四川大地震:教育部の新指導要領「英雄に見習う」、手抜き工事への関心を逸らすねらい

2008/05/30
更新: 2008/05/30

【大紀元日本5月30日】中国政府はこのほど、学校教育指導要領に教師向けの地震対策・救援活動プログラムを組み入れることを決めた。これに対して、一部関係者からは、目下の急務は災害現場の「英雄」を育てることではなく、地震で何故7千の校舎が倒壊し、6千人の生徒が死亡したことを徹底的に調査することであると非難の声が上がっている。

5月25日に開かれた中国教育部記者会見で、「英雄に見習う」が発表され、全国の学校教育指導項目で、地震対策・救援活動を展開し、教師や団体に英雄的な救助活動を奨励し、模範的な救助活動例を宣伝する内容だった。

今回の四川省大地震で、確かに多くの教師が生徒を守るために、身の危険を顧みずに救援活動に参加した。しかし、被災地でボランティア活動を終えて戻ってきた作家の冉云飛(ラン・ユンフェイ)氏によると、被災者の関心は、英雄的な救助活動ではなく、7千の校舎がなぜ倒壊し、6千500以上の生徒が瓦礫の下に埋もれたかに強い関心を寄せているという。

冉氏は、校舎が手抜き工事で造られている以上、どんなに勇敢な英雄でもどうしようもないと皮肉った。また、沢山の子供が死亡したにもかかわらず、謝罪や反省もない教育部は、意味のない行動を取っているだけだと指摘した。

被害が深刻な綿竹市の五福鎮富新二小学校は地震で倒壊し、小学生127人が死亡した。報道によると、この学校は1989年に建設されたが、1996年にはすでに危険建築物に指定されたが、学校側は対策を講じなかった。今回の地震でがれきの中から見つかったのは、もろくも崩れたコンクリートと僅かな鉄筋だった。これを知った親たちは5月25日、直訴しないよう、綿竹市委書記が跪いて依頼しても、綿竹市を直轄する徳陽市政府当局に学校校舎建材の品質を徹底的に調査するように求めた。

大地震発生後、すでに多くの親たちが現地の教育局に何度も抗議していることから、我が子の命を奪った手抜き工事の調査を重要視しているのは明らかだ。

しかし、各地教育局局長はいまだに責任を回避し、教室が横に広すぎたからだとか、手抜き工事の事実はなかったなどの口実を言う。海外の場合、米国にしろ、仏・英にしろ、制度上の欠点に着目する。

冉氏は、英雄的な救助活動には困難が伴うが、建築物が頑丈であれば、英雄の救助活動もいらないと指摘し、温家宝首相が言及した「多難興邦」(国が多事多難であれば、人民はかえって奮起して国の興隆をもたらす例え)を含めて、中国に必要なのは多くの英雄ではないことを強調した。

一方、重慶市独立評論家・鄒化武(スウ・ファウ)氏も教育部が提唱する英雄的救助活動を批判した。鄒氏は「例えば、テーブルの上に3つのものを置いてあって、その内の2つのものについて、事実に基づいて語ったが、3つ目のものには一切触れないし、否定もしない。このようなやり方がまさに騙しだ。当局は正面からの宣伝を強調するばかりしているが、それこそが最大の騙しだ」と非難した。

教育部スポークスマンの王旭明氏は記者会見で、被災地で倒壊した校舎が手抜き工事である事実が分かれば、厳重に処分し、汚職や贈賄などの不法行為は断じて許さないと示した。しかし、英ロイター通信社記者は、教育部が英雄的救助活動を宣伝するのは、校舎の倒壊や死亡した生徒から人々の注意をそらせる狙いがあると示した。

冉氏は、教育部関係者が倒壊した校舎の問題を明らかにし、建築物は倒壊しない保障をしてくれれば、それこそ英雄的な行為と示した。

(翻訳/編集・余靜、編集・藤川)