カンボジア南部にあるリアム海軍基地の沖合に、水深を深くする浚渫船が確認されている。中国の資金提供を受けて改修が進む同基地は南シナ海のタイランド湾に面する。中国の大型軍艦が寄港可能になれば、地域の領有権問題や安全保障のバランスが崩れる恐れがある。
米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は21日、カンボジア政府が今月発表した写真や商業衛星画像には、浚渫船が写っていると公式ウェブサイトで報告した。「リアム基地は水深が浅く、小型の巡視船に利用が限られている。深海港ができればカンボジアや中国(共産党)の海軍にとってより便利な基地になる」と分析した。
かねて米国とオーストラリアが支援したリアム基地に、米国防総省は2019年に修復工事を申し出たがカンボジア当局は拒否。いっぽう、基地の新たなインフラ建設支援をする中国に対して、基地を30年利用可能にする秘密協定に当局は調印したという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が同年7月に報じた。
ティア・バン国防相は昨年6月、カンボジアメディアに対して「中国共産党はリアム海軍基地の近代化と拡張を支援するが、その施設を使用できるのは中国一国だけではない」と述べた。
「建設活動は透明性欠く」米報道官
CSISの一部門であるアジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)によると、16日撮影の衛星画像には2隻の浚渫船と引き上げた土砂を積む大型荷船が写っている。船は13日から15日までにリアム基地付近に到着し、そのまま留まっているという。
バン国防相が18日にリアム基地を訪問した際に撮影した写真にも、浚渫船の姿が映り込んでいる。写真は国防相がフェイスブックに投稿した。
報告書によると、昨年秋以降、陸上での工事が続いており、基地の西南部にある複数のエリアで整地が行われた。「基地の大規模なインフラ整備に向けた準備が進む可能性がある」とAMTIは推察を示した。
在カンボジア米国大使館のチャド・ローデマイアー報道官は昨年10月、海軍基地施設の使用目的について懸念を口にした。「リアム軍事基地プロジェクトの意図、性質および範囲、さらに海軍基地の使用意図などの懸念を引き起こす中国軍の役割について完全な透明性をカンボジアに求めている」とボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた。
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