美容や健康に良いとされるプラセンタ(ヒト胎盤エキス)。中国当局は2005年にヒト胎盤(以下、胎盤)の取引を禁止したが、需要が多く収益性が高いことから、闇取引が横行している。
3月15日付の澎湃新聞によると、悪質な業者が病院や医療廃棄物処理場、時には葬儀社から胎盤を大量に購入し、漢方薬市場向けのプラセンタ製品に加工している。安徽省の毫州市、江蘇省の邳州市、河南省の永城市は、中国最大の胎盘の闇市場として知られている。
胎盤市場では商品状態は「生もの」と「干物」に分かれている。通常、胎盤の仕入れ価格は80元(約1300円)前後だが、生まれたばかりの男の子の胎盤は、ネットで500元や600元(約1万円)で販売されることもある。
匿名のプラセンタ取引業者は、2020年だけで約13万枚の「生」の胎盤を購入し、加工したと主張している。胎盤にB型肝炎ウイルス、HIVエイズウイルス、梅毒が含まれている可能性について、業者は「製品が本物であることだけは保証し、それ以外のことは保証できない」と述べた。
また、添加物の入っていない胎盤は「浄貨」と呼ばれ、澱粉や着色料、さらには食品ハイドロコロイドなどを添加したプラセンタ製品は「重貨」と呼ばれている。
一方、澎湃新聞の記事では、葬儀社も胎盤を提供していることに触れているが、詳細は記されていない。台湾衛生福利部(日本の厚生労働省に相当)傘下の国家中医薬研究所の蘇奕彰所長は米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、「流産した胎盤の場合、病院や診療所では医療廃棄物として処分されるのが一般的なので、通常は葬儀社に処分を依頼することはない」と指摘した。
蘇氏はまた、胎盤は漢方薬だが、人体に関わることなので、材料に病気の要因があるかどうかの判断が難しく、多くの医師が好んで使用しなくなっていると述べた。
医師・看護師の直接関与
中国各地の病院では、胎盤の違法な売買が行われている。2005年4月付の地方紙・瀋陽晩報は、匿名の業者の話を引用し、病院での胎盤売買による利益の半分以上は、関係する医師や看護師のポケットに入っていたが、出産した母親やその家族はそのことを何も知らなかったと報じた。
2011年5月付の新京報によると、広州市白雲区の赤十字病院の医療スタッフは胎盤を1枚20元(約340円)で販売しており、1日に8~10枚が売れていると報じた。看護師は購入者に胎盤の消費方法についての情報も提供していたという。
2016年8月、複数の中国メディアが、武漢の一部の病院が密かにヒト胎盤の取引を行っており、病院の清掃員でも1枚25元(約420円)程度で胎盤を購入でき、医師が直接胎盤を売買していると報じた。
ヒト胎盤は、漢方では「紫河車(しかしゃ)」と呼ばれ、薬効があるとされているが、健康な母体からのものでなければならない。そして、厳密な滅菌処理や専門的な取り扱いが不可欠である。
(翻訳編集・王君宜)