【花ごよみ】コスモス

2022/10/23
更新: 2022/10/21

漢字の「秋桜」を無理やり「コスモス」と読ませるとは、いやはや日本語は、なんと大胆な言語かと思う。

日本語の「当て字」は、文字では読まず、イメージで読む。表意文字である漢字は、そのイメージを風呂敷でゆるやかに包むようにまとめるのだ。

麦酒(ビール)、洋袴(ズボン)、浪漫(ロマン)などは古典的な当て字だが、日本語を学ぶ中華圏の学生は、これには困るらしい。ましてや昨今、漢字の原義をほとんど無視して子供につけられるキラキラネームは、日本人でも知らなければ全く読めない。

では、秋桜(コスモス)がいつ頃から使われたかと言うと、はっきりしている。
昭和52年(1977)に山口百恵さんが歌って大ヒットした曲名が、これであった。

作詞・作曲は、さだまさしさん。男女の恋愛歌がほとんどであった歌謡曲のなかで、嫁ぐ娘からみた母親の深い愛情をうたった「秋桜」の歌詞とメロディは、45年前の日本人の心を打ち、今でも記憶されている。

当時18歳の百恵さんに、さださんは「百恵ちゃんも、いつかこの歌詞が分かる時がくるよ」といって完成した曲を渡したという。その山口百恵さんは、21歳で俳優の三浦友和さんと結婚。最後の歌が終わると、ステージ上にマイクを置いて芸能界を去った。

「ありがとうの言葉を噛みしめながら、生きてみます、私なりに」。ご子息たちが今、芸能界で活躍しているという。百恵さんの歌う名曲「秋桜」は、見事に完結したと言ってよい。
 

鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。