「鎖の母」で注目の徐州市豊県地裁、人身売買の被害女性の離婚を認めず

2022/02/20
更新: 2022/02/20

江蘇省徐州市豊県の裁判所はこれまで、人身売買などの被害女性の離婚訴訟を却下していたことが明らかになった。また、同県では先月、首を鎖でつながれている女性の存在が発覚し、注目の的となっている。

中国版ツイッター、微博(ウェイボー)では15日、法律関連の話題を取り上げる人気ブロガー「普法達人張三」は、裁判記録サイト「裁判文書網」で「離婚、人身売買、誘拐」などのキーワードで判決主文を検索した結果、徐州市および豊県で女性住民の起こした離婚訴訟が複数あったことがわかった。誘拐された女性らは、犯罪組織に今の夫に売られ、夫と仲たがいしたとして、裁判所に判決離婚を求めた。

微博ユーザー「普法達人張三」は裁判文書網で、豊県地裁での判決離婚に関する裁判記録を集めた(スクリーンショット)

中国紙・中国経済週刊も15日、豊県人民法院(地裁)が人身売買の被害女性に対して判決離婚を拒否したと報じた。

報道は、裁判文書網に掲載されている2014年と21年の判例を挙げた。それによると、2014年、同県の男性住民に売られた四川省出身の女性は「夫婦仲が悪く、5年前に別居したが、今は夫婦関係が完全に破綻している」とし、離婚訴訟を起こした。

しかし、地裁は人身売買という犯罪行為に言及せず、原告と被告は「結婚手続きを行っていなかったが、すでに婚姻の事実がある」として、「仲直りの可能性が残っている」と離婚を認めなかった。

同地裁は昨年も同様の判決を下した。20年以上前に同県に売られた四川省重慶市出身の女性は、夫から日常的に暴行を受けているとして、離婚訴訟を起こしたが、認められなかった。

いっぽう、2020年6月30日に公開された裁判記録では、豊県地裁は、犯罪組織から買った女性を13年に「転売」した罪で、同県に住む夫婦に対してそれぞれ5年と3年の懲役刑を言い渡した。夫婦は12年、息子の結婚相手として、精神疾患を抱える女性を3万元(約55万円)で買ったという。地裁は妻に3年間の執行猶予を付けた。

中国の刑法は、誘拐の実行犯に対して「5年以上、10年以下の懲役刑に処する」と規定するが、買い手に対して「3年以下の懲役刑、または拘留などに処する」と処罰が軽い。

中国の民間研究機関、中民社会救助研究院などが発表した「中国行方不明人口白書2020」によれば、同年には毎日、延べ2739人が行方不明になっていた。1年間の行方不明者数は延べ100万人。

中国の浙江文芸出版社が発行した人身販売調査報告書では、1986~89年まで、豊県を含む徐州市の6つの県に4万8100人の女性が売られてきた。1990年代、同市のタクシー運転手の約半分が人身売買に関わっていたという。

豊県では先月、子ども8人を産み、首に鎖を巻かれて夫に監禁されていた女性の存在が明るみに出た。当局の二転三転する説明は不信を募らせ、真相究明を求める声が高まる一方だ。

一部のネットユーザーは、過去の報道や警察当局の発表を掘り出して、豊県で近年、川や井戸で溺死した女性の遺体が多く発見されたことに驚きの声を上げた。ネットユーザーらは、女性らは誘拐された者で、虐待に耐えられず自殺を図ったのではないかと推測した。

 

中国のネットユーザーらは近年、豊県で川や井戸で溺死した女性が多くいると指摘した(スクリーンショット)

 

(翻訳編集・張哲)