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トランプ大統領 政府による多くの企業株取得を示唆

2025/08/26
更新: 2025/08/26

米政府がインテル株を約10%取得する方針を発表。トランプ政権は半導体やAI分野に公的資本を投入し、産業の競争力回復を目指す。

8月25日、アメリカのトランプ大統領はホワイトハウスでメディアに向けて、米政府によるインテルへの新たな株式取得を評価し、今後も同様の戦略的な投資を推進する意向を表明した。大統領の発言や関係者の証言からは、アメリカ産業の強化に向けた連邦政府の本格的な企業株式保有政策への機運が鮮明に浮かび上がる。

トランプ政権は8月22日、米半導体大手インテルが連邦政府に対し、株式約10%を政府が取得することで合意したと発表。22日時点でのインテルの株価上昇にもつながった。

翌日、トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」に投稿し、「インテルとの取引は約110億ドル規模で、政府は直接の取得費用を負担していない」と強調。「私は国のために四六時中このような取引を推進している。インテルのような取引に応じた企業が成長し、アメリカがより豊かになり、多くの雇用が生まれる――これこそ我々の目指すところだ」と述べ、今後も国家利益に資する大規模投資を断行する考えを鮮明にした。

半導体産業支援と政府系ファンド設立構想

ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長も25日朝、経済番組CNBCのインタビューで、今回のインテル出資はトランプ政権の戦略の一環として「政府系ファンド(sovereign wealth fund)」設立を見据えたものだと明言。ハセット氏によれば、インテルへの出資資金は一部が半導体産業支援法(CHIPS法)に基づく補助金から、残りが将来的な安全保障関連政府支出から拠出される予定だという。政府はインテルの経営自体に介入せず、経営権の制限も設けるとされる。

今回の米政府による民間企業への直接出資について、振り返ると、2008年の金融危機後のファニーメイやフレディマック救済でも同様の形態が見られた。だが、AIや半導体といった先端分野での国家の直接的な資本参加政策は近年では極めて珍しい事例となる。ハセット氏は今後、AIや半導体分野の他の有力企業でも政府による株式取得という同様のスキームが広がる可能性を否定していない。

トランプ大統領は選挙戦でも米連邦政府による政府系ファンド設立の方針を強調。基金が創設されれば、得られた運用益から高速道路や空港のインフラ建設、医療研究や製造業振興といった「国家プロジェクト」へ資金を充てる構想だ。2025年2月にはこの基金設立に向けた大統領令にも署名している。

今回の動きの背景には、米産業の自立性・競争力回復に対する強い危機感がある。インテルはAI分野での競争力低下や業績不振に直面しており、戦略物資となる半導体の国内生産強化は安全保障上も喫緊の課題だ。米政府は企業運営には直接干渉しない意向を示すが、一方で公的資本の注入が競争環境や経済のあり方を変えるとの指摘や、市場への過度な介入を懸念する声もある。

だがトランプ大統領は、「こうした投資が米国経済・テクノロジーの発展と雇用創出の好循環をもたらす」と述べ、批判に反論した。歴史的な政策転換ともいえる今回のインテル株取得は、米政府の新たな「産業国家モデル」への挑戦の象徴として、今後も国内外で大きな注目を集めそうだ。

張婷