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USAID職員に記録破棄の指示 裁判所への申し立てで発覚

2025/03/12
更新: 2025/03/12

アメリカ国際開発庁(USAID)の一部職員が、機密保管庫を空にし、記録を破棄するよう指示されていたことが、3月11日に労働組合によって裁判所に提出された訴状で明らかになった。

Democracy ForwardとPublic Citizen Litigation Groupは、USAID職員の労働組合を代表し、庁内の証拠の破棄を阻止するため、緊急の差し止め命令(TRO)を裁判所に申し立てた。

申し立てには、USAIDの事務局長代行であるエリカ・カー氏から職員に送られたメールのスクリーンショットが添付されている。そのメールでは、職員に対し、12日の午前9時30分から、ロナルド・レーガン・ビルにある同機関の事務所から「機密保管庫および人事関連文書」を撤去するよう指示している。

カー氏はメールで、「まず可能な限り多くの文書をシュレッダーにかけ、シュレッダーが使用できなくなったり休ませる必要がある場合に備えて、焼却用の袋を確保しておくように」と支持した。破棄対象の文書の内容は不明だ。

連邦記録法(FRA)違反の可能性

労働組合は、カー氏の指示が、連邦機関に内部記録の保存を義務付ける連邦記録法(FRA)に違反し、トランプ政権によるUSAID解体を阻止するための訴訟に関連する文書が破棄される可能性があると主張した。

「この指示は、大量の記録を短期間で破棄することを示唆しており、FRAが定める保存義務や進行中の訴訟への影響を適切に考慮した上で判断されたとは考えにくい」と労働組合側は主張している。

申し立てによると、組合側はトランプ政権に対し、USAIDでの文書破棄について情報提供を求めたが、「現在調査中」と回答したという。

組合側は、訴訟が進行している間に記録が破棄されることを防ぐため、裁判所に介入を求めた。

ホワイトハウスの説明 「古い書類の処分」

ホワイトハウスのケリー副報道官によると、このメールは約36人の職員に送信され、破棄対象となっているのは古い書類だったという。

ケリー氏はXで、「破棄された文書の大部分は古いもので、主に他機関から提供された内容が含まれていた。原本は機密コンピュータシステム内に保存されている」と述べた。

また、USAIDのオフィスはまもなくアメリカ税関・国境警備局(CBP)が利用する予定だと明らかにした。

アメリカ外交公務員協会(AFSA)も懸念を表明

裁判所に申し立てを行った労働組合の一つであるアメリカ外交公務員協会(AFSA)は、USAIDでの文書裁断の報告に強い懸念を示し、同庁の指導部に対し、連邦記録保存法を完全に遵守するよう求めた。

AFSAは声明で「AFSAはこの状況を注意深く監視しており、USAIDの指導部に対し、この指示の目的と背景について直ちに明確に説明するよう求める」と述べた。

また、AFSA、アメリカ政府労働組合連盟(AFGE)、国際NGOのオックスファム・アメリカは、トランプ大統領によるUSAIDの解体が憲法および連邦法に違反するとして、3月10日にその阻止を求める別の申し立てを裁判所に提出した。

USAIDの縮小と資金凍結

USAIDは1961年、ジョン・F・ケネディ元大統領によって「対外援助法」に基づき設立した独立機関であり、アメリカの対外援助や開発援助の実施を担っている。

しかし、2025年1月20日にトランプ大統領が就任すると、90日間の外国援助・開発資金の凍結を発表した。これは、「アメリカ・ファースト」政策の一環として、アメリカの国益に適合するかどうかを見直すためとされた。

この資金凍結に対し、労働組合や議員らは違憲だと主張し、複数の訴訟を起こしている。

USAID長官代理のルビオ国務長官は、3月10日にUSAIDの契約の約83%(5200件)を打ち切ったと発表した。

ルビオ氏は、「これらの契約は、アメリカの中核的な国益に資さないばかりか、場合によっては損害を与えた」と説明した。

一方で、残りの約1千件の契約は継続する。

USAIDのウェブサイト閉鎖、職員の業務停止

トランプ大統領の大統領令により、USAIDのウェブサイトは閉鎖され、数千人の職員に業務停止命令が出された。例外として、「重要任務を担当する職員」「中核的な指導層」「特別に指定されたプログラムに関わる職員」のみが業務を継続している。

米国とアジア太平洋地域のニュースを担当するフリーライター。