中国江蘇省党委員会と省政府は23日、同省農村部で見つかった首を鎖でつながれた女性に関する調査報告を発表した。女性が人身売買や虐待の被害者であると断定し、地元関係者17人を処分した。いっぽう、調査報告に複数の疑問点が残り、世論の反発が高まる一方だ。
長男の生年月日を改ざん
5回目となる同調査報告は、女性は南西部の雲南省出身で1977年5月13日生まれ、現在44歳と主張。2回の人身売買を経て98年6月以降、豊県在住の男性である夫と共同生活を始め、子ども8人を育てている。精神疾患を患っていることを確認したという。
調査報告は、8人の子どものうち、長男は1999年7月生まれとしている。11年後の2010年から、「避妊の失敗」で女性はほぼ1年おきに子どもを出産している。
報告書は、長男の生年月日を改ざんした疑惑が浮上している。
中国ネットユーザーがSNS上に投稿した動画のなかで、夫は長男は香港が中国に返還された1997年に生まれたから、「香港」という名前を付けたと自ら話した。
改ざんは「女性が四川省で行方不明となった当時13歳の李瑩さん」との指摘を否定するためだとみられる。
調査報告は「女性は李瑩さんではない」と結論づけた。李さんの母親と女性に対して複数の機関がDNA鑑定を行った結果、生物学的親子関係の可能性を完全に排除したとした。
チベット自治区の駐屯軍人だった李さんの父親は娘が行方不明になってから悲しみに暮れ、まもなく亡くなった。当局は軍人の不満を引き起こすことを避けたい思惑で、「女性は李瑩ではない」との主張を貫いているとネットユーザーが指摘している。
雲南省の女性は鎖の女性と容姿が似ていないという指摘について、報告書は「肌の老化、毛髪の減少、脂肪組織の液体化及び歯の欠落」などの理由が考えられると、2人が同一人物であることを主張した。
「4日間に4600人を調査」
現在、江蘇省当局の調査自体に疑惑の目が向けられている。
省当局は17日に調査チームを立ち上げ、23日報告を行った。調査チームは江蘇省徐州市だけでなく、河南省と雲南省にも行き、各地で4600人余りの住民に聞き取りを行ったという。
「17日にチームを立ち上げ、22日で調査終了、23日には調査発表。実質的な調査期間が4日(移動に1日を使ったとして)で、チームメンバーが8人で計算すると、1人当たり毎日143人に聞き取りしたことになる。住民1人への聞き取りが10分間と考えると、調査チームのメンバーの勤務時間は毎日少なくとも23時間…」
「4600人に聞き取り調査したなら、調査期間を6日と考えれば、1日あたり766人に聞き取りを行ったことになる。6日間で資料1000件を調べたとしたら、1日当たり166件の資料を読むことになる。調査チームの皆さん、どうやってやり遂げたのですか?」と調査が現実的に不可能だとネットユーザーは批判している。
地元政府はこれまで4回の調査結果を発表したが、その内容が二転三転し、市民の不信感を増幅させた。
江蘇省は世論を沈静化するために夫に加え、人身売買容疑で別の2人を22日に正式に逮捕したと発表した。女性の人身売買をめぐっては、さらに容疑者6人の捜査が続いている。また、地元当局のトップを含む17人が処分され、うち8人は懲戒免職となった。
ただ、「まったく似てない2人が同一人物と言い張る当局は市民をバカにしているとしか思えない」と批判が噴出し、今回の報告書は市民の怒りに油を注ぐ形となった。
(翻訳編集・張哲)