの合法性が疑われている」

(翻訳編集・叶子)
関連特集: