【大紀元日本10月15日】北朝鮮の核実験実施発表をめぐり、国連安全保障理事会は14 日午後(日本時間15日未明)、北朝鮮制裁決議を採択した。中国当局が堅持していた非軍事の経済・外交制裁を限定するための国連憲章7章41条の記載や、北朝鮮船舶などへの貨物検査(臨検)と禁輸対象の大幅緩和などの条件が盛り込まれる形となった。また、中ロ両国は、今回の制裁決議の実行期限について、「北朝鮮が六カ国協議に復帰し、協議の進展があれば、制裁は解除されるべき」と強調している。一方、米国シンクタンクは国連採決の前から、中国当局の今回の制裁決議案の制定過程における外交戦略について、「中国は両面的な手法を用いて、米国などを納得させようとしている」と警鐘を鳴らしていた。
北朝鮮の核実験が公表されてから、中国当局が、「強力な措置が必要」と北朝鮮に強硬な姿勢を示し続けながら、国連憲章7章42条に規定される軍事行動の可能性を排除するため、経済制裁を規定した同章41条に限定した決議とすることを堅持した。当初、米国が提示した決議案では、「国連憲章7章に基づいて行動する」と記していたが、12日午前(日本時間13日未明)に開かれた国連安保理の非公開会合で、米国が再々修正案を提出、北朝鮮への武力行使の可能性を懸念する中国やロシアに譲歩し、経済・外交制裁のみを規定した41条を新たに明記した。当初は、この再々修正案が安保理で採択される見通しだったが、中ロ両国は14日にさらに異議を示し、北朝鮮を出入りする船舶への「貨物検査(臨検)」と禁輸対象について、大幅な条件緩和を求めてきた。結果、中ロ両国の要求が修正案に盛り込まれ、制裁決議案が全会一致で採決された。
また、タス通信によると、14日にロシアを訪問した中国の唐家セン国務委員と会談したイワノフ国防相は、制裁決議について、中国当局の「無期限にするべきではない」との意見に同調すると述べ、「(北朝鮮に対する)制裁発動の場合、北朝鮮が6カ国協議に復帰し、協議に進展があれば、制裁は自動的に解除されるべきだ」と強調した。
米国ヘリテージ財団の研究員、国務省の中国情報分析官ジョン・タシック氏は11日、「北朝鮮核実験における中国当局の反応についての分析」と題する評論文を発表、今回の制裁決議案の制定について、中国当局の両面的な動きに警鐘を鳴らした。
タシック氏は、北朝鮮の核実験後、中国当局は初めて制裁を支持する態度を表明したことについて、これは中国当局による米国政府への言動不一致の外交策略である可能性を示唆し、米国は中国当局に圧力をかけ、北朝鮮への強硬制裁を支持させるべきとの論点を示した。
タシック氏の論文の概要は次のとおり。
北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)から脱退した1993年以降、国際社会は北朝鮮の核兵器保有を疑い続けてきた。一方、中国当局も、北朝鮮が原子爆弾を有していると誇示することを望んでいる。目的は北朝鮮が核兵器を持っていると疑わせること。今年10月9日まで、北朝鮮は核実験実施を宣言しなかったため外部は疑いを持っていなかった。北朝鮮は国際援助を獲得するために、この問題の曖昧性をさらに増強してきた。中国当局もこの問題の仲介役を務めるのを願っているため、対外的には核拡散を憂慮していると称し続けてきた。
しかし、北朝鮮が10月9日に核実験の実施を表明したとなれば、米国は中国当局に圧力をかけ、北朝鮮への強硬制裁を支持させなければならない。過去10年間、中国当局は、北朝鮮への批判を保留し続け、北朝鮮問題を生じさせたのは米国側と指摘してきた。2003年8月に開かれた第一回目の六カ国協議で、王毅・外務次官(当時)はマスコミに、「米国の対北朝鮮政策は、我々が直面する主要問題」と発言していた。
米国のボルトン国連大使は10月5日、中国当局の北朝鮮への態度は、慎重に見極めるべきとけん制する発言をした(編集者注:中国当局は、今月3日、北朝鮮が核実験を行うとの声明を公表した後、安保理協議の席で、「この問題を解決する最善の方法は六カ国協議」と繰り返し強調。それについて、ボルトン米国連大使は、中国当局を「北朝鮮の保護者」と批判した)。
中国の王光亜・国連大使は10日、AP通信の記者に、「北朝鮮には、建設的かつ、適切な、慎重な応対が必要で、懲罰的行動も不可欠」と語った。この発言は非常に曖昧だ。米国人が聞きたいことを言ったのか。それとも中国当局の政策転換を示したのか。その数時間前に、中国当局は対外声明で、「マイナス的な懲罰ではなく、プラスになる適切な(制裁)措置を講じるべき」と主張していた。
米国は今回の制裁決議案の協議で優勢を得るためには、ボルトン米国連大使の力を十分に活用しなくてはならぬ。中国当局は依然、「北朝鮮への厳しい経済圧力は、金正日政権を窮地に追い込んでしまう、北朝鮮の核問題を解決する唯一の方法は、六カ国協議での対話である」と固辞するはずだ。中国当局が北東アジアの安定に責任を担う意思があるかどうかを検証する手立ては、うわべの外交辞令を重要視するのではなく、行動をみるべきである。
国際社会は、中国当局が北朝鮮への制裁に示す態度を注意深く観察していくべきである。