高市早苗首相は11月7日未明、同日から始まる衆議院予算委員会の答弁に備えるため、午前3時すぎに首相公邸に行った。首相は午前3時1分に東京・赤坂の衆院議員宿舎を出発し、同4分に公邸へ到着。勉強会には秘書官全員が参加し、約3時間にわたって実施された。未明の勉強会は極めて異例である。
野党側からは「関係職員を深夜に動員するのは異常だ」との批判が上がった。立憲民主党の黒岩宇洋議員は「午前2時半に職員が出勤し、警備や衛視を含め約100人が待機していた」と指摘した。
これに対し高市首相は、これまで役所のレクチャーは受けず、自身で答弁書を読んで理解していると説明。そのうえで午前3時に公邸へ向かった理由として、宿舎のFAXが不調で答弁書を受け取れなかったこと、答弁書の完成が午前3時ごろになるとの報告を受けていたことを挙げ「一読もせずに委員会に臨むわけにはいかなかった」と述べた。多数の職員を深夜に官邸へ呼ぶよりも、公邸で静かに作業する方が負担が少ないと判断したという。
こうした背景について、自民党の国光あやの衆院議員(元厚労省職員)は自身のX(旧Twitter)で、「午前3時に総理レクが必要なのは、そもそも『(特に野党の)質問通告が遅い』からだ」と指摘した。
国光氏は「前日にご覧になりたくても質問も答弁も完成していない。前々日の正午までという通告ルールをどれだけの野党議員が守っているのか」と述べ、人事院の調査を根拠として「現場職員の切実な声がある」と投稿。そのうえで、「高市総理は役人への負担を極力配慮している」と擁護した。
実際、答弁書の作成が深夜に及ぶ構造的要因として、質問通告の遅れが長年指摘されており、人事院の実態調査では、国会答弁作成業務の負担原因として「質問通告が遅い」と回答した職員は71.8%に上り、「趣旨が不明確」「関係府省との調整」「不必要な待機指示」なども多く挙げられている。
コンサルティング会社ワークライフバランスのプレスリリースによると、質問通告は与野党の申し合わせにより「委員会の前々日の正午まで」と定められているが、現場の85%が「守られていない」と回答している。同リリースでは質問通告時間が遅いのは「立憲民主党」「共産党」と指摘されており、今回の黒岩議員の発言はブーメラン発言となっている。
国会にはびこる「日程闘争」という慣習がその一因で、国会日程を巡る与野党間の駆け引きが、通告の遅れを常態化させている。議員が通告を期限どおりに提出し、基本的なデジタルツールを活用するだけで、年間約248億円の行政コストを削減し、その財源を国民に還元できるとされている。
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