ウェンシーが工事を再開してからしばらくすると、ウェイチャンからまた信徒がきて師父を供養し灌頂をもとめた。 師母は、ウェンシーが苦労して工事に明け暮れても金がないため灌頂を受けら
2021/04/10
ウェンシーは小さい頃から母親の話を聞くと、それがどんなものであれよく従ってきた。今では師母が実の母親のようになっていたので、それを毛頭疑う余地もなく、
2021/04/09
師父は、ウェンシーが自分の言ったことに一切恨み言も言わず、黙々と謹厳実直にやり抜くのを見て、内心驚きを禁じ得なかった。
2021/04/08
師母はウェンシーの背中の創口を見ると忍びなく、実際心が痛んだので、すぐに「このことは師父に報告します」と言うなり、師父を探しに行った。 「ラマ!あの怪力の子は可哀そうです。長年に
2021/04/07
このとき、リタ地方からまた大灌頂を受けに師父のもとへ人がやってきた。 「今度の灌頂は、あなたもきっと受けられるわよ」。師母がウェンシーに言って、供養するための品々を渡した。彼は
2021/04/06
ウェンシーが堡塁を七層まで建て終えた時、ある施主がマルバに灌頂を願い出てきたので、その儀式を執り行うこととなった。師母は心の中で思った。「この怪力君は一心に法を求めている。この
2021/04/05
ウェンシーがこの大きな堡塁の基礎を築くにあたって、師父の弟子が三人手伝いにやってきた。彼らは協力して大きな石を山の麓から山頂まで運んでくれたので、ウェンシーはこれらを建築の基盤
2021/04/04
「師父…」ウェンシーはこの二文字を言おうとしたが、すぐに呑み込んだ。彼は本来、背中の傷を師父に見せたかったのだが、思いを馳せれば師父に罵られた事ばかりが想起され、やるかたなく一切
2021/04/03
時間が経つにつれて、ウェンシーは建物全体を壊し終え、木材と石材全部を山の下へと運んだ。すべての工程を終えると、師父はウェンシーを北の山の山頂へと連れて行った。「怪力君、この前
2021/04/02
ウェンシーがこの石屋を建ててから、しばらくの時間が経過した。彼は疲労や孤独の労苦を思わなかったばかりか、このとめどない仕事の間は、母親の怨恨や殺人、雹を降らせたことなどを忘れ
2021/04/01
明くる日の早朝、尊者はウェンシーを呼びつけて言った。「怪力君、昨日の話は少し勘気に任せて言い過ぎたから、気にしないでくれ。君は体が丈夫そうだし、気力も体力もありそうだから、わ
2021/03/31
雹を降らせた後、ウェンシーはまた師父の所へ戻り、正法を求めた。 「先生、わたしはすでにツゥダとリンバの収穫をふいにしました。どうか私に法を伝えてください」 「私に法を求める?こ
2021/03/30
ウェンシーは師父を供養するために数日もロツアウ谷で物乞いした。彼は物乞いしてきた裸麦で大銅燈、酒、肉を買った。そして、余った裸麦を頭陀袋の中に入れ、その上に大銅燈を括り付け、
2021/03/29
【大紀元日本11月23日】ウェンシーはラマが去ったのを見届けると、思わずおいていった酒瓶を取り上げ、「ゴクリ」と一口含むと、やおら畑を耕し始めた。畑をやり始めてからまもなく、可愛い子供が彼に駆け寄って
2021/03/28
このとき、ウェンシーはロンツァ地方の近くまで来ていた。彼は、道行く人々にマルバ尊師がどこに住んでいるのかを聞いて回ったが、予想に反してこの名を知っている人は少なかった。 彼は
2021/03/27
ロンツァ地方に、「マルバ釈師(※)」という人がいた。彼はインドのノノバ尊者に直接師事し、大きく成道した尊者だった。ウェンシーは、「マルバ釈師」の名号を聞くと、心の中に言い知れぬ
2021/03/26
フェイマオタイは気功を長年修行していたので、軽功で駆けるかのように、普通の馬では追い付けなかった。彼はただ村民たちと遊ぶだけであって、村人が一生懸命に追い付こうとすると、彼は少し早く歩き、村民が遅く追いつくと、彼もゆっくりと歩いていた。
2021/03/24
ウェンシーとフェイマオタイは呪法が成功したのを確認すると、自分たちの風雨を招く能力を目の当たりにして、他人の命運をほしいがままにできたかのように感じた。この二人の若者は、血気にはやる年代である。しばらくの間は興奮さめやらず、やった事の結果がどういうものになるかを考えてもみず、また将来大きな罪悪と応報にあうことも考えていなかった。
2021/03/23
ウェンシーは黄金七両を手に入れると、行者に一銭を与えたので、行者はたいそう喜んだ。それからラマの母に七銭を与え、ラマには黄金三両を供養して言った。「私の母は、雹を降らせる法を学べと言ってきています。どうか先生、雹を降らせる法をお授け下さい」
2021/03/22
ウェンシーはひとしきり泣くと、親戚を訪ねよという手紙のくだりに思い至り、涙を拭うと行者に尋ねた。「あなたは、私の親戚がどこの山村に住んでいるのか知っていますか。知っていたら教えてください」
2021/03/21
ウェンシーはここに至って、村人たちが彼を殺害しようとは思ってもみなかったが、それから数日後にあるヨガ行者が当地を訪れ、彼に会おうとした。彼に会うと、ウェンシーは始めてことの経緯を知った。
2021/03/20
村人が声のする方を見てみると、ウェンシーの母が自分の衣服を破った布きれを棍棒に結びつけて、大声で叫びながら近づいてきた。彼女はその棍棒を振りながら大声で笑い、それはまさに狂気の沙汰であった。
2021/03/19
「まさか!」 「馬の一蹴りで家屋が倒壊するなんて…」 数人がその声に応えた。
2021/03/18
ウェンシーが呪法を修してから十四日目、叔父ヤンツォンの長男が結婚式をあげることになり、宴会に多くの客人が招かれた。以前、叔父夫婦とともにウェンシーたちを馬鹿にしていた人たちもすべて招かれ、それら総勢三十人以上が叔父の家で祝賀の杯をあげた。ウェンシー親子に同情的だった人たちも招かれ、彼らは叔父の家への道すがら、このことについて議論となった。
2021/03/17
ウェンシーはここまで言うと、たまらずに泣き出して嗚咽しながら続けた。「ですから、私はまだ家に帰れないのです。どうかわたしを憐れに思って、もっとすばらしい呪法を教えてください」
2021/03/16
光陰矢の如し。ウェンシーがここウェイツァンに来てから早一年が経とうとしていた。
2021/03/14
ウェンシーが出発した後も、母は名残惜しそうに遠くまで見送り、その手をとると涙ながらに彼を見つめた。この眉の濃い息子は成年に達したものの、ここまで無数の苦労を経験した。その顔にはまだあどけなさが残り、母に対する思いと天性の美しい気質以外は、彼はまだ単純で世間を知らないように見えた。
2021/03/14
「お母さん!」 ウェンシーには母の苦悶と憤怒の表情が見て取れたので、心痛で耐えられなくなり、涙が零れ落ち、それが母の顔と衣服を濡らした。妹のプダも一緒に泣きながら、母の手を取ってその身体を揺らして覚醒を促した。しばらくして、母は気が付き、ウェンシーをみとめると涙を流して嘆息した。
2021/03/14
ウェンシーは酒に興じ、酔って山道を登り始めた。歌えば歌うほどに、その声は高らかになり、気持ちよさそうな歌声が山谷に響き渡って、風が吹くと木々がそよぐので、それらが合唱しているようだった。
2021/03/13
ウェンシーの母は、ウェンシーに手に職をつけてもらい、人より抜きんでて、二度と騙されて人の顔色を見て生活しなくてもいいようにと願った。彼女と妹のプダは、働き口を見つけて日銭を稼ぎ、ウェンシーの学費を賄うと、後は爪に火をともすような生活であった。
2021/03/13