千人有害ガス中毒185人入院、デモ防止600人警察出動=中国吉林省

2009/05/18
更新: 2009/05/18

【大紀元日本5月18日】今年4月末よりこれまでに少なくとも千人の従業員が体の不調を訴えた中国吉林省吉林化繊集団公司の集団ガス中毒事件について、当局衛生部専門家チームは5月14日、有害ガスが漏れていると疑われた吉林康乃爾化学工業有限公司(以下、吉林康乃爾社)に対する検査および空気中の各測定結果、有害化学物質の漏れはないと発表し、不調を訴えた従業員らは心理的なものだと示した。これに対して、吉林化繊集団従業員および付近の住民らは不満を示した。当局は民衆の抗議を防ぐために、15日早朝に600人の警察を出動し、吉林化繊集団周辺で待機した。

吉林康乃爾社は今年4月、有害化学物質アニリンを製造する中国最大級150トン製造設備を投入し製造を開始した。4月23日より、隣接する吉林化繊集団公司の従業員らが相次いで嘔吐、目眩、頭痛、吐き気、手足が痺れる、体がだるい等の中毒症状が現れ、同社上層幹部によると、5月14日までに少なくとも千人が体の不調を訴え、185人が入院し、ベッド数が不足しているため、数百人が点滴のみを受けたという。事件発生後、吉林康乃爾社は4月30日にアニリンの製造を中止した。

吉林康乃爾社は、元中国石油吉林化学工業有限公司双苯工場で、別名103工場。2005年に起こした爆発事件で負傷者70人、行方不明者6人、数万人が緊急避難し、広範囲にわたり松花江流域の汚染をもたらした。今回はアリニンの製造過程で空気中に排出する有毒ガスが基準を超えており、深刻な環境汚染をもたらしている可能性があるとみられた。

点滴を受ける不調を訴えた吉林化繊集団公司の職員

これに対して5月14日、国家疾病制御センター専門家チーム代表の張寿林教授は、不調を訴えた者は同じ工場内の従業員であり、工場内の検査では有害物質の基準値は規定範囲内であるとした。また、吉林康乃爾社でアリニンを製造する際に発生する可能性のある一酸化炭素、アニリン、ベンゼン等の測定も国家衛生基準内の結果であると発表し、吉林康乃爾社に由来するものの可能性を排除し、吉林化繊集団従業員らの不調は集団性心理的要因に由来するものとの見解を示した。

吉林化繊集団上層幹部は取材に対して、当局が発表した検査結果に驚き、千人が中毒した大事件でも、当局の専門家が有毒ガスの漏れはないと言い切ることに落胆し怒りが覚えたという。さらに、工場の前に600人の警察と警察の車がいっぱいになっており、警察から当局の結論を受け入れるようにと圧力を受けたという。幹部は、自分たちにはどうしようもなくて、メディアに真実の報道を託すしかないと嘆いた。

一方、地元の住民らによると、自宅にいても窓を開けることができず、親は子どもの健康を心配しているという。今は何もなくても、子どもが大きくなるに連れて、後遺症が現れた時にどう対処するのかと懸念しているという。吉林化繊集団は康乃爾社より低い位置にあるために、ガス中毒者が多く現れた。今回の有毒ガス中毒事件康乃爾社の周辺にいる数万人の住民らも今は恐怖の中で生活しているという。

吉林化繊集団の従業員は水道水から異臭がすることも反映したが、専門家チームは今回の症状は呼吸系統疾病に由来する可能性が強いとのことで、飲用水への検査は行わなかった。従業員および家族らは発病の原因について、科学的具体的な説明を求めている。

 (記者・方暁、翻訳編集・余靜)