【大紀元日本11月29日】中国国務院の三峡建設委員会はこのほど、三峡ダムの所在地・長江沿岸の自然環境の破壊問題を解決するため、7つのプロジェクトを新たに追加するという。環境問題の専門家は、政権関係者が自己利益を追求するため、建設を無謀に進めたことが問題の発端であり、いまの体制下で解決は不可能と指摘した。
これらのプロジェクトは、三峡ダム建設により家屋移転した住民の生活用水の供給を保障することや、長江沿岸の都市による汚染物の排出制限を厳格に履行すること、ダムの氾濫問題を解決する応急体制の構築などに取り組む姿勢を強調した。
三峡ダムの建設により、長江の水が遮断されたため、大量の農業用化学物質の残留物や、工業汚染物を排出できず、沿岸で深刻な水質汚染をもたらしている。また、建設により広範囲の森林が破壊され地質が弱くなった。2003年7月ダムでの貯水が始まってからの統計資料によると、山崩れにより24人が死亡、1100人以上の家屋が破壊、大勢の農民が余儀なく移転する羽目になった。環境問題の専門家は、三峡ダムの建設がもたらした一連の環境問題の規模と度合いは、予想以上に深刻であると指摘している。
同ダム建設を主管する中国当局の幹部は今年9月、ダム周辺地域での汚染と地崩れ問題を解決しないと、『環境災難』を招く、と発言していた。この発言が中国当局の政府メディアに報道されてから、世論が大いに騒いたため、同幹部が態度を一転し、保守派に変わった。
三峡ダムの建設企画に参加していた王維洛氏=ドイツ・ドルトムント大学国土計画学博士=は、中国当局はこの大型建設プロジェクトについて、支持する意見しか取り上げなかったと明らかにし、「中国の知識人は、政府の顔色を窺い、自分の見識より当局の言いなりになることを最重要視している。結局、彼らは、政府の主張を正当化する科学者にすぎない」と述べ、三峡ダムの建設を支持する科学者らは、中国当局の政治宣伝に同調するだけで、真の客観的な科学論証を示せないでいると指摘した。
長い間、中国の環境保護問題に注目している米国在住の作家・鄭義氏は、三峡ダムの建設をめぐり、背後に膨大な利益集団が存在すると指摘、「中国の現状は、政権の権力者と民間業者が結託し、貪欲に自己利益を貪っている。このような状況において、言論や、報道の自由もなく、司法の中立も守られず、環境問題は無視され、益々深刻になるのは当然である。根本的に解決するのは不可能」と悲観的な見解を示した。
三峡ダムの建設にめぐって、一部の中国環境問題の専門家は当初から、長江の沿岸地域の自然環境を破壊すると警告していたが、このような声は封じられていた。建設が始まってから、長江沿岸では洪水や、大規模な地すべりが度重り、深刻な森林破壊が指摘され、水質汚染も益々深刻になる一方である。今回、中国当局が公表したこの声明文は、これらの問題のつけが回ってきた現状を物語っている。
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