2021年8月、特に中国の金属業部門と鉱業部門における事業運営に関連して人権侵害が高確率で確認されたことを示す報告書が発表されたことで、責任ある対外投資国家として外面を取り繕う中国政策の先行きに不安が漂う。
国際的な非政府組織であるビジネス・人権資料センター(BHRRC/Business & Human Rights Resource Centre)の報告書には、2013年から2020年の間に海外事業を行った中国企業に関連する679件の人権侵害容疑が指摘されている。
リスクが最も高いとされた金属業と鉱業では全体の35%を占める236件の容疑が記録された。リスクの高い中国の海外事業国としては、世界第2位の銅生産国であるペルーおよび錫と希土類鉱物の主要供給国である中国隣国のミャンマーが挙げられている。
世界最大の金属消費国である中国には国内需要を満たすだけの十分な資源がないことから、同国政府は海外での資産購入により供給を確保することを企業に奨励している。
中国はまた、気候目標の達成を目指してグリーンインフライニシアチブを構築することを誓約することで、再生可能エネルギーの取り組みも拡大している。
同報告書には、「中国の海外鉱業事業に関する容疑件数の3分の1以上は、中南米とパプアニューギニア(PNG)における現地企業と中国政府支援の大規模な多国籍鉱業企業との間で長期にわたり発生している紛争に関連している」と記されている。 複数の中国国営企業がパプアニューギニアで金、ニッケル、コバルトの生産に携わっている。
同報告書には、中国金属・鉱物・化学品輸出入業者商工会議所(CCCMC)による「積極的な取り組み」にも関わらず発生する中国企業のサプライチェーンのデューデリジェンス問題が示されている。
中国金属・鉱物・化学品輸出入業者商工会議所開発部門の孫立会(Sun Lihui)主任によると、多くの中国企業は優れた人権政策を施行しているが、人権政策を最も優先させる必要がある際に遵守を徹底できない企業が存在する。
孫主任は、「一部の企業は懲戒処分のみを重視し、サプライチェーン内の企業に訓練や指導を提供することを怠っている」と説明している。 容疑件数が152件に上った建設部門が鉱業部門に次いで第2位に挙がっている。これには中国が手がけたラオス高速鉄道プロジェクトに関連して発生した生計の喪失が含まれる。
同報告書によると、それぞれ118件と87件の容疑件数が確認された化石燃料部門と再生可能エネルギー部門にも批判の目が向けられており、再生可能エネルギーに関する苦情の大部分が水力発電事業に関連するものであった。 人権侵害が最も高いとされた国は、全分野を通して算出される容疑レーティングが97を記録したミャンマーである。
(Indo-Pacific Defence Forum)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。