ロがウクライナ侵攻に十分な兵力集結と米警戒、退避勧告相次ぐ

2022/02/12
更新: 2022/02/12

[モスクワ/ワシントン/ブリュッセル 11日 ロイター] – 米政府は11日、ロシアはウクライナ侵攻に十分な兵力を集結させたと発表した。また、ロシア側が西側諸国に対する強硬姿勢を一段と強めたことを受け、ウクライナ国内にいる米国民に対し24─48時間以内に退避するよう呼び掛けた。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は11日、ロシアによるウクライナ侵攻はいつ開始されてもおかしくはないと指摘。おそらく空爆で始まるとの見解を示した。

その上で、プーチン大統領は今月20日の北京冬季五輪閉幕前にも侵攻を命令する可能性があり、首都キエフに対する急襲も考えられるとの見方を示した。

同補佐官によると、プーチン大統領が侵攻開始の命令を発出したかどうかは不明。また、バイデン大統領がプーチン大統領との電話会談を行うことを期待していると語った。

ホワイトハウス当局者およびロシア通信(RIA)によると、プーチン大統領は12日に米国のバイデン大統領と電話会談を行う。また、タス通信はプーチン大統領がフランスのマクロン大統領とも12日に電話会談を行うと報じている。

こうした中、匿名の当局者4人がロイターに明らかにしたところによると、米国は数日中に、3000人の部隊をポーランドに追加で派遣する方針。ロシアによるウクライナ再侵攻に備え、東欧の米軍を増強する。

新たな派兵は先に派兵待機とした8500人、ポーランドやルーマニアに展開すると発表した約3000人に追加して実施され、来週までにポーランドに到着する予定とした。

これに先立ち、米企業の商業衛星による画像から、ロシアとウクライナの国境付近の複数の拠点でロシア軍が新たに配備されていることが確認された。

また、バイデン大統領はこの日、大西洋各国の首脳と電話会談を実施。ホワイトハウスによると、バイデン大統領はこの電話会談で、ロシアがウクライナ周辺で軍事力を増強していることへの懸念を共有し、危機の外交的解決を図る方針で一致したという。

ロシア外務省は、西側諸国はメディアを活用して虚偽の情報を流し、自身の攻撃的な行動から注意をそらせようとしているとの見解を示した。

<壊滅的かつ破壊的>

ジョンソン英首相はバイデン大統領主催の電話会談で、欧州の安全保障を巡る懸念を表明。英首相府によると、ジョンソン首相は「ロシアがウクライナに侵攻するという壊滅的かつ破壊的な決断を下した場合、重い経済制裁のパッケージを用意する」必要性を強調したという。

ロシアとウクライナとの間の緊張が高まる中、英国やオランダのほか、ノルウェー、ラトビアなどは11日、自国民に対しウクライナからの退避を勧告。日本の外務省も11日、ウクライナの危険情報を最高度の4に引き上げ、滞在する邦人に直ちに退避するよう勧告した。

一方、欧州委員会はウクライナから職員を退避させる措置は実施していないとした。

ロシア政府は、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)による安全保障に関する要求への回答は「敬意に欠けている」とした。

関係筋によると、バイデン大統領は10日夜、ホワイトハウスのシチュエーションルームで国家安全保障顧問と会談し、ウクライナ問題について協議。ロシアは軍艦6隻を黒海に差し向けるなど態度を硬化させており、米政府関係者は危機が臨界点に達しつつあると考えているという。

ブリンケン米国務長官は、侵攻がいつ始まってもおかしくはないとし、「五輪開催中も含まれる」と言及。「ウクライナ国境に到着した新しい軍隊を含め、ロシアが激化する非常に厄介な兆候を見続けている」と語った。

ウクライナ情勢の一段の緊迫化を受け、米国株は引けにかけて下げ幅を拡大。S&P総合500種は約1.9%安となった。一方、金と原油は上昇。ロシアの通貨ルーブルは約2年ぶりの大幅な下げとなった。

Reuters