中国:一人っ子政策を無視する富裕層

2007/02/17
更新: 2007/02/17

【大紀元日本2月17日】一夫婦間に一人の子どものみの出産が許される中国では、一人っ子政策に従わないものには、主に罰金を課す懲罰を与える。しかし、近年中国の経済発展と収入格差が拡大する中、都市では高収入の富裕層が増え、数万元(邦貨:数十万円)の罰金は富裕層にとってまったく負担にはならないため、2人目、3人目の子どもを次々と生み続けている。この状況に対処するため、一部の地域の行政府は罰金の金額を上げるほか、一人っ子政策に違反する者の名前を公開し、世論を使って圧力をかけようとしている。

*罰金額を引き上げ、名前を公表

新華社の報道によると、「浙江省・人口生育計画委員会」の章文彪・主任は7日、「一人っ子政策に違反する党幹部と富裕層に対して、浙江省当局は罰金を17万元に引き上げたが・・・罰を恐れないのは性悪だ。近いうちに名前を公表するしかあるまい・・・一部の名士が、お金さえ出せば子どもをたくさん生んでもいいと思っている。このような行為は一般民衆の不満を招くため、止めさせなければいけない」と話した。浙江省政府は政策違反の典型的な事例を近日公表するという。

一人っ子政策は、中国大陸で人口を抑制する目的で70年代から一貫して実行されている。政策違反して一人以上の子ともを生む家庭に対して、罰金や職場追放、2人目以降の子どもに戸籍を与えないなどの懲罰を取っている。

*経済力で複数の子どもを持つ富裕家庭に不満の大衆

一人っ子政策に違反するケースは過去では主に経済が遅れ、男尊女卑農村では起きていたが、現在、都市でも「超生新貴族」が現れ、多くの芸能人、政府幹部、お金持ちなどにも多くの一人っ子政策を違反する者が現れた。

今年一月、中国メディアは7917人を対象に調査、67・9%が「富裕層の政策違反は深刻」と回答、61・1%が「不公平だ。なぜ、金が有れば子供を多く持っていいのか」と回答した。

不公平に対する民衆の不満は募り、昨年4月、中国国家人口計画生育委員会の責任者・張主任は、「政府幹部、党幹部と富裕層によく見られるこの現象は非常に良くないと公に批判した。

しかし、民衆の富裕層に対する不満は、一人っ子政策を支持するものとは言い難い。先月、中国政府が発表した調査結果では、60%の中国人は2人の子どもを持つことを望んでいるという。さらに、80年代初めに誕生した最初の一人っ子世代はすでに結婚年齢に入り、日増しに激しくなる社会競争の中、老人定年後生活保障がないため、二人の若者が四人の老人を扶養しなければならない。

*一人っ子政策は富裕層には無効

米国VOA報道によると、富裕層が一人っ子政策に違反する現象に民衆が不満を持っていることについて、米国ノース・カロライナ州大学の国光教授は、中国人の平等を要求する社会理念の現れであると指摘した。国光教授によると、中国は長年の社会主義の後、人々の平均意識は非常に強く、金持ちがお金で多人数の子どもを生めることに不平等と感じているという。しかし、国光教授は、「名前を公表する方法は富裕層の政策違反者を有効に制限できるとはいえない。あらゆる悪事が起きている中国では、悪事に恥を感じることさえもなくなり、複数の子ともを産むことは特に恥ではない。高級官僚、国営企業幹部などは、名前を出されるとキャリアに傷がつき職場での地位に影響するので有効かもしれないが・・・私企業の社長や芸能人などの人種には、必ずしも圧力になるとはいえない。上に政策有れば、下に対策有りだ。・・・富裕層にとっては、これに対処する方法は他にもある。例えば生んだ子供を他人の名義にするとか、または外国に行って子供を産んでくる方法だ」。

*中国人口の推移

国教授によると、もし中国が人口レベルを現状維持にしようとすると、一夫婦につき2・2人の子供が必要だが、最近の出生率は1・4人程度で、「欧米先進国並み」に落ち着いてきたという。

こういった現象は、20年間に渡る「一人っ子政策」の他、改革開放により民衆の意識が変わり、特に都市部の若い夫婦が子供の養育を経済上の負担と考えるようになり、自分の生活を犠牲にする生活様式を好まなくなったからだ。一方、党幹部や私企業の社長などの富裕層は、自ら養う経済力が有れば、何人子供を持つかは「自己選択制」と考えている。

カナダ・トロント大学のプラダ教授によると、中国人のこうした問題に対する観念上の変化は、都市部だけでなく農村部でも起きているという。中国の農村部を実地に調査した結果では、農民の多くが都市部に民工として出稼ぎに出る風潮が高まっており、若い娘でも都市に出て働けば「金に成る」ため、息子よりも親近感をもつ農村部の親が出てきている。こうした風潮は、農村部が「男尊女卑」の封建的な考え方から脱却できる出口になりうるという。

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