セルビア、複数の法輪功学習者を拘束 習近平訪問に合わせて

2024/05/09
更新: 2024/05/10

セルビア当局は7日、中国共産党のトップ習近平の訪問に先立ち、複数の法輪功学習者を拘束した。習近平の出国後に釈放されたことから、中国共産党の圧力によるものとみられる。

セルビア当局が動いたのは、ロシアのプーチン大統領と習近平の会談前にロシア当局が5軒の家宅捜索を行い、4人の法輪功学習者を逮捕した、数日後だ。

拘束された法輪功学習者デジャン・マルコビッチ氏によるとセルビア当局は、法輪功学習者6人とその親族2人を拘束し、約24時間監禁した。中には80代の女性も含まれていた。現在は釈放されている。

拘束令状には、「国際的な保護下にある人物に対する深刻な脅威 」をもたらした疑いがあると記されていた。しかし、エポックタイムズが入手したファイルによれば、習近平が出国した後、拘束された法輪功学習者やその親族に、「脅威はもう存在しない」という文書が手渡されたという。

マルコビッチ氏はエポックタイムズの取材に、10年前に中国で犬肉を食べることに反対する運動をしていた菜食主義者の活動家と同じ監房に収容されていたと語った。「つまり中国に不利なことを言った者は誰でも、安全上の理由で拘留される」と述べ、今回の拘束は中国共産党の命令によるものだと示唆した。

セルビア当局は今回の拘束について公に声明は出していない。エポックタイムズはセルビア内務省にコメントを求めたが、本記事掲載までに返答は得られなかった。

緊密な関係

セルビアは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の参加国で、中国からの数十億ドルの投資に大きく依存している。

西バルカン諸国担当のガブリエル・エスコバル米特使は、習近平の訪問に関する記者会見で、「われわれは、すべてのパートナーとすべての友好国に対し、欧州における中国のアジェンダと欧州共同体に関する中国のアジェンダを十分に認識するよう注意を促している」と述べていた。

セルビア当局は習主席を歓迎するため、セルビア全土から何千人もの人をバスに乗せ、セルビア宮殿の前で「中国、セルビア」と歓呼し、旗を振るなど、盛大な歓迎式典を行った。空港近くの高層ビルには数階分の高さの中国国旗が、幹線道路沿いや繁華街には小さな中国国旗を掲げた。

習近平とセルビアのブチッチ大統領の共同記者会見では、自由貿易協定(FTA)を7月に正式発効する考えを表明。ブチッチ氏はバルコニーから観衆に向かって、習近平を「鉄壁の友人」と呼び、両国の距離を縮める可能性を秘めた習近平の訪問を「歴史的」と称賛した。

法輪大法情報センターのポークスマンである張爾平(ちょうにへい)氏はエポックタイムズ紙に「かつて共産主義体制から脱却した自国の歴史と記録に誇りを抱いていた国が、今や中国共産党を受け入れるとは嘆かわしいことだ」と語った。

「この卑怯な行為は、国内の弾圧を海外に輸出している中国共産党が明らかに扇動したものだ」と指摘した。

中国共産党の圧力

1999年、当時の国家主席江沢民が、法輪功への迫害を開始した。今日に至るまで、中国共産党は法輪功の撲滅を優先事項としており、多くの学習者が不当な逮捕や拷問、臓器狩りなどの非人道的な迫害に遭っている。

中国共産党は一貫して、習近平などの高官が海外に赴く際、同党の否定的な情報をもみ消すために、外交圧力やその他の強制的な手段を行使してきた。

習近平が2015年にワシントンを訪問した際には、法輪功の活動に反対するようニューヨークの中国領事館は、数百人のデモ隊に資金を提供した。2023年11月にサンフランシスコで開催された米中首脳会談の際にも、同じような光景が繰り広げられ、中国の工作員と疑われる人物が、中国国内での弾圧を批判するデモ参加者を襲撃した。

中国共産党高官の訪問を前に、セルビアで法輪功学習者が拘束されたのは今回が初めてではない。2014年、セルビアの警察は、李克強首相(当時)と中欧・東欧諸国との首脳会談を前に、中国における国家主導の臓器狩りの停止を求める平和的なデモを計画していた法輪功学習者11人を逮捕した。

今回の拘束は、セルビアがユーゴスラビア社会主義連邦共和国だった頃を彷彿とさせるもので、当局は「予防拘禁」と呼ばれる方法で同局が疑わしいと判断した人物を標的にしていた、とマルコビッチ氏は言う。

「これは今日、中国でも行われていることだ。EU加盟候補国であるセルビアでは、このようなことが起こるべきではない。しかし、セルビアと中国の密接な関係によって、このようなことが起きた」という。

また、7日に拘束された際、警察は「ただ命令に従っただけだ」と明言したという。

ベオグラード警察のトップは「君たちが、善良な人間であることは知っている。君たちに質問するつもりはない。質問する必要もはない。しかし、地方検事は48時間拘留するよう要求してきた」とマルコビッチ氏に言ったという。

マルコビッチ氏によると、学習者たちはこの拘束について、政府を訴えるつもりだという。セルビアの法輪功学習者はこれまでにも、政府を相手取って2件の訴訟を起こしており、1件は2014年の逮捕をめぐるもので、セルビアの最高裁判所で勝訴した。

彼は「今回も政府を提訴し、必ず勝訴すると確信している」と述べた。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。
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