ハーバード大学は2029年度新入生データを発表。アジア系学生が41%と過去最高を記録し、大学入試制度や教育現場の多様性が変化している。
米連邦最高裁が「人種による優遇措置の禁止」を命じる判決を下してから2年が経過し、高等教育の制度が大きく変化している。アメリカで最も歴史のある名門校・ハーバード大学の最新入学データによると、アジア系学部新入生の割合が大幅に上昇する一方で、黒人新入生の割合は明確に減少した。
アジア系学生の比率が過去最高に
ハーバード大学が10月23日に発表した2029年度(Class of 2029)の新入生概要によると、アジア系学生の比率は41%に達し、前年の37%、2023年の29.8%から大きく上昇した。これは過去最高の数値である。
一方、黒人学生は新入生全体の11.5%を占め、前年より2.5ポイント、2023年比で2.6ポイント低下した。2020年と比較すると5.1ポイントの減少である。
また、ヒスパニック系またはラテン系の学生は約11%、アメリカ先住民、ハワイ先住民、太平洋諸島系の学生は合わせて約2%となっている。
ハーバード大学の入学および奨学金担当ディレクター、ウィリアム・フィッツシモンズ(William Fitzsimmons)氏は公表文で「新入生は世界各地の都市、地方、農村から集まっている」と述べ「出身や背景にかかわらず、彼らがハーバードに入学できたのは、世界をより良くする力を秘めているからである」と強調した。
最高裁判決の影響が続く
2023年、最高裁は「学生公平入学組織」(Students for Fair Admissions)の主張を認めた。同組織は、ハーバード大学がアジア系志願者に不利な選考を行っており、公民権法(Civil Rights Act)に違反していると訴えていた。判決後、全米の主要大学は、人種を考慮する入試制度の廃止を余儀なくされた。
同組織はその後、軍事教育機関に対しても働きかけを強化し、国防総省との和解に達した。その合意により、陸軍士官学校(ウェストポイント)と空軍士官学校は、人種を入学基準として考慮する制度を停止することとなった。また、沿岸警備隊士官学校に対しても同様の訴訟が提起されている。
トランプ政権による監督の強化
アメリカのトランプ大統領は就任後、複数の大統領令に署名し、公民権法に基づき、大学の教職員採用や入学における人種的優遇措置を禁止する立場を改めて明確にした。さらに、ハーバード大学などの名門校に対し、調査や是正措置を進めている。
今年8月、トランプ大統領は全米の大学に対し、人種および性別ごとの合格率、入学者数、平均GPA、SAT(学力適性試験)スコアを公開するよう求めた。この政策は、高等教育の透明化を進め「多様性・公平性・包摂(DEI)」政策に対抗する動きの一環とみられている。
SATが公平性の議論を呼ぶ
近年、多くの難関大学がSATスコアの提出を必須要件から外し、志願者の個人陳述書や短文エッセイを重視する方式へと転換している。これに対し「価値観による選別を助長するのではないか」との懸念が上がっている。
米国のシンクタンク「ゴールドウォーター研究所」(Goldwater Institute)の教育政策ディレクター、マシュー・バインバーグ(Matthew Beienburg)氏は「これらの変更は事実上、人種優先制度を維持するためのものである」と指摘する。彼は『大紀元時報』(The Epoch Times)に対し、「左派は標準化テストが人種間の不平等を助長すると見ており、それを理由に試験を廃止し、代わりに個人エッセイを推進している」と述べた。
ハーバードの国際学生は全体の15%
ハーバード大学の発表によると、今年の入学志願者は4万7893人、合格者は2003人、新入生の入学者数は1675人であった。合格率は約4.2%である。新入生のほぼ半数が授業料全額免除の対象であり、国際学生は全体の15%を占める。出身は92か国およびアメリカの全50州に及んでいる。
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