【大紀元日本5月13日】米国務省が最近、ネット閉鎖を突破するソフトウェア開発の団体GIFC(グローバル・インターネット・フリードム・コンソーシアム)に、150万ドルの資金を供与する決定を下した。2年ぶりの米中人権対話が今月13日、14日に行われる矢先に、中国共産党政権が迫害する「法輪功」の学習者が運営する機関に資金を提供することは、米中関係の新たな火種となる可能性がある。12日付けの「ワシントンポスト」が報道した。
GIFCの副専務理事・周世雨氏(米ラトガース大学教授)が資金を供与されることを発表し、米国務省のある高官が匿名の形で「ワシントンポスト」に対して同決定を確認した。
2008年、国務省がネット検閲撲滅に専心する機関に1500万ドルを割り当てる考案が出されて以来、インターネットの自由を支援する一部の米政府関係者、国会議員、人権団体やインターネットの専門家が3年間、国務省にはたらきかけた努力が実を結んだ。
ネット検閲を無効にするソフトを開発した法輪功学習者
GIFCは、1999年7月20日に始まった中国共産党政権による法輪功学習者への迫害に応えて、2001年に、在米の中国出身の科学者により創設された。学習者のネットへのアクセスを可能にし、中国当局に閉鎖された迫害の情報を外部に伝える目的で、GIFCはネット閉鎖を突破するソフトウェアを開発したが、検閲のない情報を求める中国の一般国民や、ネット検閲が厳しい他国のユーザーも、GIFCが開発したソフト 「自由の門」(Freegate)と「無境界サーフ」(Ultrasurf)を利用するようになった。
「自由の門」のサイズは小さく、ユーザーは国外のIPアドレスを利用して当局が禁止するサイトにアクセスする。IPアドレスが毎秒変化するため、当局のフィルタリングは間に合わず、閉鎖不可能となる。使用完了後に履歴を消す機能もある。そのほか、「無境界サーフ」、「ガーデンネット」「世界通」、「火の鳳凰」(Fire Pheonix)などの類似ソフトもGIFCの開発による。インストールは不要で、ダブルクリックするだけで使用できる。
また、昨年7月、中国当局は、販売されるPCにすべてフィルターリングソフト「グリーンダム(Green Dam)」を搭載義務化したことに対応、GIFCは、「グリーン・ダム」を無効にさせるソフト「グリーン・ツナミ(津波)」を開発した。
独裁国家での民主活動を促進させた
昨年、イラン大統領選の開票不正疑惑を巡り、政治に「民意反映」を求める抗議やデモが全国で拡大する中、多くのイラン人が、GIFC開発の「自由の門」を利用してネットの閉鎖を突破。改革派の民衆に対する武力弾圧の映像が世界中に送信された。
当時、イランからの大量のトラフィックに耐えられず、中国大陸からのアクセスを保証するため、中国大陸以外の国からのアクセスは停止を余儀なくされた。6月のイラン大統領選の前、再びイラン国民に対してサービスを再開したという。
その以前にも、07年9月にビルマ(ミャンマー)で起きた僧侶たちの抗議デモや08年3月にチベットで発生した暴動の際も、そのソフトが重要な役割を果たした。
独裁政権国家の民衆が自由の情報が得られれば、考え方や思想も変える。北京大学メディア研究院の元助教授・焦国標氏が2006年来日中、中国大陸の知識人はほとんどGIFCが開発したソフトにより海外の情報を入手していると話した。
ある匿名希望の中国人記者によると、「私にとっては、自由の門ソフトは世界への橋渡しだ。それを使う前は、私は100%の共産党支持者だった」。
「自由の門」などのソフトが開発された2002年から、毎日中国大陸からのアクセス人数は数百万もいるという。偶然なのか、その年から、大陸各地で「人権保護運動」が芽生え、海外のサイトにアクセスして共産党関連組織からの離脱声明を発表する人数も激増した。
米政府に働きかけた支援者
GIFCのネット閉鎖突破技術を通して、独裁国家での民主活動促進に役立てようと、米ハドソン・インスティチュートの特別研究員マイケル・ホロヴィッツ(Mihael Horowitz)氏の目に留まった。レーガン元大統領の執行部におり、何年にもわたり宗教の自由を擁護してきた彼は、2008年、国務省の資金のうち1500万ドルをネット検閲撲滅に専心する機関に割り当てる考案を支援する。
ホロヴィッツ氏はGIFCへの資金提供を当然としていたが、1500万ドルのうちかなりの部分は、ワシントンを拠点とする非政府機関で国際メディアとともに活動するInternewsの率いるコンソーシアムに割り当てられた。
このため、ホロヴィッツ氏は、記者や編集記者にGIFCへの資金提供に関して働きかけ、その結果、ここ1年で、「ニューヨーク・タイムズ」「ウォール・ストリート・ジャーナル」のコラムリストや「ワシントンポスト」の社説が、米国務省にGIFCへ支援するよう要求した。
米紙ニューヨークタイムズは昨年6月に、「イランのサイバー閉鎖を打ち破る」と題する記事を掲載、法輪功学習者が開発したネット閉鎖を突破する技術は「21世紀のベルリン壁を壊す」力であるとし、オバマ大統領に同技術の普及支援を求めた。
「イラン当局は特定のウェブをブロックしたり、外国記者を退去させたりしている。目撃者を除外する動きは、テヘランの『天安門虐殺事件』の前兆かもしれない。幸いに、ある秘密のインターネットの救命線が存在している。それは米国在住の中国人IT専門家らが、中国共産党当局が精神団体法輪功に対するネット検閲を打破するために開発したソフトである。現在、イラン当局の情報閉鎖を突破しようとするイラン人にとって、法輪功学習者は彼らに最大の希望をもたらしている」と同記事は記している。
今年3月、グーグルが自社サイトの検閲停止方針で中国市場撤退を決定した。それを巡り米国会で、中国のインターネットの自由と米中関係を話題にする討論会が開かれ、GIFCへの資金提供は再び強調されていた。
その際、サム・ブラウンバック議員(共和党-カンサス代表)が、資金が割り当てられるまで国家の職位任命は保留すると脅迫するほどだった。議会はこの結果、2009年には500万ドル、2010年には3000万ドルを割り当てることになった。
匿名を希望する国務省の高官によると、GIFCへの資金援助の決定は、「技術的な長所に対して」下されたという。ハーバード大学のバークマン・センター(インターネット・社会の研究)上級研究員エサン・ズッカーマン(Ethan Zuckerman)氏は、国務省の融資に多少の懸念を示しながらも、「(GIFCは)よいツールを構築した」とコメントしている。
米国務省の決定について、GIFCの周世雨氏は、「400万ドルを要請したが、かなり減らされてしまった。150万ドルでは、できることは制限されてしまう」と話した。1日に150万人に対応できる現在のシステムの拡張を妨げる主な要因はサーバーがないことと周氏は指摘する。
北京出身の周氏は、父親が中国軍部の将軍、一家全員が法輪功の学習者。1999年7月、共産党当局が法輪功を弾圧し始めたが、70歳を過ぎた父親は法輪功の放棄を拒否したため、拘禁され、収容所で6カ月も監禁された。周氏の中国の母校、清華大学でも多くの法輪功学習者が迫害されている。
法輪功(法輪大法)は、1992年、中国本土で一般に紹介された精神修養方法の一つ。1999年7月以前、中国メディアの報道では、学習者は7千万人いると言われ、一般市民から共産党高層や軍部の高官にも多くいたといわれている。1999年4月25日、法輪功に対する中国共産党政権の態度を懸念した学習者1万人が中南海付近の「信訪局」に集団陳情に行き、共産党高層リーダーと直接対話を行い信仰の自由を訴えた事件が発生した。一党制にとって、1989年の天安門広場での学生運動以来の脅威と映り、当時共産党政権を掌握していた江沢民が同年7月、法輪功根絶に乗り出した。中国本土の警官や司法関係者の手による現在までの法輪功学習者の犠牲者数ははかりしれない。
今年3月16日、米下院で賛成412票、反対1票で、中国の法輪功(ファールンゴン)学習者に対する迫害停止要求の605号決議案がほぼ満場一致で可決された。同決議案は、中国当局に対して「法輪功学習者に対する迫害・威嚇・監禁・拷問の活動を即座に停止し、法輪功撲滅を委託され法廷権限外に置かれた機密機関610弁公室を即座に廃止すること」を要求する内容だった。
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