英医学誌「ランセット」のウイルス起源に関するCOVID-19委員会は、同委員会のメンバーで動物学者のピーター・ダザック(Peter Daszak)氏を除名したことを発表した。ウイルスの起源調査をめぐって疑惑の渦中にある武漢ウイルス研究所との利益関係を開示しなかったためだという。
COVID-19委員会は、「国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(United Nations Sustainable Development Solutions Network)」組織によって設置された。
ウイルスの実験室流出は「陰謀説」と強く非難
同誌は21日、ダザック氏が昨年、「COVID-19の実験室流出説」に反対する声明に署名したが、医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors )の要求に従い、声明に関する利益相反の有無を開示しなかったと指摘した。
ダザック氏を含む27人の科学者は「COVID-19と闘う中国の科学者、公衆衛生専門家、医療専門家を支持する声明」に署名した。
声明の中で、「我々は一致団結して、COVID-19の非自然な起源を暗示する陰謀説を強く非難する」と主張した。同声明は、ウイルスの発生初期において、最も影響力のある文書の一つとなった。また、ウイルスの起源に関する議論にも影響を与えた。
米・知る権利(US RTK)が入手した電子メールから、ダザック氏が声明の主な起草者であることを確認した。
同声明の署名者は全員、「利益相反はない」と主張しているが、ダザック氏は武漢ウイルス研究所のコウモリコロナウイルスの研究に資金提供していた。それに加え、過去15年間、武漢ウイルス研究所と共同で20本以上の論文を発表していたと仏紙「ル・モンド(Le Monde)」などが報じた。
ランセットは21日、同声明に署名した27人全員に利益相反の有無の再確認を求めた。ダザック氏は「報酬の全額は、所属するNGO『エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance)』の賃金として支払われている」とする訂正声明を発表した。
武漢ウイルス研究所に資金提供
米ニューヨークを拠点とする「エコヘルス・アライアンス」は、武漢ウイルス研究所と提携してコロナウイルスの研究を行っている。両者の間には11年に及ぶ提携関係があるという。
同NGOは武漢ウイルス研究所が行う「機能獲得(gain-of-function)」研究を支持し、米連邦資金を提供した。
2019年末、同研究所で中共ウイルス(新型コロナウイルス)の最初の症例が発見された。
「エコヘルス・アライアンス」はかつて、米感染症専門家であるアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)氏が率いる米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から資金370万ドルを受け取った。そのうち少なくとも60万ドルは武漢ウイルス研究所に割り当てられた。
病原体の遺伝子を操作して機能を付加し、感染力がどう高まるかを分析する「機能獲得研究」は感染力の高い病原体を生み出す恐れがある。研究所から流出してパンデミックを引き起こすリスクもある。
ダザック氏は武漢入りしたWHO調査団のメンバーでもあった。中国問題の専門家である横河氏は、「ダサック氏は中国の利害関係者であるため、調査を辞退すべきだった。しかし、それでもWHOが彼をチームメンバーに任命したのは、中国と一緒に芝居を演じるためだ」と指摘した。
過去数週間、中共ウイルスの起源に関する調査を求める国際世論が高まっている。また、ウイルスが武漢ウイルス研究所から漏洩した説も注目を集めている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5月23日、武漢ウイルス研究所の研究者3人が2019年11月、病院で治療が必要なほど体調不良に陥ったことが、米情報機関の未公開報告書で明らかになったと報じた。
バイデン米大統領は5月26日、情報機関に対して中共ウイルスの起源をめぐる調査を強化し、90日以内に自身に報告するよう命じた。
(翻訳編集・李凌)
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