トランプ米大統領は20日、教育省の廃止を目指す大統領令に署名した。廃止には議会の承認を要するため、今回は教育省の規模を大規模に縮小する。
トランプ氏は20日、ホワイトハウスのイーストルームで子供たちに囲まれながら大統領に署名し、「我々はこれをできるだけ早く閉鎖するつもりだ」と表明した。署名式には、マクマホン教育長官も同席した。

大統領令には、「教育長官は、法の許す限り、教育省の閉鎖と教育の権限を各州および地域社会に返還するために必要な措置を講じること」と明記されている。また、「アメリカ国民が依存しているサービス、プログラム、給付が途切れることのないよう配慮すること」とも記されている。
署名後、リンダ・マクマホン教育長官は声明を出し、特別支援教育を受ける生徒や連邦学生ローンの利用者などに対する資金提供は継続されると強調した。
「我々は法を遵守し、議会および州の指導者と連携しながら、秩序のある責任ある形で官僚制度を解消していく」と述べた。
ホワイトハウスのレビット報道官は同日、「ペル・グラント(低所得層の学生を対象とした連邦政府の返済不要の助成金)などの主要プログラムは、引き続き連邦政府が管理する」と説明した。
一方でトランプ氏は、「ペル・グラントや障害児向けの支援など重要な機能は完全に維持するが、これらは他の省庁に移管し、それ以外の機能は廃止する」と述べた。
米教育省は1979年、保健・教育・福祉省(HEW)から独立する形で設立された。学生支援の推進や、連邦学生ローンなどの管理を担ってきた。
今回の教育省廃止に関して、トランプ氏およびホワイトハウスは、米国の学力の低迷を理由に挙げている。経済協力開発機構(OECD)加盟国との比較において、米国の生徒の成績は芳しくないという。
ホワイトハウスの声明では、「一人当たりの教育支出は245%以上増加しているにもかかわらず、学力にはほとんど改善が見られない」と指摘。「13歳児の数学・読解力のスコアは過去数十年で最低水準にあり、多くの生徒が基礎的な数学・読解力を習得できていない。米国はOECD加盟37か国中、数学で28位にとどまっている」としている。
米保守系団体アメリカ立法交流評議会(ALEC)の会長でチーフ・エコノミストのジョナサン・ウィリアムズ氏は、今回の措置について「ロナルド・レーガン元大統領が1980年代に果たせなかった教育省廃止という『未完の仕事』を遂行するものだ」と述べた。
ウィリアムズ氏は1月にホワイトハウスで行われた教育省に関する円卓会議に出席しており、「共和・民主両党の州政府から、教育政策の自治拡大を求める声が高まっている」と話す。「教育省は50年存在してきたが、実際に子供を教育したわけではない。官僚機構が州レベルでの教育改革や親の選択権拡大を阻害してきた」と批判した。
一方で、教員組合などからは強い反発の声も上がっている。
全米教育協会(NEA)のベッキー・プリングル会長は、「この措置が成功すれば、学級規模の拡大、職業訓練の削減、高等教育の費用増加、障害児支援の打ち切り、生徒の市民権保護の後退など、すべての生徒に悪影響を及ぼす」と非難した。
全米教員連盟(AFT)のランディ・ワインガーテン会長は「法廷で会いましょう」と短くコメントし、法的措置も辞さない構えを見せた。
署名式後、マクマホン長官はワインガーテン氏とはまだ法的争いについては協議していないとしつつ、「トランプ氏が子供たちから教育を奪おうとしているという主張には同意できない」と反論。「むしろ、連邦官僚制を排除し、より多くの資金を州に戻すことが狙いだ」と説明した。
また、教育省内の市民権局については、今後は司法省に移管される可能性があると述べた。同局は最近、複数の学校での反ユダヤ主義や連邦法タイトルIX違反の疑いについて調査を行っていた。
教育改正法第9編、通称タイトルIXは、教育分野における性差別を禁止し、男女平等の機会を保障することを目的とする。
「大統領令には、教育省内の各部門が今後どうなるかについて具体的な記述はない。今後、それぞれの部門をどこに移すのが最適かを検討していく」とマクマホン長官は語った。
記者が、機関の解体後に全職員がどうなるのかを長官に尋ねた。
マクマホン氏は先週、「省はすでに職員のほぼ半数を解雇し、3か月分の全額給与と福利厚生を提供している」と述べた。
「その後、公務員制度の規定に基づき、退職手当も支給されます」と彼女は付け加え、政府として教育省の職員に対して“出口戦略”を提供しようとしていると説明した。ただし、残りの職員についてどうなるのかは言及しなかった。
州への連邦資金については、マクマホン氏は「大統領の目標は『いかなる条件もつけず』に資金を提供することだ」と語った。
テキサス州のグレッグ・アボット知事は署名式の後、記者団に対し、州として公立学校への資金提供を増やすと述べた。
「まず、生徒一人あたりの資金は過去最高となる見込みです。大規模学区の教師に対しては、年間最大5500ドルの給与引き上げを行う。一方で、生徒数5千人以下の独立学区に勤務する、テキサス州農村部の教師に対しては、年間最大1万ドルの昇給となる」とアボット知事は語った。
ルイジアナ州のジェフ・ランドリー知事は20日、大紀元に対し、連邦資金がブロック・グラント(用途自由な一括交付金)として各州に送られることに期待を示した。これにより、「不要な制約がなくなり、最も効果的な形で活用できる」と述べた。
私は、大統領がそれを我々に委ねてくれる機会を与えることに前向きである。そして、それによってこの国および各州における教育の進路を、いかに変革できるかを見極めたい」とランドリー知事は語った。
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