【大紀元日本10月14日】北朝鮮は9日、地下核実験を安全に成功させたと発表した。それを受け、米国を中心に国連安保理での制裁決議案の議論が進む中、中国当局が、「強力な措置が必要」と強硬な語調の声明を発表する一方、国連憲章第七章42条に規定される軍事行動の可能性を排除するため、経済制裁を規定した同章41条に限定した決議とすることを求めてきた。そのため、国連安全保障理事会は十二日午前(日本時間十三日未明)、北朝鮮の核実験実施発表をめぐる非公開会合を開き、米国は制裁決議再修正案を正式提出、北朝鮮への武力行使の可能性を懸念する中国やロシアに譲歩し、経済・外交制裁のみを規定した「国連憲章七章四一条」を新たに明記した。この制裁決議案は14日にも安保理で採決される見通し。一方、中国問題の専門家は、北朝鮮の貿易額の約4割を占める最大貿易相手の中国当局は、対北朝鮮制裁を行わない限り、日米両国による制裁の効果は限定的と指摘している。
これまで一貫して北朝鮮制裁に反対、国連安保理でも北朝鮮を庇護しつづけた中国当局は、今月3日、北朝鮮が核実験を行うとの声明を公表した後、安保理協議の席で、「この問題を解決する最善の方法は六カ国協議」と繰り返し強調。ボルトン米国連大使から「北朝鮮の保護者」と批判されていた。9日に、北朝鮮が核実験の実施を公表した後、再三の自制要求が無視されたため、怒り心頭の中国当局関係者はこれまでにない厳しい態度をみせた。中国の王光亜国連大使は12日の安保理協議前に、記者団に北朝鮮の核実験は「無責任な行為」と非難し、安保理で「断固かつ強制力を持つ、適切な措置」を支持すると発言した。
また、胡錦涛・総書記の特使として米国を訪問した唐家セン・国務委員は米国現地時間の12日、ブッシュ大統領、ライス国務長官、ハドリー大統領補佐官などと会談し、北朝鮮の核実験に強硬な態度を示しながら、「朝鮮半島での非核化の実現や、朝鮮半島と北東アジアに平和、安定、安全をもたらすことは米中両国の利益につながる」、「北朝鮮の核問題は重大な分岐点に直面している。関係諸国は冷静な対応で、交渉や対話などの平和的な手段で問題を解決すべきだ。また6カ国協議が再開されるよう努力する必要がある」と訴えた。
一方、今回の北朝鮮制裁決議案について、日米と中露の意見が分かれていた。中国当局は、国連憲章七章42条に規定される軍事行動の可能性を排除するため、経済制裁を規定した同章41条に限定した決議とすることを求め続けた。中国の王光亜・国連大使はマスコミに第七章41条が我々の目的にかなう」と明言、国連本部で行われた常任理事国と日本の非公開会合で、王・国連大使は「(北朝鮮への)武力行使への懸念」を表明、「米国が提示した決議案のように『国連憲章七章に基づいて行動する』と記すのではなく『七章四一条の下で行動する』と明記してはどうか」と要求した。米国はこれを受け、関係国と協議した結果、中国の要求を受け入れ、「七章に基づいて行動し七章四一条の下で措置を講じる」と書き直したもよう。今年7月、北朝鮮がミサイルを発射した際には、中国当局の強い反対があったため、安保理は制裁決議案に「妥当な配慮」を払うことになるとする40条を引用した。
国連における中国当局が北朝鮮を保護する姿勢について、国際社会は、金正日(キム・ジョンイル)体制が崩壊、北朝鮮から大量の難民が中国に流入するような事態を最も警戒しており、それにつながる武力行使に道を開く決議にはあくまで反対と分析しているが、中国問題の専門家は、西側国家の考え方の甘さを指摘、北朝鮮という国際社会にとって騒がしい存在の国があるからこそ、中国当局が国際外交舞台で「重要なキーマン役」を務める政治情勢が形成されたとみている。中国海外民主運動の連席会議の主席・魏京生氏は、「北朝鮮問題は中国当局が用いる最高の外交カードであり、金正日体制が今日まで延命できたのは、中国当局による経済支援によるもので、金正日政権の存続は、中国当局にとって重大事項である」と分析した。
米国の「トラディショナル・ファンド」の黄■鏡・研究員(■は金偏に英)は今年7月初めに北朝鮮がミサイルを発射した際に、中国当局の6か国協議における利益目標は、最大限に地区での戦略利益を確保することであると指摘し、「中国当局を6か国協議の主催者にする事は最大の失策で、彼らをこの協議から排除しない限り、協議の進展は得られないはず」との見解を示し、日米などの関係諸国に警鐘を鳴らしていた。
一方、韓国政府のデータによると、北朝鮮の最大貿易相手は中国であり、北朝鮮貿易総額の約39%を占め、韓国は約29%を占めているという。香港紙「文匯報」の最近の報道によると、中国東北部の遼寧省丹東市の北朝鮮と接する国境では、毎日中朝を行き来とする大型トラックが列を作り、各車両に平均で25トンの貨物が搭載されているとして計算すると、毎日中国から北朝鮮に輸送される貨物の量は、4000トン近くになるという。このように中韓両国が北朝鮮の貿易総額の約7割を占める中、日本や、米国による対北朝鮮の経済制裁の影響は限定的に為らざるを得ないではとの声が浮上している。
また、韓国紙「文化日報」は12日、北朝鮮に精通する情報筋の話を引用、北朝鮮が近いうちに再び核実験を行う可能性があると伝え、韓国政府が確認している最中と報じた。