【大紀元日本5月24日】米テキサス・インスツルメンツ・インク社(以下、テキサス社)は、投資額10億米ドル(約1200億円)の半導体チップ・パッケージ製造工場の建設場所を最終候補に残っていた中国ではなく、フィリピンにすることに決定した。この決定により、フィリピンが景気回復の兆候を示すことが予想されていると同時に、アジアにおいて製造業のコスト・パフォーマンス最優位は中国であるという観点を覆した。
5月3日、半導体製造大手のテキサス社上層部は、訪問先のマニラで、アジアの国々は現在も同社に対して投資の誘致を行っているが、フィリピンにあるチップ製造工場の熟練作業員たちの存在が、第2工場の建設決定の決め手となったと説明した。
一方、海外の科学技術企業にとって中国は、依然として魅力的な投資先である。例えば、インテル社(Intel Corp.)は今年3月、25億米ドル(約3000億円)の投資額で中国にて半導体ウエハ製造工場の建設を発表した。これに対して、テキサス社が半導体測定試験およびチップ・パッケージ工場の新設をフィリピンに決定したのは、同国に対する偏愛もあるかも知れないが、中国での製造コストの上昇に伴い、投資家たちが新しい選択肢を考慮した現れであるとみられている。
中国では近年、沿海工業地域の地価が高騰しただけではなく、現地作業員の賃金も2桁の上昇に達していることから、フィリピンなどその他の国の熟練作業員と同賃金、しいてはそれを追い越しているケースもある。これを受けて、インテル社は、グローバル供給網を確保し、安定供給を図るために、中国以外の国への投資も強化した。実際、少し前に、同社はベトナムに10億米ドル(約1200億円)を投資し、チップ測定試験および製造工場を建設することを発表し、マレーシアに対する投資額も増加させているという。
ATR-Kim Eng Securities Inc.駐マレーシア経済学者のラズ・ロレンゾ(Luz Lorenzo)氏は、一部の企業にとって、コスト・パフォーマンスだけでは、中国への投資を促すための説得力に欠けると言う。これに対して、テキサス社技術業務のケビン・リッチエ副総裁は、同工場で働く従業員はしっかりと教育を受けており、英語の話せる人が多いことから、ここに工場を建設したと説明した。第2工場は3000人の雇用を生む予定だという。
フィリピンの山にある町ビヤオに建設した最初の工場は、テキサス社のチップ総生産量の40%を占めている。同社はフィリピンにおける製造コストおよび電力供給が不安定なこと、更に従業員の平均賃金が中国より高いことなど、マイナスな要素があるにも拘わらず、この工場への投資は成功だったとみなされている。
テキサス社フィリピン業務総責任者ノルベルト・ビエラ氏は、第2工場建築予定のマニラから北へ100キロメートル離れたクラク自由港地区地区には、近いうちに専用の発電所が建設され、同社が安定して電気供給を確保できると説明している。クラク自由港地区はかつて米空軍基地があり、現在は国際空港を持つ広大な工業地区に発展している。
一方、フィリピン政府がテキサス社に対しての税金優遇またはその他の対策を講じたかは不明だが、一般的に、経済特区内にある新しい工場に対しては、優遇政策が適用される。フィリピンのアロヨ大統領は記者に対し、テキサス社の投資を獲得するために、アジア各国候補間に激しい競争が行われたことに触れ、同社の決定は、フィリピンが近年の経済回復に対する自信の増加の現れであると語った。
テキサス社によると、今年の下半垣xun_ネ降に工場建設を開始する予定で、米国で研究開発された節水および省エネルギーなどの新しい技術を導入するという。
前出の経済学者ロレンゾ氏は、フィリピンは大規模な投資の誘致において、長い間中国に勝ることがなかったが、テキサス社の今回の投資計画から、多くの投資家がフィリピンに対して、前向きの姿勢を見せるだろうと述べた。