プレミアム報道 壊れたソーラーパネルや風力タービンのブレードの山はどこに行き着くのか?

【プレミアム報道】気候アジェンダで見過ごされるグリーンエネルギー廃棄物(上)

2024/01/28
更新: 2024/01/28

ソーラーパネルや風力タービンのブレードから積み上がる廃棄物の量は、トン単位で計る。なお、グリーンエネルギー産業はまだ始まったばかりだ。

米国では、使用済みのソーラーパネルのほとんどが埋立地行きとなっている。第一世代や第二世代のパネルの多くは、予想された30年の寿命よりはるかに早く性能が低下している。

「Science Direct(サイエンスダイレクト)」誌に掲載された研究は、2030~60年の間に廃棄されるパネルの量は980万トンと推定している。

ソーラーパネルを米国の埋立地に捨てるには、約1~2ドルかかる。PVマガジンが報じた試算によると、同じパネルをリサイクルする場合、そのコストは20~30ドルに膨れ上がる。

現在、米国では年間約7千枚のブレードが廃棄されている。カーボン・リバースが受け取るガラス繊維廃棄物の中で、風力タービンのブレードは最も回収しにくいものだ。

ブレードを捨てるのは並大抵のことではない。米国エネルギー省によれば、風力タービンのブレード1本の長さは200フィート(約60メートル)以上、ボーイング747の翼幅よりも長くなる。洋上風力のリグはさらに大きい。

テネシー州に拠点を置く先端材料のリサイクルセンターであるカーボン・リバースの最高戦略責任者・デビッド・モーガン氏によると、現在、米国では年間約7千枚のブレードが廃棄されている。カーボン・リバースが受け取るガラス繊維廃棄物の中で、風力タービンのブレードは最も回収しにくいものだ。

「とても丈夫で頑丈な素材だ。大型の風力タービンのブレード、旅行用トレーラー、ボートの外板、その他の廃棄物は、クリーンで高品質なガラス繊維に変換することができる。

2023年10月4日、テキサス州スウィートウォーターのスウィートウォーター墓地の隣の畑で、廃棄された風力タービンのブレードが上空から撮影されている(Brandon Bell/Getty Images)

カーボン・リバースのウェブサイトには、「大型風力タービンのブレード、旅行用トレーラー、ボートの船体、その他の廃棄物の流れは、クリーンで高品質のガラス繊維に変換することができる。ガラス繊維は次の車、ボート、タービンのブレードに再組み入れすることができる」と書かれている。

モーガン氏は、真に「グリーン」なソリューションといえば、「循環経済(サーキュラー・エコノミー)」が不可欠だと述べた。これは基本的に、可能な限り持続可能な方法で生産を続けるために、素材の再利用、修理、再生を優先するビジネスモデルだ。

再生可能な廃棄物はインフラの問題だけでなく、法律の問題もかかっている。

同氏によると、「現在、風力発電のブレードを埋立処分することはできるが、州によって異る」。

風力発電を支援する企業、特にシェル・グローバルやゼネラル・エレクトリックといった化石燃料大手とつながりのある企業の既存計画は、真に持続可能性があるかどうか、批評家たちは疑念を抱いている。

トランプ前政権下の米国環境保護庁(EPA)は、再生可能エネルギー廃棄物の増加に伴う問題を指摘した。

アンドリュー・ウィーラー前EPA長官は指摘した。「ソーラーパネル、EV用バッテリー、風車のようないわゆるグリーン・テクノロジーは、使用済み製品の管理戦略がなければ、最終的には従来の商品と同じように地球と経済に意図しない負担をかけることになる」。

拡大する産業

いわゆる再生可能エネルギー産業が拡大するにつれ、(主にバイデン政権による巨額の補助金によって)バックエンドの廃棄物も増えている。

米国政府機関であるエネルギー情報局(EIA)が12月12日に発表した報告書によると、太陽光発電容量は2024年に38%以上増加、風力発電容量は4.4%増加すると予測されている。

2017年10月2日、プエルトリコのウマカオにあるハリケーン・マリアの余波で太陽光発電所に散乱したソーラーパネルの破片が見られる(Ricardo Arduengo/AFP via Getty Images)

再生可能エネルギーシステムの導入が著しく急増しているにもかかわらず、2022年の米国の発電量は、約60%が石炭、天然ガス、石油、他のガスなどの化石燃料によるものだった。再生可能エネルギーが約21%を占め、原子力エネルギーが18%を占めた。さらに、小規模な太陽光発電システムによるものもある。

ソーラーパネルの寿命は最長30年。当然のことながら、一部の環境保護団体は警鐘を鳴らしている。

カリフォルニアに拠点を置く団体・Environmental Progressは、「太陽光発電と原子力発電が今後25年間に、2016年に原子力発電が生産したのと同じ量の電力を生産し、廃棄物がサッカー場に積み上げられた場合、核廃棄物はピサの斜塔の高さに達するだろう」と指摘した。

「太陽光発電設備の廃棄物は世界最高峰エベレストの2倍の高さに達するだろう」

Chemical and Engineering Newsが発表した2022年の分析によると、廃棄した風力タービンブレードの数は、今後5年間で年間9千枚に達すると予想されている。

モーガン氏は、「今のところ、廃棄物の流入に対応しており、テキサス州に大規模な施設を建設するなど、事業を拡大している」と述べた。カーボン・リバースはまた、ガラス繊維や航空宇宙部品など、「複合材ベース」のあらゆるものに業務範囲を広げている。

電子廃棄物

廃棄物のもうひとつの分野である電気電子機器廃棄物(通称E-waste)は、急激な勢いで増加している。ソーラーパネルや電気自動車(EV)のバッテリーなど再生可能なものも含まれているE-wasteは、世界で最も急速に増加している固形廃棄物の流れだ。

リサイクルされているのはごく一部である。

今年発表された2019年のある分析によると、世界で5360万トンの電子機器廃棄物のうち、リサイクルされているのはギリギリ17%だ。

「プラスチックは廃棄物のブギーマンだと思われているが……E-wasteはまだ増え続けている」。

リサイクル会社ERIの広報担当副社長、ポール・ウィリアムズ氏はエポックタイムズ紙にこう語った。

ウィリアムズ氏によると、ERIは電子機器に関して、「軍用」レベルのデータ破壊を維持している。

プライバシー保護は、電子廃棄物の大きな懸念事項である。

2016年10月4日、ニューヨーク市ブルックリンのサンセットパーク地区のウォーターフロントにある自動車スクラップ置き場のそばを歩く男性(Spencer Platt/Getty Images)

同氏は「環境問題や人権問題だけでなく、サイバーセキュリティの問題でもある。今日、多くの技術には個人情報が含まれている」と指摘した。

電子廃棄物処理の初期には、過失のある企業が電子廃棄物の取り扱いを誤ったため、データ盗難の可能性があった。

「我々は、このような悪徳業者が発展途上国にこのような製品を出荷していることを発見した。データの存在が大きなプライバシーの課題となっている」

EV(電気自動車)に対しても、データセキュリティ対策が必要だ。不安定なリスクがあるバッテリーだけではなく、EVの車載コンピューターが寿命を迎えた場合にも備えなければならない。

「自動車の場合、取得されるデータの種類が非常に個人的なものだから、特に恐ろしいのだ。あなたのルート、体重、車の座席に座っている人の体格までわかってしまう。考えてみると、ちょっと怖いね」。

ERIはまだソーラーパネルやEV関連のバッテリー廃棄物をたくさん見ているわけではないが、ウィリアムズ氏はその準備はできていると述べた。

「最終的には私たちのところに来るだろう。私たちはどんな電子廃棄物も断りらない」

(つづく)

南アメリカを拠点とする記者です。主にラテンアメリカに関する問題をカバーしています。