中国:人民元を3・5%大幅切り上げか

2007/07/26
更新: 2007/07/26

【大紀元日本7月26日】今年上半期の実質成長率が11・5%に達した中国経済の過熱感が依然として継続しており、膨大な貿易黒字が縮小することがなく持続拡大しており、今年上半期の貿易黒字は前年同期比で83・1%増の1125億ドル(約13兆5000億円)に達したという。これまで中国政府当局が景気過熱を防ぐのに実施した各金融引き締め政策の効果が低いため、政府当局は人民元を一度に3・5%と引き上げる可能性がある、とエコノミストらはみている。

*中国 やむ得ず大幅な人民元切り上げに踏み切る

フランスに本拠を置くユーロ圏大手金融クループ、ソシエテ・ジェネラル・バンク (Societe Generale Bank)のチーフ・アジアエコノミストのグレン・マグワイア(Glenn Maguire)氏は、これまで中国が実施した金融引き締め政策の効果が当初期待されるほど高くないため、中国政府当局は人民元の上昇を加速させる可能性が高いと話した。同氏は、中国政府は経済過熱を防ぎ、国際社会からの圧力を緩和するために、一度に人民元を3・5%と大幅に切り上げるのではないか、と推測している。

中国政府は2005年7月21日、人民元の固定為替相場制度を通貨バスケット制に移行し、当日から元の対ドル基準値を2%切り上げ、1ドル=8・11元にすると発表した。その点xun_ネ来、人民元の対ドル基準値の毎日の変動幅はほぼ2%~2・5%の間に固定されている。2年間の間に、人民元の対ドル基準値は累積に約9・4%上昇した。一方、米国国会は、中国政府の人民元改革が緩慢で、人民元が過小評価されているため、米中間の貿易不均衡問題が深刻化したとなった、と強く非難した。

米国連邦準備制度理事会(FRB、中央銀行) のバーナンキ議長は国会証言をする際に、柔軟な市場為替変動相場制度がなければ、中国は独立した金融政策をとることは不可能、と話した。また、バーナンキ議長は人民元上昇のペースを速めることは中国自身にとって利益となる、と示した。

しかし、中国政府官員は数回にわたって温家宝・首相が昨年為替改革に関して提案した「自主性、管理可能性、漸進性」との三つの原則を繰り返し強調し、突如とした人民元の大幅な切り上げの可能性を否定してきた。

*景気過熱を示唆する高い消費者物価指数

マグワイア氏は、景気過熱とインフレの抑制を目的に、2006年4月以来中国政府は5回にわたって1年物の貸出基準金利および預金基準金利を引き上げてきたが、しかし当初期待された効果が現れなかったため、政府当局はやむ得ず人民元の切り上げペースを速めることに目を向き始めた、と示した。同氏は、一度に人民元の対ドル基準値の変動幅を大幅に広げることによって、今年年末までに1ドル=7・20元と急速に元高に進む可能性が大きい、と予測する。

国家統計局が発表した最新データによると、今年第2四半期の実質成長率が前年同期比で11・9%増となり、11年半ぶりの高水準となったという。また、インフレの同行を示す6月消費者物価指数(CPI)は、主に食品価格の上昇を背景に前年比4.4%上昇し、4ヶ月連続に中央銀行が定める3%のインフレ警戒水準を上回った。インフレの状況が依然として懸念されている。

カナダのヨーク大学商学院のバーナード・ウォールフ教授は、為替改革と独立した金融政策との間の重要関係を強調した。同教授は「中国政府としては、固定為替相場制度を用いている場合、マネーサプライをコントロールするのが非常に難しくなる、という基本的な問題に直面している。固定為替相場制度では、金融引き締め政策を実施しても、政府金融機関の投資またはホットマネーの流入へのコントロールが依然として難しいため、政策の効果がほとんど現れない。人民元の柔軟性を高めてはじめて、景気過熱が有効に抑制されることができる」と話した。

*依然として漸進的に切り上げていく可能性が大きい=専門家

マグワイア氏によると、インフレと景気過熱を早急に解決したい中国政府は、これまでの漸進的な態度を変え、市場がまだ十分に予想しないうちに、人民元を一度に2・5%~3・5%と大幅に切り上げする可能性があるという。

一方、米国メリーランド大学のピーター・モリッチ経営学教授は、中国政府は現在の経済状況や国際圧力で、「不意を突く」ように人民元を大幅に切り上げする可能性があるが、問題解決にはならないとみている。同教授は「人民元の大幅な切り上げは中国の過熱した経済を沈静化できない。中国政府はこれによって米国からの圧力を緩和できるようと望んでいるが、国際社会からの非難を解除することができない。一度に3%以上の切り上げは問題を解決することができない。なぜなら、人民元は少なくとも40%過小評価されている」と指摘した。

しかし、中国政府が人民元を一度に3%以上切り上げするとのマグワイア氏の推測に同意しないエコノミストが多数いる。ブルームバーグ社が人民元切り上げ問題について、マグワイア氏を含む27人のエコノミストに対して行った調査によると、大部分のエコノミストは、中国政府指導者は人民元改革に関して、これからも漸進的な方針を維持していく、と認識を示したという。その中のカナダのヨーク大学のウォールフ教授は、「私自身は、中国が直ちに完全な変動相場制度に移行することに賛成しない。なぜなら、これは中国経済に大きな打撃を与えるに違いない。理想的な人民元の切り上げ幅は毎月0・5%~0・75%の範囲内に維持されればいいと思う。これは、不確定的な要因を回避することができるし、また、よりよく金融政策の効用を発揮することができる」と話した。